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変とか変じゃないとか、人に言われることじゃない

1時間後に次話を投稿します。

 前段で彼女は、いくつかの不幸と不注意が重なった結果失神した。

 傍から見ているだけでは、変なうめき声を出したあげく、体をビクンビクンと痙攣させている哀れな少女としか映らないが、当然のことながら彼女自身にその姿は見えていない。


 彼女は目を覚ました。とにかく彼女自身はそう思った。

 目の前に広がる光景は、いつもの自分の部屋と全く同じだ。見慣れたモニタがあり、手付かずのスナック菓子と未開封のペットボトルがあり、自分はコタツの中にいる。


 しかしながら、わずかな違和感を感じてもいた。ただ、コタツの中でいつの間にか寝落ちしていたなんてのは彼女にとって日常茶飯事だったこともあり、「ボクは寝ぼけているのだろう」と自己解決し、そんな疑念はすぐに脳の隅へと追いやられた。


 そして何か話題のアニメはなかったかと彼女が考え始めると、それまで真っ暗だったモニタの画面に何かが映しだされた。それは顔で、彼女の知らない人物だった。


「誰?」


 反射的に彼女が口にすると、モニタ内の顔が動いた。


「神だ」


 顔はそう端的に答えた。「神か、なるほどね」と彼女は抵抗なく受け入れた。「ついに来たか」と思ったのだ。

 すると神は詰問するように彼女に問うた。


「今の生活に満足しているか?」


 それに対し彼女は、


「あの、していま、す」


と答えた。一応神と名乗っているし、敬語で会話をしようと考えたからだ。

 続けて


「願いはあるか」


と訊く神に彼女は


「金が欲しいです。あっ、で、でも生活は今のままで大丈夫っす」


と正直に返答した。

 そうすると神は表情を変えず


「ただ食べて寝るだけの生活だぞ」


と言った。

 さすがは神だ。よく見ている。

 彼女は今神が言ったとおりの毎日を過ごしていた。家に引きこもり部屋から出ることもあまりなく、当然人との会話も少なかった。だからだろうか、何ら反論のできない神の言葉に対し言い返そうと彼女は決めた。あるいは対話に飢えていたのかもしれない。ともかく彼女は神に物言をした。


「あっ、それこそが生き物の本来の姿、生き、生きるということではないですか?」


 対する神は冷めたもので、


「違う。お前のは生きているのではない。あるだけだ」


と言い捨てた。そして強い口調で


「お前は水面をたゆたう木の葉のようなものだ。考えることを放棄し、流され、やがては呑み込まれてしまうだろう」


と言った。どうも神は彼女の生活と言うか、彼女の生き方がご不満らしい。

 自分がいかに社会を舐め、人に甘えて生きているか重々承知だったが、これには彼女も苛立ちを隠せず、


「そんな、こと、はない、です」


と答えたあと、


「その、ぼ、ぼ、私は水です。何事にも動じず、でもでも頑ななわけでもなく、いっつも適当な状態を保ってるんです。だから、あの、その、時が来れば私はあなたでさえも呑み込むことができ、るでしょう。そう、まさに水面に揺れる枯れ葉みたいに」


と続けた。言ってから「神に対してひどいこと言ってんな」と思いはしたが、それ以上に上手いことを言えた気がして彼女は気分が良かった。

 しかし言われた方は違うようで、モニタ内の神は顔を真っ赤にしていた。

 「ああ、怒ってんなコイツ」と彼女がのんびり考えていると、神は激昂とともに言い放った。


「ではお前は今から水だ!」


 そしてまばゆい光を発したかと思うとモニタ内の神は消え去ってしまった。


 時刻は夜八時を回った頃だろうか。タコ足配線が水に濡れたことにより彼女の部屋は明かりを失ってしまっていた。

 しかし、夜も遅いのだから、傍から見れば部屋が暗くともそうおかしなことではない。ただあえておかしなこと、変なことを挙げるとすれば、それはこの部屋に誰もいないことだ。引きこもりゆえに十分と部屋を空けないはずのこの部屋の主が一切の明かりを消していなくなっている。それはこの部屋に限って言えば、異変だと言い切って差し支えない状況だ。少なくとも彼女の家族であれば、なにか普通ではないことが起こっていることを察知するに違いない。

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