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倭国神代記  作者: がばい
2章
23/53

倭国大乱

 その日シンムは、何も知らされないまま呼び出しを受けた。

 祭りの次の翌朝、帰り着くとすぐに狗奴国では戒厳令が引かれた。それによって人々は丸々二日間外出を禁じられ、シンムもそれに従った。不思議とタケヒコはその間まったく姿を見せない上に、スクネは一言も口を開かなかった。それゆえに、何か大事が遭った事ぐらいはシンムにも想像出来ていた。

 タケヒコ「シンム様達が参られました」

 ジョウコウ「左様か」

 対面と同時にシンムは驚愕した。精悍(せいかん)だったはずの顔は青白く、右肩が垂れ下がり、筋肉質だった腕は信じられないほどにやせ細っていた。目の前のジョウコウが、ついこの間会った人物と同一人物とはとても思えなかった。それでもただ一つだけ、目の鋭さだけは、シンムの記憶と変わらないままだった。

 シンム「その体はいったいどうしたんだ? おれのしらねぇ所で何が在ったんだ!」

 ジョウコウ「今から話す」

 静かだが、力強い声でジョウコウは言った。

 カグヤ「伯父(おじ)さん、起きてだいじょうぶなの?」

 共に呼び出しを受けていたカグヤが心配そうな顔をしている。もう一人スクネも付いて来ているが、いつものように無表情で無言のままだった。

 ジョウコウ「心配ない」

 青い顔したジョウコウは笑みさえ浮かべながらそう言った。横でタケヒコが支えられていないと、座ってさえいられないだろうに。

 ジョウコウ「タケヒコ、シンム達はどのくらい知っておる?」

 タケヒコ「簡単な概要ぐらいしか話しておりません。シンム様は大奥様から聞かれましたので」

 ジョウコウ「左様か……」

 そう言ってジョウコウは天井を見上げた。何処か辛そうな、寂しげな表情を浮かべながら。その眼には天井以外の何かが映っているようだった。

 カグヤ「わたし達も聞いていいの?」

 タケヒコ「わたしが、あの日に御二人に伝えようとした事もありますので、カグヤ様も聞いていてください」

 首をかしげながらカグヤがタケヒコの言葉の思い当たる節を口にする。

 カグヤ「あの日? ひょっとして十五年前の話をするって言っていた事?」

 タケヒコ「はい。あの日、話せなかった事も語られると思います」

 きょとんとカグヤはしていた。何かに耐える様な表情をタケヒコはしていた。さして興味なさそうにスクネはしていた。何が話されるのか、シンムの心は期待と不安が入り混じっていた。

 ゆっくりとジョウコウは口を開き、語り始めた。


 不繭国(ふまこく)のタダヒラは王として生まれたが、決して当初は野心家ではなかった。残念ながら伊都国王イブキヨシモチの様に才には恵まれてはいない。とはいえ、暴君でもなく、暗愚と言うほどひどくもなく、王として平凡そのものだった。故に何事もなく不繭国(ふまこく)の王として、何不自由もなく、一生を終えるはずだった。一人の女性に会うまでは。

 女性の名はトヨウキサラギ。邪馬台国の特使として、タダヒラは狗奴国に行った際に出会った。そして、一目惚れをした。その話をタダヒラはヒミコに相談する。その日を境に、タダヒラは狗奴国への侵攻を考え始めた。

 己が目的のために、タダヒラはまず当時の邪馬台国の大王を暗殺した。次に、自らが次期大王に立候補すると、目下の敵は当然の様にヨシモチとなった。そのヨシモチを謀略で退け、大王に就任すると、狗奴国への侵攻を行った。結果は大敗に終わる。

 その後タダヒラは講和にヒミコを狗奴国へ遣わした。

 数年後、タダヒラは伊都国の皇太子コジロウが(ともな)って帰った女性を見て、再び驚きの声を上げた。彼女はキサラギにあまりにも似ていた。それもそのはずで、彼女の名はトヨウサクヤ、カグヤの母であり、キサラギの妹。

 一目惚れした、美しいキサラギがすでにこの世にいない事を聞かされていたタダヒラは、これを最期の好期としてしか捉える事が出来なかった。行動はすぐに実行へ移される。邪馬台国の大王としてイブキコジロウに妻サクヤを差し出す様に要求した。

 しかし、断られた。

 焦心して、下を向いたままのタダヒラの前に死体が転がっていた。

 彼女は、ついさっきまで確かに生きていた。手の届く所まで来ていた。それなのに、彼女は彼の部下によって殺された。隠し持っていた小剣でタダヒラを刺そうとしたために。

 死体の手には強く小剣が握られ、タダヒラの頬には血が(した)っていた。


 何処か遠くを見る眼で語り続けたジョウコウが、視線をシンムに向ける。

 ジョウコウ「その後、タダヒラがヨシモチに敗れ、死した事は知っているな」

 シンム「知ってるけどよ、結局どっちにしろ、タダヒラの片思いが原因じゃねぇか。だからどうしたって言うんだ」

 その話から、シンムには怒り以外の何かを感じる事は出来なかった。

 タケヒコ「確かにその通りです」

 肯定するタケヒコの表情に変化はなく、何かに耐える様に辛そうだった。

 カグヤ「キサラギおばさん、お母さんにそんなに似ていたの?」

 タケヒコ「性格以外は似ておられましたよ」

 辛そうな表情に、無理やり笑みを浮かべながらタケヒコはカグヤの質問に答えた。

 シンム「くだらねぇ! そんなくだらねぇ事のために父さん達は死んだ上に、悪人の様に扱われてんのかよ!」

 怒りから、吐き捨てる様にシンムは言った。そんなシンムを、ジョウコウが(さと)すように言葉を口にする。

 ジョウコウ「確かにくだらぬかも知れん。だが事実には違いない」

 シンム「そりゃあ、事実かもしれないけどさ」

 ジョウコウ「その事実がすべてだ。そして、どんな理由で始まったにせよ結果は出た。故に、敗者と勝者に別れた」

 そう言って再び天井をジョウコウは見上げた。何処か悲しげな表情を浮かべながら。

 再び正面を見据えたジョウコウの眼は、何処か優しげだった。

 ジョウコウ「話を続ける。ここからが本題だ」


 不繭国(ふまこく)には首飾りがあった。その首飾りは中央に勾玉があり、それは美しく透き通り、青紫色に輝くそれは、たえがたいほどに魅力的だった。勾玉の回りには管玉(くだだま)が付いていた。それは鏡の様にきらめき、純白のそれは、何物よりも魅力的だった。管玉(くだだま)と勾玉を結ぶ紐は、丈夫でどのような力であろうとちぎれず、どの様な刃物であろうと切断できず、管玉(くだだま)と勾玉の魅力を引き立てる様に浅黒かった。首飾りは五百之御統之珠いおつのみすまるのたまと呼ばれる。呪などではなく、そのままではただの首飾りにすぎなかった。

 不繭国(ふまこく)の王であるタダヒラの一族は、その首飾りを代々受け継いでいたが、それの存在を一族以外の誰にも知らせなかった。それをタダヒラはヒミコと言う名の巫女に見せてしまう。一目惚れしたキサラギへの貢物(みつぎもの)にふさわしいか占って貰うためだけに。

 それはヒミコが千年の間探していた物。それは千年前に行方がわからなくなっていた神器。

 その日からヒミコは五百之御統之珠いおつのみすまるのたまの覚醒にすべてを捧げ始めた。五百之御統之珠いおつのみすまるのたまの覚醒に必要な二つの条件、高貴な者の血と大量の血。その二つを得る為に、倭国大乱(わこくたいらん)は起きた。否、ヒミコによって引き起こされた。

 最初にヒミコはタダヒラを扇動して狗奴国を攻撃させた。

 それでもヒミコ自らは最後までこの戦いには直接には介入せず、静かに戦いを見守りながら高貴な者を探し出す事に全力を尽くしていた。

 そして、邪馬台国と狗奴国の戦いが終わると、ヒミコは一人の男に目を付けた。王の一族に生まれながら、あまりにも優しかった男、イブキコジロウ。

 その男にヒミコは近づいた後、次々にコジロウの周りの人間を(ほうむ)り始めた。心の美しさを見極めるためだけに。

 始めに殺されたのはキサラギ。

 人でありながら、神宝(かむたから)を加工する事が出来た存在。四魂(しこん)のように、天人(あまびと)として生まれた存在。


 そこまでジョウコウが語ってからシンムが疑問を口にした。

 シンム「ちょっと待ってくれ、四魂(しこん)っていったい何なんだ?」

 タケヒコ「話を遮るのは失礼ですよ、シンム様」

 そう言ったタケヒコの表情は、これ以上ないほどに辛そうだった。

 ジョウコウ「よいな、タケヒコ」

 静かに口にしたジョウコウの言葉に、タケヒコが無言で辛そうに頷く。

 ジョウコウ「シンム、四魂(しこん)とはタケヒコやスクネの呼称にすぎぬ。そして、天人(あまびと)とは、千年前までこの世界を支配していた者達の事だ」

 シンム「タケヒコとスクネの……」

 二人を交互にシンムは見た。辛そうに目を逸らすタケヒコ、相変わらず無表情のスクネ。二人が何かを隠しているのは分かっていたが、今まで何も教えてくれなかった。

 シンム「じゃあ、タマモって奴も?」

 辛そうにタケヒコが頷く。

 ジョウコウ「話を続ける」

 再びジョウコウが語り始めた。それにシンムは聞き入る。青い顔をしたカグヤに誰一人として気付かぬまま。


 殺されたのはトヨウサクヤの姉キサラギ。彼女はコジロウの狗奴国に置ける数少ない親しい人物。そして、アシハラシジョウコウの愛人。

 殺害時に、ヒミコはその子の殺害も試みたが失敗に終わった。それでも、結果的にその事実が、コジロウを狗奴国から遠ざけた。

 そして、悲劇は続く。邪馬台国に戻ったコジロウに待っていたのは妻サクヤの死、父ヨシモチの死。それを乗り越えたコジロウは、完全にヒミコから認められる。高貴な血の持ち主として。そして、コジロウは命を落とした。

 高貴な者の血を吸った首飾りは中央に勾玉があった。それは汚くにごり、赤紫色に輝くそれは、たえがたいほどに眩惑的(げんわくてき)だった。勾玉の回りには管玉(くだだま)が付いていた。それは闇さえ遮られ、赤黒いそれは、何物より眩惑的(げんわくてき)だった。管玉(くだだま)と勾玉を結ぶ紐は、存在さえしているのかわからなかった。首飾りは五百之御統之珠いおつのみすまるのたまと呼ばれる。神によって天人に与えられた神器。


 聞き終えたそれぞれの表情に、別々の色があらわれていた。相変わらず無表情のスクネ、眼を閉じ何かに耐えている様子のタケヒコ、顔を青くするカグヤ、怒りと驚きに満ちたシンム。

 ジョウコウ「これが倭国大乱(わこくたいらん)と呼ばれる戦いの意味だ」

 長い話の終わりがジョウコウによって告げられると、いの一番にシンムが声を荒げた。

 シンム「五百之御統之珠いおつのみすまるのたまとかいうのを覚醒させるためだけに起きたって言うのかよ!」

 あまりに不条理だとシンムは思った。訳のわからない物のために父と母が見た地獄。そして、その延長上で滅ぼされた国。これが不条理でないのならばと。

 タケヒコ「ですけど、いろいろと他にも理由が合ったのも本当です。あの戦いはあくまで、カムタダヒラという人物の個人的な感情が巻き起こしたのも事実です」

 慌てた様に、タケヒコが言葉をいっきにまくし立てた。

 シンム「それでも、最初っからヒミコが裏にいたって言うんだろ?」

 まくし立てたタケヒコの言葉を聞いても「だからどうしたって言うんだ」という思いしか、シンムには沸いてこない。怒りの矛先としては、ヒミコもタダヒラも同じだったから。

 ジョウコウ「タダヒラをたきつけ、扇動したのもヒミコだ。ただし、勘違いするな」

 諭すようにジョウコウは威厳に満ちた声に、優しさを混ぜながら言った。

シンム「勘違い? 勘違いって何を」

ジョウコウ「倭国大乱(わこくたいらん)はあくまでイブキヨシモチの野心あってこそ成り立つ。イブキコジロウの優しさあってこそ成り立つ。タダヒラ一人ならば乱などにならず、圧政が引かれて終わる」

シンム「じゃあ、父さんや(じい)さんも悪いって言うのかよ!」

思わずシンムは怒声を上げた。その怒声がタケヒコによってすぐに否定される。

タケヒコ「そうではありません。ジョウコウ様は彼等の意志が、イブキ親子の意志が、タダヒラの圧政を許さないからこそ起こったと言われたのです。決して、善し悪しの話しではありません。それに、すべてがヒミコの思い通り進んだ訳ではありませんから」

シンム「思い通りいかなかったって?」

ジョウコウ「言ったはずだ。覚醒には高貴な者の血と、大量の血が必要だと」

 口にしたジョウコウの言葉は、日頃よりもわずかに荒々しかった。そのためにシンムの声が小さくなる。

 シンム「それは聞いたがさ。両方とも……」

 言いかけた言葉を、タケヒコが首を横に振って否定する。

 タケヒコ「十五年前の戦いでは、覚醒に必要な血の絶対量が足りなかったのです」

 シンム「でかい戦いの連続だったんだろ? だったら、なんで?」

 タケヒコ「順番の問題です。先に高貴な者の血が必要なのです。故に、コジロウ様の命が断たれる前の血は覚醒には影響しません。そして、コジロウ様の後にはほとんど血が流れていませんから」

 シンム「でも覚醒したんだろ、だったら? だいたい覚醒したらどうなんだ?」

 わめく様にシンムは言った。理解がまったく出来ないから。そんなシンムをタケヒコは何処か辛そうな眼をしながらも、しっかりと見返した。

タケヒコ「今からその件も話します。あれは確かに覚醒していました。ですが、十五年前ではありません。三年ほど前、不繭国(ふまこく)が壊滅しました。女、子供、関係なく、一人として生き残りませんでした」

 初耳だった。伊都国の王であったシンムには当然の様にそんな事があったのなら、耳に入ったはずなのに。

タケヒコ「ありました。但し、ヒミコは不繭国(ふまこく)の一件を隠蔽(いんぺい)すると、邪馬台国すべての人々に催眠を掛けて、不繭国(ふまこく)に近づけなくしたのです。四魂(しこん)の一人であるタマモの力を借りて」

シンム「……タマモ」

 その名を聞いて思い浮かべるのは、あの日の光景。一瞬で地獄と化した伊都国で、何も出来なかった自分に対する嫌悪感。

 辛そうに声を震わしながら、タケヒコは言葉を続けた。

 タケヒコ「伊都国で、タマモは覚醒した五百之御統之珠いおつのみすまるのたまを使ったのです。あれは神宝(かむたから)の力を増大化させますから」

 シンム「さっきも言ってたが神宝(かむたから)って何だ?」

タケヒコ「それも今から説明します。まずはタマモの神宝(かむたから)天詔琴(あまのりごと)。その弓で射られた矢は、対象を決めるとその対象に向かって追尾します。不繭国(ふまこく)での件は、普通の矢の代わりに、催眠呪から作った矢を使えば問題ありません」

 シンム「呪から矢を? そんな物が……」

 タケヒコ「論より証拠、神宝(かむたから)をお見せしましょう。シンム様、少し失礼します」

 天之羽張(あまのはばしり)を抜くと、タケヒコはシンムの頭目掛けて振り下ろした。それは空気でも切っているかの様に、シンムをすり抜けた。

タケヒコ「これがわたしの神宝(かむたから)天之羽張(あまのはばしり)です。どの様な物だろうと透過して、切りたい対象だけを斬る事が出来ます」

シンム「そんな事が本当に出来るのか? 本当にそんな武器があんなら、おれにもあれば……」

 本心からそう思った。そんな武器が本当にあれば。そう、あの日に何か出来たかもしれなかったのにと。

 一瞬タケヒコがジョウコウに眼を向ける。無言でジョウコウが頷く。そして、タケヒコは言葉を絞り出すように言った。

 タケヒコ「あります」

 シンム「そりゃあねぇとは思ってっけどさ……今、何て言った?」

 予想外の一言がタケヒコから帰って来た。何かに耐える様にタケヒコが言葉を続ける。

 タケヒコ「冗談でもなんでもなく、本当にあります。但し、神宝(かむたから)とは言えない代物ですが」

 そう言うとタケヒコが剣を差し出した。

 その剣は美しい曲線を描いていた。その剣の柄には美しい装飾が施されていた。その剣を受け取ったシンムの目には、なぜか涙が滲んでいた。

 それまでの怒りなど一瞬で消え去った。剣を、都牟刈之太刀(つむがりのたち)を受け取ったシンムには、なぜかわかないが、懐かしさと、悲しさが心を揺さぶった。

 そんなシンムに告げられる。

 タケヒコ「母上様が最期に打たれた剣です……シンム様」

 声を振り絞る様にタケヒコが言った言葉は、シンムの心臓の鼓動を加速させた。

 シンム「母さん……何言ってんだ?」

 恐る恐るシンムは聞き返した。加速する鼓動がシンムに襲いかかる。下を向き、目を閉じているタケヒコの代わりに、ジョウコウが答えた。

 ジョウコウ「サクヤは巫女。鍛冶を行って、剣を打ったりは出来ぬ」

 シンム「母さんが打てないんなら……まさか!」

 怖かった。ただ、ただ、シンムは怖かった。これから、恐らく言われる名を、出来れば聞きたくないと思った。

 ジョウコウ「シンム、おまえの本当の母親の名は、キサラギ」

 師であるジョウコウの言葉を聞いて、鼓動が止まるかとシンムは思った。聞きたくない事実は続く。

 ジョウコウ「シンム、モリヤは乱心した。この国はおまえが継げ」

 シンム「ジョウコウさんも突然何言ってんだ!」

 訴えるようにシンムは言った。冗談だと誰かに言って欲しかった。

 シンム「おれの父さんはコジロウだ! 母さんはサクヤだ! 姉貴からも何か言ってやってくれ!」

 祈るような気持ちでカグヤの方をシンムは見た。

 辛そうに青白い顔をしたカグヤが声を絞り出す。

 カグヤ「シンム……伯父さんの言った事は……本当だよ」

 言葉を出し終えると、カグヤはその場に倒れこんだ。



 神代と呼ばれる時代

 人は神の(てのひら)で踊り続ける

 天人(あまびと)は神を称え続ける

 四魂(しこん)は神の降臨にそなえ神器を探し出す

 五百之御統之珠いおつのみすまるのたまは神を呼び出す

 真布津之鏡(まふつかがみ)は神を映し出す

 神の器は神を向かえる準備を始める

 一つ。人の知識は無意味

 一つ。人の経験は無意味

 一つ。人の感情は無意味


 神は新しい世界を創造する

 始まりに。大地は(あし)の芽から生まれる

 次に。四魂(しこん)が神に帯同して現れる

 最期に。天人(あまびと)が新しく生まれ変わる


 新しい世界に人の住む場所はない

 人が新しい世界への移住など許されない

 人は生まれ変わりなどしない

 神にとって人は一瞬の(たわむ)れにすぎない


 神を失った世界に未来など存在するはずもない

 ……それは永遠に繰り返される……

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