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最弱魔法×ロボット工学=世界最強の機巧使い 〜最弱魔法は歯車で最強に変貌──異世界機巧戦記〜  作者: 宵町あかり


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第20話 実演対決

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

「最弱魔法×ロボット工学=世界最強の機巧使い」第20話をお届けします。


ついに技術展示会当日!

F級市民たちの希望を背負い、カイトたちが魔導師団との実演対決に挑みます。

マリアンヌの涙、ロバートの喜び、そして予想外の展開――


技術と魔法がぶつかり合う、白熱の対決をお楽しみください!

展示会当日の朝、商人ギルドの大ホール前には、身分を問わず数百人の市民が列をなしていた。


まだ開場まで二時間もあるというのに、既に入り口付近は人で溢れている。その中でも目立つのは、普段この場所には立ち入ることすら許されないF級市民たちの姿だった。


「本当に、俺たちでも機械を動かせるんだろうか」


列の中ほどで、老いた農夫が隣の者に話しかけた。その手は、長年の畑仕事で節くれだっている。


「きっと大丈夫よ。マリアンヌが言ってたもの」


若い母親が赤子を抱きながら答える。その瞳には、かすかな希望の光が宿っていた。


大ホールの内部では、カイトたちが最終確認を行っていた。


「共鳴増幅器、動作確認完了」


リゼが機械の前でチェックリストを確認する。


「水汲み装置、自動織機、脱穀機、すべて準備万端だ」


エドガーが展示ブースを回りながら報告した。


ハーゲンは護衛として雇った職人たちと、会場の警備配置を確認している。入り口、窓際、そして機械の周辺。あらゆる角度からの妨害に備えていた。


「カイト」


マーカスが壇上から声をかけた。その横には、息子のロバートが緊張した面持ちで立っている。


「王都中が注目している。今日が、技術の真価を問われる日だ」


「はい」


カイトは深く頷いた。手には、昨夜まで調整していた共鳴増幅器の制御装置が握られている。


これまでの準備、仲間たちとの努力、そしてF級市民たちの期待。すべてが、この日にかかっている。


◆◇◆


開場時刻。


扉が開かれると、人々は堰を切ったように会場へと流れ込んだ。


貴族の豪華な衣装、商人の実用的な装い、職人の作業着、そして粗末な布をまとったF級市民たち。これほど多様な身分の者が一堂に会することは、王都の歴史でも稀だった。


「まずは、日常支援機械のデモンストレーションから始めます」


カイトが壇上に立ち、緊張を押し殺しながら声を張り上げた。


会場が静まり返る。


「最初にご覧いただくのは、水汲み補助装置です」


大きな水槽が運び込まれ、その横に真鍮と鉄で作られた装置が設置された。歯車と滑車、そして念動力を受け取る受容板が組み合わされた、複雑な機構だ。


「この装置は、わずかな念動力で大量の水を汲み上げることができます」


観衆の間から疑いの視線が向けられた。特に、会場の後方に陣取る魔法使いたちからは、嘲笑すら聞こえてくる。


「では、実際にご覧いただきましょう」


カイトが客席を見回す。


「どなたか、F級判定を受けた方はいらっしゃいませんか?」


一瞬の沈黙。


そして、震える手が一つ、上がった。


マリアンヌだった。


「私が...私がやります」


彼女の声は小さかったが、会場中に響き渡った。F級の仲間たちから、小さな歓声が上がる。


マリアンヌが壇上に上がる。その足取りは震えていたが、瞳には決意が宿っていた。


「念動力を、ここに込めてください」


カイトが受容板を指差す。


マリアンヌは深く息を吸い、両手を装置に向けた。


F級の念動力。それは、紙一枚すら動かすのがやっとという、微弱な力だ。


しかし――。


ガシャン、という金属音と共に、歯車が回り始めた。


滑車が動き、ロープが巻き上げられていく。そして、水槽から勢いよく水が汲み上げられた。まるで、B級魔法使いが水魔法を使っているかのような勢いで。


「私でも...私でも動かせる!」


マリアンヌの目から、涙が溢れた。


60年の人生で初めて、自分の力が何かを成し遂げた瞬間だった。


会場がどよめく。


「本当にF級の念動力で...」


「まさか、あんな勢いで水が...」


観衆の驚きは、次第に感動へと変わっていった。F級市民たちからは、歓声が上がり始める。


「次は、自動織機と穀物脱穀機をご覧いただきます」


リゼが前に出て、説明を始めた。


F級市民たちが次々と挑戦し、見事に機械を動かしていく。織機が規則正しく布を織り、脱穀機が効率的に穀物を処理する。


職人たちも誇らしげな表情で、自分たちが作り上げた機械の活躍を見守っていた。


◆◇◆


「続いて、産業機械のデモンストレーションです」


エドガーが壇上に立つ。


「精密時計機構の組み立てを、念動力で制御する実演を行います」


百個以上の微細な部品が、台の上に並べられた。歯車、ゼンマイ、軸受け。どれも髪の毛ほどの精密さが要求される部品だ。


「私がやってみたい」


声を上げたのは、ロバートだった。


マーカスの息子。まだ15歳の少年は、昨年F級判定を受けていた。商人ギルドの後継者としては致命的な判定に、父子ともに苦悩していたのだ。


「ロバート様、どうぞ」


カイトが優しく促す。


少年は緊張した面持ちで装置の前に立った。


「ここに念動力を込めて、この操作レバーで部品を選択してください」


カイトが丁寧に指導する。


ロバートの震える手が、装置に触れた。


カチリ。


微細な歯車が、正確に軸に嵌まった。


カチリ、カチリ。


次々と部品が組み上がっていく。F級の念動力では不可能なはずの精密作業が、機械の補助により完璧に実行されていく。


「できた...F級の僕にもできた!」


ロバートの顔が輝いた。


マーカスの目に、複雑で温かい感情が浮かぶ。息子が初めて、自分の力で何かを成し遂げた瞬間を目撃したのだ。


観衆の中から、拍手が起こった。最初は小さく、しかし次第に大きくなっていく。


その時だった。


バン!


大ホールの扉が、勢いよく開かれた。


◆◇◆


現れたのは、魔導師団の代表団だった。


先頭に立つのは、B級魔導師の紋章を胸に付けた壮年の男。その後ろに、C級魔導師が4人続く。彼らの顔には、明らかな敵意が浮かんでいた。


「茶番はそこまでだ」


B級魔導師の声が、会場に響き渡った。


瞬間、場の空気が凍りついた。F級市民たちは恐怖に身を縮め、商人たちも緊張の色を隠せない。


「これは正式な技術展示会です。妨害は――」


マーカスが前に出ようとしたが、B級魔導師は手を上げて制した。


「妨害?とんでもない」


男は嘲笑を浮かべた。


「我々は、この茶番の正体を暴きに来ただけだ」


彼の視線が、カイトに向けられる。


「その玩具で、我々の魔法に勝てるとでも思っているのか?」


カイトは冷静に答えた。


「勝ち負けではありません。技術と魔法が共に生きる道を――」


「黙れ!」


B級魔導師の怒声が響く。


「力なき理想など、何の意味もない。証明してみせろ、その技術とやらの価値を」


観衆がざわめく。


すると、マーカスが機転を利かせて前に出た。


「面白い。では、公平な勝負をしていただきましょう」


彼の提案は明確だった。


「三つの課題で、魔法と技術を比較する。重量物の移動、精密作業、そして持続力。いかがですか?」


B級魔導師は鼻を鳴らした。


「望むところだ。恥をかくのは、そちらだがな」


◆◇◆


第一戦、重量物の移動。


会場の中央に、1トンの石材が運び込まれた。


B級魔導師が前に出る。彼は杖を掲げ、浮遊魔法を発動させた。


「浮遊せよ、重力の鎖を断て」


石材がふわりと浮き上がる。観衆から感嘆の声が漏れた。これこそが、千年の歴史を持つ魔法の力だ。


石材は軽々と10メートル先まで運ばれ、静かに地面に降ろされた。


「さあ、技術とやらで同じことをしてみせろ」


カイトは頷き、準備していた多段滑車システムを展開した。


「手伝ってください」


彼が呼びかけたのは、F級市民4人だった。


マリアンヌ、ロバート、そして会場にいた農夫と母親。


4人が滑車のロープを握る。


「せーの」


カイトの合図で、4人が同時にロープを引いた。


ギィィィ...


滑車が回り、石材がゆっくりと持ち上がる。多段滑車の原理により、実際の重量の20分の1の力で済むのだ。


F級4人の力でも、1トンの石材は見事に移動された。


「一人の英雄より、皆の力」


カイトの言葉に、F級市民たちが歓声を上げた。


B級魔導師の顔が、わずかに歪む。


◆◇◆


第二戦、精密作業。


100個の歯車を同時に制御する課題が出された。


B級魔導師は念動力を展開する。強大な魔力が、歯車たちを包み込んだ。


30個、40個、50個...


しかし、そこで限界が見えた。汗が額に浮かび、呼吸が荒くなる。結局、50個を同時制御するのが精一杯だった。


「魔力にも...限界がある」


彼は悔しそうに呟いた。


カイトは歯車連動システムを起動した。


一つのマスター歯車に念動力を込めると、それが次の歯車へ、そしてまた次へと力を伝達していく。


カタカタカタ...


100個の歯車が、完璧に同期して回転し始めた。


「機械は疲れを知らない」


カイトの説明に、観衆の視線が変わり始めた。技術への興味と期待が、明らかに高まっている。


◆◇◆


第三戦、持続力テスト。


どちらが長く力を維持できるかという勝負だった。


B級魔導師は、全力で魔法陣を展開した。光が会場を照らし、その威厳に観衆は息を呑む。


しかし、15分が過ぎた頃から、光が弱まり始めた。


20分で、明らかな疲労の色が見える。


30分で、ついに膝をついた。


「魔力が...枯渇した」


一方、カイトはフライホイール式蓄力装置を稼働させていた。


巨大な円盤が回転し続け、蓄えられた運動エネルギーが途切れることなく力を供給し続ける。


「この装置なら、3時間は継続可能です」


実演として、1時間経過後も変わらぬ出力を維持していることを示した。


「蓄えた力は、必要な時に解放できる」


観衆から、技術への声援が上がり始めた。


F級市民たちの顔には、希望に満ちた表情が浮かんでいる。一部の魔法使いたちも、考え込むような表情を見せていた。


◆◇◆


「これが技術の力です」


カイトが壇上で宣言した。


「特別な才能がなくても、知恵と工夫で――」


その時だった。


会場の奥から、ゆっくりと歩いてくる人影があった。


黒いローブを纏い、フードで顔を隠した人物。その存在感は、B級魔導師とは比較にならないほど重く、不気味だった。


「興味深い見世物だったが」


低い声が響く。


「所詮は、子供の遊びに過ぎん」


黒いローブの人物が、壇上に上がる。


その威圧感に、会場全体が息を呑んだ。F級市民たちは恐怖に震え、商人たちも顔を青ざめさせる。


カイトも、本能的な危機感を覚えた。


この人物は、今までの相手とは次元が違う。


「真の力を見せてやろう」


黒いローブが、懐から古い杖を取り出した。


その杖には、見たこともない古代文字が刻まれている。杖の先端に埋め込まれた宝石が、不気味な紫色の光を放ち始めた。


アレクサンダーが、会場の隅から状況を見守っていた。彼の表情にも、警戒の色が浮かんでいる。


「これは...まさか古代魔法?」


詠唱が始まった。


聞いたことのない言語。しかし、その響きだけで空気が重くなっていくのが分かる。


会場の照明が揺らぎ、窓ガラスがビリビリと震え始めた。


「みんな、離れて!」


カイトが叫んだ。


彼は直感的に理解した。これから起こることは、今までの対決とは比較にならない、本物の脅威だと。


F級市民たちが慌てて後退する。商人たちも壁際に避難し始めた。


黒いローブの詠唱が、最高潮に達しようとしている。


杖の先端の光が、太陽のように眩しく輝いた。


次の瞬間、何が起こるのか。


誰にも、分からなかった。

第20話、いかがでしたでしょうか?


技術展示会での実演対決、F級市民たちが初めて力を発揮する感動的な瞬間を描きました。

水汲み装置、精密時計機構、そして魔導師団との三つの対決――

技術の可能性が、確実に人々の心を動かし始めています。


しかし、黒いローブの人物の登場で事態は急変!

古代魔法という予想外の脅威に、カイトたちはどう立ち向かうのか?


次回、アレクサンダーの決断が物語を大きく動かします!


感想やご意見、いつでもお待ちしております。

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