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彼方の短編。

きれいな硝子玉

作者: 彼方わた雨

 私は1つの硝子玉を手に入れた。それはとてもきれいな透明な硝子玉。



 きれいな、きれいな、硝子玉。



 硝子玉を窓辺に置いて、沢山の光を集めた。硝子玉はきらきら輝いている。


 何時しか硝子玉は空の色を写して、きれいな青い硝子玉になった。



 きれいな、青い、硝子玉。



 もっときれいに見せたくて、私は新しい色で硝子玉を染めた。


 今度は若い葉の様な緑色。硝子玉はきれいな緑を輝かせる。



 きれいな、緑の、硝子玉。



 今度は何色に染めようかと考える私。きれいな硝子玉をもっときれいに見せたくて。


 見つけたのは赤い色。真っ赤に染めて林檎の様な硝子玉。



 きれいな、赤い、硝子玉。



 そうね、今度はやっぱり、黄色かな。きっと、もっと良くなると思う。


 黄色く染まる、硝子玉。私がきれいに染めてあるげる。



 きれいな、黄色い、硝子玉。



 私のきれいな硝子玉。こんなものじゃない、もっと、きれいな色にしたい。


 帰り道、見かけるその色、菫色。次の色はこれで決まり。



 きれいな、紫、硝子玉。



 まだまだ、足りない。もっと、良くなる、私のきれいな硝子玉。


 お散歩で、見つけたその色、橙色。紅葉がきれいね。私の硝子玉には負けるけど。



 きれいな、橙、硝子玉。



 もっと、もっと、良くなる。だって、私が見つけた硝子玉だもの。


 探してきたのはピンク色。可愛いピンクできれいに染まれ硝子玉。



 きれいな、ピンク、硝子玉。



 もっと、もっと、もっと……。



 色を重ねる、硝子玉。



 きれいに染まる硝子玉。





 でも、本当にそれはきれいかな?





 何度も重ねたその色は、きれいの下で混ざり合う。


 混ざり合って、混ざり合って。



 それは黒になれない、ぐちゃぐちゃ色。



 誰もきれいと、思えない。



 私は知らない、そんなこと。知っていても知らないよ、そんなこと。


 見た目がよければいいじゃない。きれいな、きれいな、硝子玉。それの一体どこが悪いの?



 きれいな、汚い、硝子玉。



 ある日私の手から零れる硝子玉。床で砕けて粉々に。


 私のきれいな硝子玉。



 壊れたそれは、1度砕けて戻らない。



 きれいな、私の、硝子玉。



 もう1つ、もう1度。




 見たい、染めたい、きれいな、きれいな、硝子玉。




 あれは1つの硝子玉。


 この世で1つの硝子玉。










 きれいな、きれいな、硝子玉。













 硝子玉はそのままが一番、きれいだった。







と、私は思います。

2014/10 秋桜(あきざくら)(くう)

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