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繋がる魂  作者: 水上踏吾
3/7

絶望

どうしたんだろう、どうしたんだろう…。


僕の心は焦燥に苛まれ、どうしようもなく顔が苦痛に歪む。


鏡のような湖面は、まさに鏡のように静まり返っている。


一粒の泡粒も上がって来ない。


いったいどうしたんだろう?


僕はあらん限りの光の矢を叩き込むように投げ込んだが、激しく波立つ水面はたちまち元の静けさに戻


り、沈黙を続けた。


僕は必死に水面を透かし見る。


しかし、鏡の湖面は霧の白さばかりを映し出し、僕の視線は上滑りしてきみの姿をとらえられない。


僕は、内なる力が爆発するまま大声で喚き、剣を抜いて湖面に切りつけた。二度、三度…。


きみの名を呼びたかったが名前が出て来ない。


言葉にならないうめきを振り絞って、岸辺を熊のようにうろつき、文字通り地団駄を踏んで砂を蹴り立


て、腕を振り回した。


僕は何度も湖水に飛び込もうとした。


そのたびに、僕の心の奥の冷徹なる部分が、飛び込んではいけない。


飛び込んだら死よりも恐ろしい結果が待っている、二度とあの人に会えなくなるぞ、と僕を引き留め


た。


飛び込もうとするたびに体が止まった。


体が飛び込むことを拒否した。


やがて僕は疲れ果て、がっくりと膝を着いた。


絶望が僕を打ちのめして重くのしかかり、ついには打ち倒した。


無くしたかもしれないものの大きさを思うと、心が切り刻まれてすり潰される。


口の中に血の味がいっぱいに広がる。


我知らず僕の口から悲鳴がもれ、僕のこぶしは岸辺の砂を叩く。


子どものように身悶えして僕はむせび泣いた。


僕はきみの死をほとんど確信していた。


狂おしく思考を巡らす僕の脳裏にひとつのイメージが浮かんだ。


火の山。火の山は死の山。死者が集うと言われる山。


生者が死者に会うには火の山に行くしかない。


こんなところでもういないかも知れないきみを待っているのは、もうごめんだ。


狂い死にしてしまうのがオチだ。


火の山に行ってきみがいなかったらそのときは…。


いずれにしろ、僕は動いていたい。じっとしているのはいやだ。


行こう!火の山へ‥。


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