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猫と私  作者: ライアン


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4/10

サキの初めての銀行

その朝、町の小さな銀行はほとんど人がいなかった。

時計の静かなチクタクという音が、かすかな扇風機の唸りと混じり、窓から差し込む朝日が床に金色の四角い模様を描いていた。


ヒナはサキの方に身をかがめて、そっと囁いた。

「ここに座っててね? すぐ戻るから。」


サキはこくりとうなずき、少し高すぎる椅子によじ登った。

フードの下に隠した耳が、物音がするたびにぴくりと動き、目は部屋の中のすべての動きを追っていた――通り過ぎる客、数えられる紙幣、開くドア。


ヒナはバッグを胸に抱きしめながら、カウンターへと歩み寄った。

ガラスの向こうで、四十代ほどの女性が顔を上げ、その表情がぱっと明るくなった。


「まあ、ヒナちゃん! 今日も時計みたいに時間ぴったりね。」

「こんにちは、キオクガさん。」ヒナは小さく微笑んで答えた。

「学校はどう? 疲れてない?」


ヒナは首を横に振った。

「大丈夫です……いつも通り、宿題がちょっと多いくらい。」


キオクガさんは小さく笑った。人の沈黙をよく知る人の笑い方だった。

「家の方は? 相変わらずきれいにしてるんでしょう?」


「うーん……頑張ってます。」とヒナは少し恥ずかしそうに答えた。


職員は首をかしげ、ヒナの肩越しに視線を送った。

「そっちのお友達は?」と、少し離れたところに座っている少女を指さした。

「まるで地球を初めて見たみたいに、全部を見回してるけど。」


ヒナは一瞬固まった。

「えっと……あれはサキです。ちょっと、この辺りには……慣れてなくて。」


「ふむ、そうなのね。」キオクガさんは優しく笑った。

「初めまして、サキちゃん!」


サキは椅子の上からおずおずと手を挙げ、小さな声で答えた。

「はじめまして、キオクガさん!」


銀行員は声を上げて笑った。

「まあ、なんて礼儀正しいの! いいお友達ね。」


いくつかのいつものやり取りのあと、ヒナは書類にサインをして、女性が丁寧に差し出した紙幣を数え、財布にしまった。

「三万円、いつも通りでいいのね?」とキオクガさん。

「はい、今週はそれで大丈夫です。ありがとうございます。」


「ちゃんとご飯食べるのよ? まだ細いんだから。」

「はい……気をつけます。」ヒナは微笑んで答えた。


帰る前に、キオクガさんはサキに手を振った。

「また来てね、二人とも!」

「はい、また!」ヒナが返事をすると、サキが元気に「にゃー!」と鳴いて、

その場の全員が思わず笑ってしまった。

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