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知らなくたっていい

作者: zonezumi
掲載日:2012/10/24

はじめまして、ゾウネズミと申します。

自ブログからの転載です。

僕は、死んだ。


どうして死んだのかは、覚えていない。


だが、僕には自分の命以上に大切な人がいた。


それだけは、しっかりと覚えていて、その人に会いたくて会いたくて仕方なかった。


その思いだけがずっと身を焦がしていた。


そして、気が付くと僕は猫になっていた。


毎日のように歩いていた道の景色がぐっと遠くなり、まるで全く別の世界に来たかのようだ。


それでも、頭の中にある景色と今見ている景色を比べるとやはり同じなのである。


辺りを見回しながら歩いていると、ふいに僕の前を誰かが横切った。


僕は思わず立ち止まりゆっくりと振り返った。


間違えようがなかった。


会いたくて会いたくて仕方なかったその人。


僕は無我夢中で走った。そして叫んでいた。


――りつ!りつ!りつ!――


きっと、彼女にはただの猫の鳴き声にしか聞こえないだろう。


でも、そんな事は関係なかった。


彼女は立ち止まり勢いよく振り返る。


僕は彼女に追いつきゴロゴロと喉を鳴らしながら彼女の足にまとわりつく。


彼女はしゃがみ僕をそっと持ち上げた。にゃあと一声鳴いた。


「なお…?」


僕は彼女の一言にものすごく驚いた。それは僕の名前だった。


「そんなわけないよね」


彼女の瞳から涙が流れる。僕はその涙を舐めとった。


「君、優しいのね」


そういって僕の頭を撫でてくれる。


「私と一緒に暮らす?」


僕は答えの代わりにすりすりと彼女に頬をあてた。


僕との思い出が君にとって重く悲しいものなら、忘れてしまえばいいんだよ。


そして、僕が猫になって君の近くにいる事も知らなくていい。


君は何も知らなくていいんだよ。


でも、君が悲しい時、傍にいてほしい時、ずっと僕が隣にいるから。


知らなくたっていい。


お題提供:brooch(http://bluelover.web.fc2.com/)

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