表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

第6章 選ばなかった選択肢

最近、選択肢を見る機会が減った。

減った、というより、

最初から表示されなくなっていた。

以前は、

一覧になって並んでいたはずのものが、

気づくと一つか二つに絞られている。

多すぎるよりいい。

そう思った。


仕事の進め方についても、

「推奨手順」が最初に提示されるようになった。

他の手順が存在しないわけではない。

存在しない、とは書かれていない。

ただ、

そこまでスクロールする人が

ほとんどいなくなった。


選択肢を減らしたのは、

システムではなく、

利用者の行動だと説明されていた。

多くの人が

最初に提示されたものを選ぶ。

だから、

それが最適だと判断される。

循環しているだけだ。

そう言われれば、

反論する理由はなかった。


ある日、

昔よく通っていた店の前を通った。

閉店していたわけではない。

看板も出ている。

ただ、

「おすすめ」に表示されなくなっていた。

理由を調べる気にはならなかった。

行かなかった理由を、

説明する必要もなかった。


趣味についても、

似たようなことが起きていた。

新しいものは提案されるが、

少し遠回りなものは出てこない。

遠回り、

という言葉自体が、

あまり使われなくなっていた。


「昔は、もっと色々あったよね」

そう言った人がいた。

懐かしそうでも、

不満そうでもなかった。

事実を確認しているだけだった。


「今は、必要なものだけ残ってる感じがする」

別の人がそう答えた。

その場で、

反論は出なかった。

必要でないものを

あえて選ぶ理由を、

誰も持っていなかった。


選ばなかった選択肢は、

失敗ではない。

失敗でないなら、

反省も不要だった。

反省が不要なら、

記録に残す意味もなかった。


気づくと、

「迷った」という記憶が

少なくなっていた。

迷わなかったからではない。

迷う前に、

道が決まっていた。


一日の終わりに、

提示されたログを見る。

選択回数:最適化済

再検討:不要

そこに、

選ばれなかったものの一覧はない。

ないことに、

違和感を覚える理由がなかった。


選ばなかった選択肢は、

誰かに奪われたわけではない。

自分から捨てた、

という感覚もなかった。

ただ、

最初から存在しなかったように扱われている

それだけだった。


その夜、

ふと思った。

もし今、

「別の選択をしたい」と言ったら、

どうなるだろう。

考えたが、

何を別にしたいのかが

すぐには浮かばなかった。


選択肢は、

まだどこかにあるはずだった。

ただ、

それを探す理由が

見つからなくなっていた。

選ばなかった選択肢

最近、選択肢を見る機会が減った。

減った、というより、

最初から表示されなくなっていた。

以前は、

一覧になって並んでいたはずのものが、

気づくと一つか二つに絞られている。

多すぎるよりいい。

そう思った。


仕事の進め方についても、

「推奨手順」が最初に提示されるようになった。

他の手順が存在しないわけではない。

存在しない、とは書かれていない。

ただ、

そこまでスクロールする人が

ほとんどいなくなった。


選択肢を減らしたのは、

システムではなく、

利用者の行動だと説明されていた。

多くの人が

最初に提示されたものを選ぶ。

だから、

それが最適だと判断される。

循環しているだけだ。

そう言われれば、

反論する理由はなかった。


ある日、

昔よく通っていた店の前を通った。

閉店していたわけではない。

看板も出ている。

ただ、

「おすすめ」に表示されなくなっていた。

理由を調べる気にはならなかった。

行かなかった理由を、

説明する必要もなかった。


趣味についても、

似たようなことが起きていた。

新しいものは提案されるが、

少し遠回りなものは出てこない。

遠回り、

という言葉自体が、

あまり使われなくなっていた。


「昔は、もっと色々あったよね」

そう言った人がいた。

懐かしそうでも、

不満そうでもなかった。

事実を確認しているだけだった。


「今は、必要なものだけ残ってる感じがする」

別の人がそう答えた。

その場で、

反論は出なかった。

必要でないものを

あえて選ぶ理由を、

誰も持っていなかった。


選ばなかった選択肢は、

失敗ではない。

失敗でないなら、

反省も不要だった。

反省が不要なら、

記録に残す意味もなかった。


気づくと、

「迷った」という記憶が

少なくなっていた。

迷わなかったからではない。

迷う前に、

道が決まっていた。


一日の終わりに、

提示されたログを見る。

選択回数:最適化済

再検討:不要

そこに、

選ばれなかったものの一覧はない。

ないことに、

違和感を覚える理由がなかった。


選ばなかった選択肢は、

誰かに奪われたわけではない。

自分から捨てた、

という感覚もなかった。

ただ、

最初から存在しなかったように扱われている

それだけだった。


その夜、

ふと思った。

もし今、

「別の選択をしたい」と言ったら、

どうなるだろう。

考えたが、

何を別にしたいのかが

すぐには浮かばなかった。


選択肢は、

まだどこかにあるはずだった。

ただ、

それを探す理由が

見つからなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ