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猫と私  作者: ライアン


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9/10

コン、コン

すずめのさえずりが、少し開いた窓から聞こえてくる。

淡い光が部屋を包み、シーツと散らばったヒナの髪を優しく照らしていた。


ヒナはゆっくりと体を伸ばし、まだ眠気の残るまぶたを開く。

そして、少しずつ体を起こした。


隣ではサキが静かに眠っている。

規則正しい呼吸のたびに、布団の端から少しはみ出た尻尾が、夢の中で動くように小さく揺れた。

ヒナはその様子を見つめながら、ふっと微笑んだ。


「……寝てるのに、やっぱり音出すんだね」

小さく笑いながらつぶやく。


彼女はそっとベストを羽織り、足音を立てないようにして部屋を出た。


台所では、やかんに火をかけ、昨日のご飯と卵、そして味噌を取り出す。

やがて、温かい出汁と緑茶の香りが部屋いっぱいに広がっていった。


日曜の朝には、特別な静けさがある。

外からの騒音もなく、急ぐ理由もない。

ただ、ゆっくりと時間が流れていく――。


ヒナは食卓に二つの茶碗を置き、寝室の方をちらりと見る。

まだ音はしない。

彼女は静かに近づき、少しだけ扉を開けた。


サキはまだ眠っていた。

手を布団の上に置き、枕に髪を散らしている。

半分だけ見える耳が、鳥の声に反応するようにぴくりと動いた。


ヒナはその場でしばらく見つめる。

「……今のあなた、本当に穏やかね」

そう小さくつぶやいた。


けれど、扉を閉めた直後――サキがもぞもぞと動き、目をこすりながら起き上がる。

寝ぼけた声で言った。


「ヒナ……いいにおい……おなかすいた……」


ヒナは思わず吹き出した。

「はいはい、わかってるよ。朝ごはん、できてるから。」


数分後、二人は食卓につき、手を合わせる。

「いただきます!」

「いただきます……」と、まだ眠そうにサキが繰り返した。


二人はゆっくりと食べながら、ヒナが時々サキの箸の持ち方を直してあげる。

昨日よりもずっと慣れてきたサキは、上手くできるたびに小さく誇らしげな顔を見せた。


穏やかな朝食の時間が過ぎていく。

ヒナが片付けをしていると、サキはスプーンに残った最後の味噌汁をぺろりと舐めていた。


その時――


コン、コン。


玄関の方から、はっきりとした音が響いた。

二人の動きが止まる。

静かな家の中で、その音だけが際立つ。


ヒナはゆっくりとサキの方を見る。

「……誰か、ドアを叩いた?」

サキは小さく首をかしげ、不安そうに言った。


「……トモダチ?」


ヒナは手を拭きながら、心臓が少しだけ早く打つのを感じた。

「日曜の朝に、誰が来るのかしら……」


彼女は玄関へと歩み寄り、少しだけ迷ってからドアノブに手をかける。


コン、コン。

今度は、少し強めに。


「……はい、今行きます。」

ヒナは小さく答えた。

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