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夕闇の彼方へ  作者: 犬公
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第十八話:赤髪の先生

 シリルはヒナの異変に気付いていなかった。

いや、本当のところは気付いていたのだが、ただ緊張しているだけだろうと思っていた。


「ここがA−1クラスか……」

 シリルが扉に手を伸ばす。ヒナはそれを見て、一瞬息が止まったかのような顔をした。

シリルは横目でヒナを監視していたらしく、異変には気付くが手を止めようとはしない。

「大丈夫か?」

「……けちゃだめっ!」

「ん?」 ヒナの小さな声にはいつも悩まされる。

だが、ヒナの願いはシリルに届いた。

(このヒナのただならぬ様子は何を意味しているんだ……)


 二人は『学校』にいた。シリルは学校の教師としてケーリーさんに推薦されたのである。

何も役立てずにミールに居留まるのが苦だったシリルはすぐに承諾した。

ヒナは助手とでも言えばいいのだろうか、なぜかシリルの付き添いを申し出たのである。

シリルは、言葉の壁が生じた場合の緊急事態を考慮し、ヒナを連れていくことに決めた。


 君は古典学に精通しているからね、というケーリーさんの一言がきっかけだった。

もちろん、アジズの捜索は出来る範囲だが続行している。


「緊張してるのか?」

「……教室の中から感じる……」

「な、何をだっ?!」

「わからない……」

 ヒナは

「ただ」と付け加えた。

「ただ、アジズじゃない」

「……そうか」

 シリルには、ヒナに不思議な能力がそなわっているように思えてならない。

未だ、ヒナのことはよくわからない。

アジズなら、自分よりもヒナのことを知っているのだろうかと思う。


「それに……まだ授業中……」

 ヒナがボソッとつぶやいた。しかし、これは言うのが少し遅かった。


――ガラガラ……――


 教壇には赤い髪の男が立っていた。


(なっ――アジズ!?)


 シリルは目を疑った。しかし、ヒナの前言が頭によぎる。

すぐに男と目が合った。


「ああ、すみません。授業を長引かせてしまって」

 男は丁寧にそう言うと、軽くお辞儀をした。

「来週はこの続きから」

 男の声はどこかアジズに似ている。シリルはますます混乱した。


「あの……お名前はっ?」

 すれ違う瞬間に、シリルはようやく我に返った。


「ん?」

 しばらくの間、男は見慣れない顔を見たというような表情をした。

「ああ、初めましてシリル先生」

 男の笑顔は初めて見た気がしない。


「アジズです。宜しくお願いします」

 この言葉にどれだけの悪意があるかは知らない。

いや、そんなものあるはずがないのだが、嘘なら嘘と言ってほしい、それが正直な感想というものだろう。


 シリルは、ヒナの奮えが治まらないのが気がかりだった。


(アジズじゃないならこいつは誰なんだ……。ヒナはこの男から何を感じているんだ?!)


 僕は、とシリルが遠ざかる男に宣戦布告を始めた。


「僕はあなたを知っています。全く知らないと言えば嘘になります」

 男は立ち止まり、純粋にいぶかし気な表情でシリルに応えた。


「この後、ゆっくり話をさせてくれませんか? きっとあなたは、僕たちの捜している人だ」


 男は少し考えて言った。


「はい、では南図書館でお会いしましょう。私はいつもそこにいますので」


 だいたいの筋道は立ったというものだろう。

一年以上のブランクです(泣)…ただただ忙しかったとしか言えませんが、時間を見つけて、駄文を書ける範囲で書いていきたいと思います。

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