練習用短編:センパイのひみつ
「先輩が好きでした。付き合って下さい!」
今日もまた、男子からの告白を受けるわたし。
まいったな……。
今週はこれで六件目だ。
私はとんでもなく美少女だ。我が校の非公式ミスコンでは一位になるほど。すらりと伸びた身長、ほどよく膨らみのある胸、それでいて筋肉のつかない程度に引き締まった肢体。容姿はもちろん、性格もおしとやかに振る舞っていて、成績だって学年トップクラスだ。
何から何まで完璧……に見えるわたしだが、一つだけ大きな「秘密」を抱えている。いや、最早わたしの人生が、その「秘密」に支配されていると言った方が正しいか。
——そう、私は実は……悪魔と契約してしまったのだ。この美貌は、悪魔との契約により購入したものだ。
体型の変化も、老いも気にすることのない、永遠の美貌。まさに究極の理想だ。
「まいったな……」
今度は口に出して呟く。
「やっぱり……ダメですよね。先輩モテるのに、誰とも付き合わないんですもん……」
告白して来た後輩は、申し訳なさそうに縮こまっている。
「すいません、変なこと言っちゃって。僕、もう帰りますね——」
「——いや」
今にも帰ろうとした後輩を私は呼び止める。
「いいわ。付き合いましょう」
「え⁉︎ ホントですか!」
「ええ、この後空いてるかしら。早速デートしましょ」
「は、ハイ! 全然ヒマです! それで、で、デートって——」
私はそっと彼の耳もとに唇を寄せ、
「わたしの、家よ」
「————!」
彼の顔が急に赤くなる。
はは……この子童貞ね。
「そ、そんな……先輩、いきなり……」
途端に何やらもじもじとし始めた。
あと、一押し。
私は彼の右手をそっと両手で拾い上げ、自分のEカップの乳房に押し当てる。
「今日は……そういう気分なの……」
「な————!」
彼の体が硬直するをありありと感じる。
「いいかしら……?」
「——は、ハイ……」
今夜はこの子に決まりね。
心の中で『何者か』に呟く。
これも、私が手に入れた美貌のせい。
やっぱり美しさを維持するのってとっても大変。
悪魔と契約して手に入れたこの姿。
……しかしまだ、購入時のローンを返済しきっていないのだ。
永遠の美貌の対価は、『悪魔の力で魅力してしまった魂、計666個を捧げること』
彼の手をしっかりと握り、放課後の校舎を後にする。
支払い完了まで、あと500人。