魔王を勇者は救えるか
小説祭り純愛編参加作品一覧
作者:靉靆
作品:白への思い出(http://ncode.syosetu.com/n1608bl/)
作者:立花詩歌
作品:彼と彼女の有限時間(http://ncode.syosetu.com/n1556bl/)
作者:射川弓紀
作品:僕と私の片思い(http://ncode.syosetu.com/n1365bl/)
作者:なめこ(かかし)
作品:ちいさな花火(http://ncode.syosetu.com/n1285bl/)
作者:一葉楓
作品:わたしときみと、芝生のふかふか(http://ncode.syosetu.com/n0273bl/)
作者:失格人間
作品:僕と幼馴染(http://ncode.syosetu.com/n1374bl/)
作者:三河 悟
作品:天国の扉~とある少年の話~(http://ncode.syosetu.com/n1488bl/)
作品:天国の扉~とある少女の話~(http://ncode.syosetu.com/n1490bl/ )
作者:葉二
作品:ハンバーグに砂糖を入れてはいけません!(http://ncode.syosetu.com/n1534bl/)
作者:コンフェクト
作品:ぼくとむらかみさん(http://ncode.syosetu.com/n1571bl/)
作者:えいきゅうの変人
作品:魔王を勇者は救えるか(http://ncode.syosetu.com/n1580bl/)
作品:恋の始まりの物語…?(http://ncode.syosetu.com/n1579bl/)
作者:一旦停止
作品:神様って恋するの?(http://ncode.syosetu.com/n1581bl/)
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この作品は、以前投稿していたものの改訂版です。盗作ではありません。
「ああ。俺はお前を助ける。絶対にだ。」
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。こんなはずじゃあなかったのに、どうして…!
私は魔王の娘だった。そしてもうすぐ現魔王だ。
だけど父の命により勇者と行動をともにすることになった。勇者を、裏切るために。
だが、私は人のぬくもりをしってしまった。それゆえ、今私は苦しんでいる。
同情もいらない。こういう風に生まれてきたんだから。
私は何人の勇者の卵を倒しただろうか。そんなことは日常茶飯事すぎて、生まれてからパンを何枚食べたか数えるのとおんなじ位むつかしいことだ。
勇者になりそうな奴を見つけ、少し同行したあとに倒す。それがいつもだった。
だが今回は違った。強かったのだ。勇者が。これでも人かと疑問に思えるほど。
そしてズルズルと辿り着く魔王の居城。
そして魔王は倒されてしまった。
そして、明かされる私の正体。
そして、今、私はまさに先程まで魔王がいたはずの玉座に縛られ、魔王へと化している最中である。
だが、私の正体を知ってなお、勇者は「助けたい」と言ってきたのだ。
君を、その運命から、助け出したいと…
嬉しかった。でも、なぜ?
その心の中の問いに答えるかのように
君を、助けたいからさ。と言われても、答えになってない。
第一救われるはずがないもの…
先代魔王は倒されて。娘たる私は後継者で。
今まさに魔王になろうとしていて。
でもあなたは魔王を倒すべくして生まれた勇者で。
敵対するしかない、そんな関係。
なのに勇者は私を救おうという。
もうこの魔王化から逃れる術などないというのに。
ねえ、よして。勘違いしちゃうから。
わたしが救われるかもしれない、なんて…
決してあり得ないことなのに…
あってはならないことなのに…
そうでしょう?勇者さん…
「だけど…俺は君を助けたいんだ!いや!助けるんだ!」
だが勇者の決意はかたい。
もはや彼の目的は悪を滅すということではなく彼女を救うだ。
そしてその意志はかたい。意志が強い者が勇者になりうるのだから、当たり前と言えるかもしれないが…
でも、そんなことが許される訳がない。だから少女は拒絶する。
「私はもう、大丈夫ですから。」
「ですからお願いです、私のために戦わないでください。---私を、救おうとしないでください。」
拳を握り締める。血が滲んでいるかもしれない。
「私をもう、助けないで救おうとしないで下さい。今まで、ありがとうございました。」
精一杯の笑顔で、私は言った。
「…そんな悲しそうな顔、すんなよ…。」
握りしめた拳を震えさせながら、勇者は言う。
思わず目尻を拭う。濡れている。私は泣いていた。
「え…」
断ってしまうべきなんだろう。
殺してしまうべきなんだろう。
忘れてしまうべきなんだろう。
消えてしまうべきなんだろう。
殺されてしまうべきなんだろう。
いなくなってしまうべきなんだろう。
忘れ去られてしまうべきなんだろう。
でも、私は
承諾したい。
救われたい。
殺したくない。
忘れたくない。
きえたくない。
殺されたくない。
忘れ去られたくない。
だからと言って何ができる?
今まさに魔王になろうとしている私に…
「私だって救われたいよ!魔王になんてなりたくない!あなたも殺したくない!勇者を殺してしまうなんて嫌だ!
…でも、私は魔王の娘。仕方がないの。こうなるのが宿命なの!」
足掻くべきなんだろう。諦めることを否定するべきなんだろう。幸せを願ってしまうべきなんだろう。
葛藤する。ただひたすらせめぎ合う二つの気持ち。そんな中、
ふと、気づいた。逃げているのではないのだろうか。私は。
「魔王の娘」ということを盾にして。
決断から逃げているんじゃあないか。
「でも、でも、私は魔王の娘だよ?いいえ、私は魔王。それでも救おうというの?」
一寸の迷いさえなく頷く勇者。
それならいい。堕ちるか死ぬか。救われるか生きるか。結末はわからないけど、私はこの運命にすこしでも逆らってみることにしよう。「僕は君を助けたいんだ。」
彼のその思いは変わらなかった。
だから私はその想いに応えた。
私も彼を愛していたから。
でも、どうやって?
そういう私の問いに彼は笑って、応えてくれた。
「こうすればいいのさ。」
彼は自らの剣をとり、魔王の台座を切り裂くと、私を抱きしめてくれた。
なおも追いすがろうとする私を縛りつけていた触手。
だが彼はそれら全てを切り裂いた。
部屋から脱出しても、今度は魔族共が襲いかかってきた。
魔王を守るために。
だけど、彼はそんな魔族をも切り伏せる。
私でさえ殺せなかった勇者、見事に魔王を倒した勇者に魔族(下っ端)が敵うはずもない。
またたくまにやられていった。
そして、とうとう門を出た。
魔王を倒したために世界の均衡が変わり始めて、戻り始めている。暗雲の晴れた魔界と呼ばれし地。
そこからは、しばらくぶりに陽の光を浴びることができた、そのことが途方もなく嬉しいとでも言っているかのような、青青と美しく輝く海原が、顔をのぞかせ始めた。
「勇者は見事魔王を打ち倒し、囚われの少女は救い出され、この世に平和が戻りました。
物語ってのはそういうもんなんだろう?
ただし、最近は魔王と姫が一緒だったりするけどな。」