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絶望が溢れるこの世界で  作者: ハデス
1章
13/21

13話―敵襲



エスペが普通に話せるようになったのは、クラウンがいなくなってから十数分後だった。


「デセス...ごめん、何も出来なくて」


「大丈夫、結果2人とも無事だったんだ。それに、あんな化け物相手だ。俺も何も出来ない」


「うぅ、ありがとう...」


「あぁ」


申し訳なさそうにエスペは言うが、戦闘になっていれば、俺は比喩でもなんでもなく一瞬で塵にされていただろう。


クラウンのなんてことないように爆破させた風船。あれだけで身体はいうことを聞かなくなった。もし全力で戦闘なんてしようものなら...そう考えるだけで身体に震えが走る。


「エスペ、まだ動けなさそうか?」


「うん、迷惑ばかりでごめん」


「構わないさ」


エスペはクラウンのせいで、かろうじて話せるようにはなったものの、未だ腰を抜かしたまま動けないでいた。


「俺も疲れたからな、少し休憩しよう」


「うん」


エスペが話せるようになって少しして、霧は晴れて暗い空気は消えていった。

霧が晴れてわかったことだが、俺は昼まで熟睡していたらしい。霧が晴れたあとはもう日が暮れかかっていた。


あの霧の中にいる間は時間の感覚が全くなかったが、かなり長いこといたらしい。

クラウンと話していたのは数分のはずだが、もしかしたらそれは俺の認識の中で、本当はもっと長いこと話していたのかもしれない。


クラウンの言っていた言葉。一つ一つに大きな意味があるように感じられたが…そう言えば爆発を起こしているのが人間だと言っていたな。


まあ、今することはエスペが回復するまでの見張りだな。


周囲に異形の気配はしないから、恐らくそこまでの心配はないだろうが。


「そう言えばメルはどこに行った?」


「なんか食べる物探してくるって」


「そうか。メルに限って異形との戦闘になる、なんてことはないだろうから大丈夫か」


「私たちより索敵出来るしね」


「確かにそうだな」


そんな会話をしながらエスペの回復とメルの帰りを待つ。





「こんにちはぁ」


後ろから誰かに声をかけられた。そう認識した時にはもう遅かった。腕に少しの痛みが走ると共に体が少しづつ動かなくなっていくのを感じる。


「毒か」


「よくわかりましたねぇ。ですが安心してください。死ぬような毒ではありませんよぉ」


うつ伏せで倒れる俺の前に、顔を除きこませてそう返す。

暗めの茶髪で髪は長くボサボサで整えられていない。髪のあいだから見える瞳は黒く、見ていると吸い込まれるのではと、そんな気さえしてくる。


「お前が爆発の犯人か」


「それもよくわかりましたねぇ」


「何が目的でこんなことをしている」


「人を殺すこと、それ以外にありえないでしょぉ。ですが、貴方は殺しても旨みがなさそうですねぇ」


そう言いながら同じように動けないでいるエスペにちかずく。


「こ...ない......で」


俺よりも毒が効いているらしく、喋ることすら満足に出来ていない。


「ほぉ、女の方でしたかぁ。これはちょうどいい」


そう言いいながら男はエスペを担ぎ始める。


「おい!!まて!!」


「まだ喋れるとは毒が少なかったですかねぇ。まあ、時期に効いてしますよぉ。ではこれで失礼しますねぇ」


男の姿が森の中に消えていった。それを確認して遠のく意識の中俺は叫ぶ。


「メル!!!いるか!!!!エスペをおえ!!」


メルが近くにいるかどうかは今の俺には認識できない。


聞こえていてくれ


薄れていく意識のなか無理やり手にあるナイフを出す。そのナイフで刺された腕を切りつけながら体内を加速させる。


その直後、体全身に制御出来ないほどの倦怠感が走る。


エスペ、無事でいてくれよ






「夜か...」


意識が回復した時にはもう日が落ちきっていた。


切り付けた腕の傷は治っていて、身体も満足に動く。


どうにかなったみたいだな。俺が死んでいないということはまだエスペは生きている。


あとは、エスペを見つけることが出来るか...か。


男が消えていった森に足を踏み入れる。


ここ数日はいつもエスペと共にいた。それのせいだろう。少し心細く感じるな。


何事もなくしばらく進むと、1本の木の根本に引っかき傷がついていた。


「頭のいい子だ」


そう呟き、俺はメルのつけてくれた印を追いながらエスペの後を追う。

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