咲、あなたですか?
ヒナはゆっくりと目を開けた。カーテン越しに朝の淡い光が差し込む。台所からは、ミルクと焼きたてのパンの香りがふんわりと漂ってきた。
あくびをして、腕を伸ばすと、布団の中に何か不思議に温かくて大きなものを感じた。
心臓が一瞬止まったような気がした。サキじゃない…いつもの姿じゃない…布団の下には、知っている小さな猫よりもずっと大きな何かがいる。
ヒナは目をこすり、確かめようとした。その時、現実がヒナを直撃した。目の前には、自分と同じくらいの年頃の女の子が横たわっていた。裸で、黒い髪は乱れ、頭には猫耳があり、しっぽがゆらりと動いている。眠そうに半分閉じた猫のような瞳が、まだ眠りの余韻を帯びていた。
「な…なに…!?」ヒナは声を震わせ、胸がバクバクと高鳴った。
反射的に後ろに下がり、布団を引き寄せて身を守る。頬は真っ赤になり、パニックが押し寄せる。どうすればいい?この見知らぬ女の子は誰?夢…?それとも悪夢…?
でも、横たわる小さな体や、音に反応して動く耳の仕草に、どこか見覚えがある気がした。胸がキュッと痛む。
「サ…サキ…?」ヒナは小さな声で呟いた。自分の声が、この幻想を壊してしまうのではないかと恐れながら。
その瞬間、女の子は目を開けた。黄金色の猫のような瞳で、好奇心いっぱいにヒナを見つめる。ゆっくりと、猫のように腕を伸ばし、あくびをして、また目を閉じた。ヒナの胸に、驚きと安堵が同時に押し寄せる。そう、間違いない、サキだ。自分のサキだ。でも、こんな姿で…。
ヒナの唇に、震える笑みが浮かぶ。そっと近づき、寝ているサキの肩に手を置いた。女の子の顔は穏やかで優しく、まだ眠りの名残がある。でも、どこかとても懐かしい気持ちにさせる顔立ちだった。
「…本当に、君…だよね…」ヒナは声を震わせ、感情に押し潰されそうになりながら呟いた。
サキは少し身をよじった。それだけで、ヒナの心は溶けるように温かくなる。この、一瞬の時間は壊れやすいけれど、かけがえのない瞬間だった。久しぶりに、ヒナは「一人じゃない」と感じた。本当に、そう感じた。
そしてヒナは、寝顔の可愛いサキを見つめながら、この瞬間から二人の生活が、優しく、奇妙に、そして素敵に変わっていくことを直感したのだった。




