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彼方の短編。

きれいな硝子玉

作者: 彼方わた雨
掲載日:2014/10/06

 私は1つの硝子玉を手に入れた。それはとてもきれいな透明な硝子玉。



 きれいな、きれいな、硝子玉。



 硝子玉を窓辺に置いて、沢山の光を集めた。硝子玉はきらきら輝いている。


 何時しか硝子玉は空の色を写して、きれいな青い硝子玉になった。



 きれいな、青い、硝子玉。



 もっときれいに見せたくて、私は新しい色で硝子玉を染めた。


 今度は若い葉の様な緑色。硝子玉はきれいな緑を輝かせる。



 きれいな、緑の、硝子玉。



 今度は何色に染めようかと考える私。きれいな硝子玉をもっときれいに見せたくて。


 見つけたのは赤い色。真っ赤に染めて林檎の様な硝子玉。



 きれいな、赤い、硝子玉。



 そうね、今度はやっぱり、黄色かな。きっと、もっと良くなると思う。


 黄色く染まる、硝子玉。私がきれいに染めてあるげる。



 きれいな、黄色い、硝子玉。



 私のきれいな硝子玉。こんなものじゃない、もっと、きれいな色にしたい。


 帰り道、見かけるその色、菫色。次の色はこれで決まり。



 きれいな、紫、硝子玉。



 まだまだ、足りない。もっと、良くなる、私のきれいな硝子玉。


 お散歩で、見つけたその色、橙色。紅葉がきれいね。私の硝子玉には負けるけど。



 きれいな、橙、硝子玉。



 もっと、もっと、良くなる。だって、私が見つけた硝子玉だもの。


 探してきたのはピンク色。可愛いピンクできれいに染まれ硝子玉。



 きれいな、ピンク、硝子玉。



 もっと、もっと、もっと……。



 色を重ねる、硝子玉。



 きれいに染まる硝子玉。





 でも、本当にそれはきれいかな?





 何度も重ねたその色は、きれいの下で混ざり合う。


 混ざり合って、混ざり合って。



 それは黒になれない、ぐちゃぐちゃ色。



 誰もきれいと、思えない。



 私は知らない、そんなこと。知っていても知らないよ、そんなこと。


 見た目がよければいいじゃない。きれいな、きれいな、硝子玉。それの一体どこが悪いの?



 きれいな、汚い、硝子玉。



 ある日私の手から零れる硝子玉。床で砕けて粉々に。


 私のきれいな硝子玉。



 壊れたそれは、1度砕けて戻らない。



 きれいな、私の、硝子玉。



 もう1つ、もう1度。




 見たい、染めたい、きれいな、きれいな、硝子玉。




 あれは1つの硝子玉。


 この世で1つの硝子玉。










 きれいな、きれいな、硝子玉。













 硝子玉はそのままが一番、きれいだった。







と、私は思います。

2014/10 秋桜(あきざくら)(くう)

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