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第12話 分かれる道

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

「最弱魔法×ロボット工学=世界最強の機巧使い」第12話をお届けします。


職人ギルドでの緊急会議。魔導師団の勧告を前に、職人たちの意見は真っ二つに分かれます。

恐怖か、希望か。伝統か、革新か。それぞれの立場と思いが激しくぶつかり合う中、ハーゲンの50年の重みが場を変えていきます。


分かれた道の先に、何が待っているのか。

技術の未来を決める重要な一話をお楽しみください!

昼過ぎの日差しが、石畳の街路を白く照らしていた。


カイトは職人ギルドへ向かう道を歩きながら、朝の勧告書のことを思い返していた。魔導師団の脅しは確かに恐ろしい。だが、それ以上に気がかりなのは、この街の職人たちがどう反応するかだった。


隣を歩くハーゲンの顔は、いつになく厳しい表情を浮かべている。長年の付き合いから、カイトには老職人の心中が手に取るように分かった。50年間この街で働いてきた彼にとって、職人ギルドは第二の家のようなもの。そこで起きる分裂は、家族の崩壊にも等しい痛みだろう。


「ハーゲンさん」カイトが静かに声をかけた。「無理をしなくても——」


「何を言う」


ハーゲンは歩みを止めることなく答えた。その声には、鋼のような強さがあった。


「わしは逃げも隠れもせん。技術を信じると決めた以上、最後まで貫き通す。それが職人の生き方だ」


二人の後ろから、リゼとエドガーが小走りで追いついてきた。


「すみません、遅くなりました」リゼが息を整えながら言った。「魔法使いの知り合いに話を聞いていたら、時間が」


「何か分かったのか?」エドガーが興味深そうに尋ねた。


リゼは複雑な表情を浮かべた。


「魔導師団内部でも、意見は割れているようです。若い世代を中心に、技術との共存を模索する動きもあるとか。ただ、表立って支持を表明できる状況ではないそうです」


「なるほど」カイトは頷いた。「敵は一枚岩ではないということか」


職人ギルドの建物が見えてきた。


重厚な石造りの建物は、この街の職人たちの誇りと伝統を体現していた。正面の大扉には、ハンマーと金床を組み合わせた紋章が刻まれている。普段なら開け放たれているその扉が、今日は固く閉ざされていた。


「緊張感が伝わってくるな」エドガーが呟いた。


ハーゲンが扉に手をかけた。重い木製の扉が、軋みを上げながらゆっくりと開く。


中から漏れ出てきたのは、熱気と喧騒だった。


石造りの壁に囲まれた集会所には、すでに30名を超える職人たちが集まっていた。普段は整然としているこの空間が、今日は議論の熱気で満ちている。まるで鍛冶場の炉が一斉に燃え上がったかのような、圧倒的な熱量がそこにあった。


「ハーゲンが来たぞ!」


誰かが叫ぶと、ざわめきが一瞬静まった。全員の視線が、入り口に立つ4人に集中する。その視線には、期待と不安、そして疑念が入り混じっていた。


カイトは背筋を伸ばした。ここで怯んではいけない。技術の未来は、この場での話し合いにかかっている。


「皆、集まってくれてありがとう」


ハーゲンが前に進み出た。80歳を超える老職人の背中は、長年の労働で曲がってはいたが、その佇まいには揺るぎない威厳があった。深く刻まれた皺の一本一本に、半世紀に及ぶ職人人生が刻まれている。


ハーゲンは演壇に上がると、ゆっくりと職人たちを見回した。


「今日話し合いたいのは、例の新技術についてだ。そして」——彼は懐から勧告書を取り出した——「今朝届いた、魔導師団からの勧告についても」


集会所の空気が一変した。


先ほどまでの喧騒が嘘のように消え、重苦しい沈黙が場を支配した。勧告書という言葉が持つ重みを、ここにいる全員が理解していた。


「勧告書だと?」


最前列にいた年配の職人が立ち上がった。ゴードンという名の鍛冶師で、頑固者として知られる男だった。彼の顔は驚きと怒りで赤く染まっている。


「ハーゲン、あんたは何ということを......技術なんぞに手を出すから、魔導師団に目をつけられたんだ!」


「落ち着け、ゴードン」


別の職人が宥めようとしたが、ゴードンは聞く耳を持たなかった。


「落ち着いていられるか!」彼の声が石壁に反響した。「先祖代々続いてきた職人の誇りを、機械なんぞで汚すから、こんなことになったんだ!」


若い大工のトーマスが反論した。


「でも、ゴードンさん。実際に技術のおかげで、仕事が楽になったじゃないですか。あの滑車システムのおかげで——」


「黙れ、若造!」


ゴードンの怒号が、トーマスの言葉を遮った。彼の太い腕が振り上げられ、今にも暴力沙汰になりそうな気配が漂った。


「待て」


カイトが前に出た。彼の声は静かだったが、なぜか全員の注目を集めた。


「議論は必要だ。でも、感情的になっては何も解決しない。まずは、事実を共有させてほしい」


カイトはハーゲンから勧告書を受け取り、その内容を読み上げた。一語一語が、集会所の重い空気をさらに重くしていく。


読み終えると、再び沈黙が訪れた。


今度は、恐怖の色を帯びた沈黙だった。魔導師団の名前が持つ威圧感は、想像以上に大きかった。


「これで分かっただろう」


ゴードンが勝ち誇ったような声を上げた。しかし、その声には先ほどまでの怒りではなく、深い恐怖が滲んでいた。


「技術なんてものに関わるから、こんな目に遭うんだ。今すぐやめるべきだ」


「でも」若い職人の一人が恐る恐る手を上げた。「技術のおかげで、生活が良くなった人もたくさんいます。それを全部捨てるんですか?」


「命あっての物種だろう!」ゴードンが声を荒げた。「魔導師団を敵に回して、無事でいられると思うのか!」


議論は平行線をたどった。


年配の職人たちの多くは、ゴードンに同調した。彼らにとって、魔導師団への恐怖は理屈を超えたものだった。長年の経験が、権力に逆らうことの危険性を教えている。


一方、若い職人たちは技術の可能性を捨てきれずにいた。実際に恩恵を受け、新しい未来を見た彼らにとって、今更後戻りすることは考えられなかった。


中間の世代は、どちらにも決めかねて沈黙を保っていた。


議論が白熱し、今にも取っ組み合いになりそうな雰囲気になったとき——


ハーゲンがゆっくりと立ち上がった。


老職人は何も言わず、ただ静かに立っているだけだった。しかし、その存在感は圧倒的だった。50年間、この街で最も尊敬される職人として生きてきた男の重みが、騒然としていた場を徐々に静めていく。


完全な静寂が訪れたとき、ハーゲンは口を開いた。


「わしの話を聞いてくれ」


その声は大きくはなかったが、集会所の隅々まで響き渡った。


「わしは50年、この仕事をやってきた」


ハーゲンは自分の手を見つめた。無数の傷跡と、厚くなった皮膚。それは半世紀の労働の証だった。


「最初は見習いとして、親方の真似をするだけだった。失敗ばかりで、何度も辞めようと思った。でも、続けた。なぜか分かるか?」


誰も答えなかった。全員が、老職人の言葉に耳を傾けていた。


「ものを作ることが、好きだったからだ。自分の手で、何もないところから形を生み出す。それが嬉しくて、楽しくて、だから続けられた」


ハーゲンはゆっくりと職人たちを見回した。


「その間、道具も変わった。技法も進歩した。昔は手で叩いていた鉄を、今は水車の力を借りて叩く。昔は目分量だった寸法を、今は定規で正確に測る」


彼の目に、静かな炎が宿った。


「それは堕落か?いや、違う。より良いものを作るための進歩だ。職人の本質は変わらない。より良いものを作りたいという、その心だけは」


ゴードンが口を開こうとしたが、ハーゲンは手で制した。


「ゴードン、お前の気持ちは分かる。わしも最初は戸惑った。機械なんぞに頼って、職人の技が廃れるんじゃないかと」


ハーゲンはゴードンに近づいた。同じ年代を生きてきた職人同士の、無言の理解がそこにあった。


「でも、実際に使ってみて分かった。技術は職人の技を奪わない。むしろ、その技をより遠くへ、より多くの人に届ける手助けをしてくれる」


ゴードンの表情が変わった。怒りが消え、代わりに深い苦悩が浮かび上がった。


「でも、ハーゲン」彼の声は震えていた。「わしは怖いんだ。この手で覚えた技が、機械に取って代わられることが。わしの存在価値が、なくなってしまうことが」


その告白に、集会所は静まり返った。


頑固者のゴードンが、自分の弱さを認めた。それは誰も予想していなかった展開だった。


ハーゲンはゴードンの肩に手を置いた。


「ゴードン、君の技は機械では代えられない。なぜなら、君の技には魂が宿っているからだ」


老職人は振り返り、全員に向かって語りかけた。


「技術は道具だ。そして道具を使うのは、人間の心だ。その心が職人の誇りに満ちているなら、技術もまた職人の誇りを表現する手段となる」


若い職人たちの表情が輝いた。ハーゲンの言葉の中に、彼らが求めていた答えがあった。


「でも、魔導師団の勧告は?」中年の職人が不安そうに尋ねた。「従わなければ、どんな報復があるか」


「確かに危険はある」ハーゲンは正直に答えた。「だが、ここで屈したら、我々は永遠に誰かの言いなりだ。職人としての誇りを、自分たちで守らずして、誰が守るというのだ」


リゼが前に出た。


「私からも一言、言わせてください」


魔法使いである彼女の発言に、職人たちは驚いた表情を見せた。


「私は魔法使いとして育ちました。魔導師団の恐ろしさも知っています。でも、最近技術に触れて、一つ分かったことがあります」


リゼは職人たちを見回した。


「魔法も技術も、本質は同じです。人を幸せにするための手段。それを権力の道具にしている魔導師団の方が、間違っているんです」


その言葉は、職人たちに大きな衝撃を与えた。魔法使い自身が、魔導師団を批判する。それは彼らの想像を超えた出来事だった。


エドガーも発言した。


「商人の立場から言わせてもらえば、技術製品への需要は日々高まっています。民衆は技術を求めている。その声を無視することこそ、本当の裏切りではないでしょうか」


議論は新たな局面を迎えた。


恐怖一辺倒だった雰囲気が、少しずつ変化していく。技術の価値を認め、守ろうとする声が、徐々に大きくなっていった。


「採決を取ろう」


ハーゲンが提案した。


「技術を支持し、活動を続けることに賛成の者は?」


手が上がり始めた。


最初は恐る恐る、そして次第に堂々と。若い世代はほぼ全員が手を上げた。中間世代からも、半数近くが賛成を示した。


そして——


ゴードンがゆっくりと手を上げた。


「ゴードンさん?」周りの職人たちが驚きの声を上げた。


「勘違いするな」ゴードンは照れくさそうに言った。「わしは技術が好きになったわけじゃない。ただ......ハーゲンの言う通り、職人の誇りを守るためなら、新しいことにも挑戦せんといかんと思っただけだ」


最終的な結果は、支持派15名、反対派13名、保留2名。


僅差での支持だったが、ギルドとしての正式な承認を得るには、規約により3分の2以上の賛成が必要だった。


「正式な支持は得られませんでした」


ハーゲンが結果を告げると、失望の空気が流れた。


しかし、すぐに変化が起きた。


「ちょっと待ってください」


トーマスが立ち上がった。彼の後ろには、同じ思いを持つ若い職人たちが並んでいる。


「ギルドが認めなくても、僕たちは個人として技術を支持します。カイトさんから学びたいことがまだたくさんある」


「そうだ」別の若者も声を上げた。「新しい技術を身につけて、もっと良い仕事がしたい」


次々と若い職人たちが立ち上がり、個人的な支持を表明した。


そして驚くべきことに——


「わしも......個人的に参加させてもらえんか」


ゴードンが呟くように言った。


「技術は信用せん。だが、お前たちの心意気は信用する。年寄りにも、まだ学べることがあるかもしれん」


ハーゲンの顔に、深い皺に刻まれた笑みが浮かんだ。


正式な支持は得られなかった。しかし、それ以上に価値のあるものを得た。職人たちの心からの理解と、世代を超えた結束。それは、どんな公式承認よりも強い力となるだろう。


会議が終わり、職人たちが三々五々に散っていく中、カイトたちは残って話し合っていた。


「予想以上の成果だったな」エドガーが満足そうに言った。


「ゴードンさんが味方になってくれるとは」リゼも驚きを隠せない。


ハーゲンは窓の外を眺めていた。夕暮れの光が、老職人の横顔を金色に染めている。


「職人は頑固だ」彼は静かに言った。「だが、本物を見る目は持っている。技術が本物だと認めれば、必ず味方になってくれる」


カイトは仲間たちを見回した。


朝は恐怖に怯えていた彼らが、今は希望に満ちている。それは技術の力ではない。人と人とが理解し合い、手を取り合うことで生まれた希望だった。


「これからが本当の勝負だ」カイトは決意を新たにした。「魔導師団の圧力に負けないよう、みんなで力を合わせよう」


職人ギルドの建物を後にする彼らの足取りは、朝とは違って力強かった。


道は確かに分かれた。しかし、それは分裂ではなく、それぞれの信念に基づいた選択だった。そして、その選択が新たな道を切り開く力となることを、彼らはまだ知らない。


夕暮れの街に、新しい時代の足音が響き始めていた。


◆◇◆


工房への帰り道、4人は並んで歩いていた。


石畳に落ちる影が長く伸び、建物の間から差し込む夕日が、街全体を金色に染めている。市場の喧騒も少しずつ静まり、一日の終わりが近づいていることを告げていた。


「しかし、ゴードンさんの変化には驚いたな」エドガーが感心したように言った。「あれほど頑固な人が」


「恐怖は人を頑なにする」ハーゲンが答えた。「だが、その恐怖を正直に認めることができれば、変わることもできる。ゴードンは勇気ある男だ」


リゼは考え込むような表情を浮かべていた。


「でも、これで終わりじゃありませんよね。魔導師団は次の手を打ってくるはずです」


「その通りだ」カイトが頷いた。「7日間という期限がある。その間に、できるだけ多くの支持者を集め、対策を練る必要がある」


角を曲がると、意外な光景が目に入った。


カイトの工房の前に、数人の若い職人たちが集まっていた。皆、会議に参加していた者たちだ。その手には、それぞれ道具や材料が握られている。


「カイトさん!」


トーマスが真っ先に駆け寄ってきた。


「僕たち、今すぐにでも技術を学びたいんです。時間がないかもしれないけど、少しでも多くのことを身につけたくて」


他の若者たちも口々に言った。


「基本的な機構の作り方を教えてください」


「歯車の噛み合わせの計算方法を知りたいです」


「念動スキルとの組み合わせ方を」


彼らの目は真剣そのものだった。単なる好奇心ではない。自分たちの未来を切り開こうとする、強い意志がそこにあった。


カイトは彼らを見回し、微笑んだ。


「分かった。でも、今日はもう遅い。明日の朝から、希望者全員に基礎講座を開こう」


「本当ですか!」若者たちの顔が輝いた。


「ただし」カイトは真剣な表情になった。「魔導師団の勧告のことは知っているね?参加することで、君たちも危険に巻き込まれるかもしれない」


若者たちは顔を見合わせた。しかし、誰一人として怯む者はいなかった。


「覚悟の上です」トーマスが代表して答えた。「僕たちは、自分の意志でここにいます」


ハーゲンが前に出た。


「よし、それなら明日は朝一番から始めよう。基礎から応用まで、みっちり教えてやる」


老職人の言葉に、若者たちは歓声を上げた。


「ありがとうございます!」


「明日は早く来ます!」


「楽しみです!」


興奮した様子で帰っていく若者たちを見送りながら、エドガーが呟いた。


「希望の種は、確実に芽吹いているな」


「そうですね」リゼも頷いた。「でも、それを守るのは私たちの責任です」


工房に入ると、朝とは違う雰囲気がそこにあった。


恐怖と不安に満ちていた空間が、今は新たな決意と希望で満たされている。作業台の上の工具や歯車も、なぜか輝いて見えた。


「さて」カイトが言った。「明日からは忙しくなる。今夜のうちに、講座の準備をしておこう」


「教材も必要だな」ハーゲンが提案した。「基本的な設計図と、実習用の材料を用意せねば」


「私は理論面のサポートをします」リゼが申し出た。「魔力との組み合わせ方について、分かりやすく説明できるよう準備しておきます」


「俺は資材調達だ」エドガーが言った。「若者たちが練習に使える安価な材料を、できるだけ多く確保しよう」


4人はそれぞれの準備に取りかかった。


カイトは基礎的な機構の設計図を描き始めた。単純な歯車の組み合わせから、少し複雑な変速機構まで、段階的に学べるよう工夫を凝らす。


ハーゲンは工具を点検し、初心者でも使いやすいものを選別していった。安全に配慮しながら、効率的に学べる環境を整える。


リゼは魔法理論の本を開き、技術との融合について要点をまとめ始めた。難解な理論を、誰にでも理解できる言葉に置き換えていく。


エドガーは在庫リストを確認し、明日必要になる材料の手配を始めた。限られた予算の中で、最大限の効果を生み出す計算をする。


夜が更けても、工房の灯りは消えなかった。


窓から漏れる光は、まるで希望の灯台のように、暗い街を照らしている。時折聞こえる金属音や話し声は、新しい時代への準備が着々と進んでいることを告げていた。


「これでよし」


深夜近く、カイトが最後の設計図を描き終えた。


机の上には、初心者向けの教材が山のように積まれている。それぞれに、カイトの工夫と配慮が込められていた。


「お疲れ様」リゼが温かい茶を差し出した。「これで明日の準備は整いましたね」


「ああ」カイトは茶を受け取りながら答えた。「後は、彼らの熱意に応えるだけだ」


ハーゲンが窓の外を見つめていた。


「50年職人をやってきて、今日ほど誇らしい日はなかった」老職人が静かに言った。「技術が世代を超えて受け継がれていく。それを見届けられることが、こんなに嬉しいとは」


「これは始まりに過ぎません」エドガーが言った。「明日からが本当の勝負です」


4人は顔を見合わせ、静かに頷いた。


魔導師団の勧告という暗雲は確かに立ち込めている。しかし、その雲の向こうには、必ず光がある。技術という新しい光が、この世界を照らす日が必ず来る。


「今日はもう休もう」カイトが提案した。「明日は長い一日になる」


それぞれが帰路につく中、カイトは一人工房に残った。


静かになった工房で、彼は作業台の上の歯車を見つめた。小さな金属の円盤が、月光を受けて静かに輝いている。


「分かれた道は、いずれ一つになる」


カイトは呟いた。


今日、職人ギルドで見た光景が脳裏に浮かぶ。対立し、議論し、そして理解し合った職人たち。年齢も立場も違う彼らが、最後には同じ方向を向いた。


それは技術の力ではない。人間の持つ、より良い未来を求める心の力だ。


窓の外では、星が静かに瞬いていた。


明日、この工房は若い職人たちの熱気で満たされるだろう。彼らの手によって、新しい歯車が回り始める。そしてその歯車は、やがて大きな力となって、世界を動かしていく。


カイトは深呼吸をして、最後の片付けを始めた。


分かれた道の先に、新しい希望が待っている。

第12話、いかがでしたでしょうか?


職人ギルドでの採決は僅差で支持多数も、正式承認には至らず。しかし、それ以上に価値のあるものを得ました。

特に印象的だったのは、頑固者ゴードンの変化。「技術は信用せん。だが、お前たちの心意気は信用する」——恐怖を正直に認め、それでも前に進もうとする姿に胸を打たれます。


若い職人たちが自主的に集まり、技術を学ぼうとする姿も感動的でした。

公式な支持は得られなくても、心からの理解と世代を超えた結束が生まれました。


次回は、市場での反応を探るリゼの視点から。技術を必要とする人々の本当の声とは?

F級として生きる人々の希望と尊厳の物語が展開します。


感想やご意見、いつでもお待ちしております。

評価・ブックマークもとても励みになります!


次回もお楽しみに!


X: https://x.com/yoimachi_akari

note: https://note.com/yoimachi_akari

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