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第6話「現実という名の絶望」

ちょっと長いかも?です。

桐生さんと連絡先を交換した3日後に俺が今までコレクション用にリアライズした武器たちを運び込む厳重な装甲車が来た。


その装甲車には桐生さんが乗っていて、リアライズの能力で作られた武器で実戦経験のある探索者と簡単な模擬戦闘をしませんか?という提案を受けて、自身の成長や描くためのイメージを固めるためにもOKした。


そして、桐生さんがギルドでの新人向けの訓練を変更して、より実践的な模擬戦闘をする話になった。


それに正直、攻撃系は全くもって触れていない。

危険すぎるからだ。


だから、綺麗、かっこいい、独創的な武器がほとんど。

初めての採取要員として賢者の指輪を付けたのは自分が色々なアイテムたちを使いこなせないのもあったけれど、フレーバーテキストやゲーム内での効果が強いのはコレクションの中であれと腕輪くらいなもの。


それでも、きっと強くてビックリするんじゃないかな。

桐生さんのアイテム活用の能力のお墨付きがあったし。


約束の日まで、残り4日。


その日までに毎日1つずつ書き上げて、リアライズしていった。

剣に、鎧に、防御魔法が出るようにイメージして作った指輪。


今日の武器使用感を受けて作ろうと思ったので、今日の分はまだ使っていない。


このチャンスに本気で取り組みたいと思った。


なのでコンビニのバイトやダンジョンの採取要員は、全部休んだ。

全力で創作活動に時間を使う。


コンビニのバイトには仮病を使って休んだら店長が心配して体調を気遣ってくれた。


「体調崩してるなら無理しちゃダメだよ。30歳超えたら自分の身体のことも過信しちゃダメだぞ」


店長の優しい言葉に、少しだけ後ろめたさを感じた。でも今は創作に集中したかった。


「すみません、もう少しで治ると思うので」


「分かった。でも本当に体調悪くなったら、ちゃんと病院行けよ」


ダンジョンの採取要員のバイトはペナルティ覚悟で、ドタキャンをした。


「申し訳ありません、急に体調を崩してしまって……」


「そうですか……分かりました。ただ、今回で3回目の直前キャンセルになりますので、今後の採用については検討させていただきます」


電話口の担当者の声は明らかに冷たくなっていた。


これで採取要員の仕事も失うかもしれない。


でも、今はそれより大切なことがあった。


そして約束の日、朝早くから登録したての桐生さんから着信がくる。


「鈴鳥さん、迎えに上がるのは10時頃で大丈夫ですか?」


【迎え】まるでVIP待遇に、これからの将来が明るいことを予感させた。冬の空に暖かい太陽が昇っている気分だった。


「はい!その時間で大丈夫です!」


返事は即答。


10時になる少し前に黒塗りの高級車が迎えに来て、俺は桐生さんと雑談しながらギルドホールへ向かう。


国内最大級のギルド……セレスティア・フロンティアの本社ビルは、想像以上に威圧的だった。

セキュリティゲートに、警備員の数も俺には新鮮で恐ろしくもあり頼もしかった。


きっと俺はここで思う存分にリアライズを使いイラストの質を上げていって佐藤さんや山田さんにも胸を張って自分の作品を見てもらおう。


地上50階を超えているような超高層ビル。中に入るとエントランスホールの天井は15メートルもあり、まるで大聖堂のような開放感がある。そこを颯爽と歩く探索者たちは、皆一様に自信に満ちた表情をしていた。


「鈴鳥さん、こちらです」


桐生さんが案内してくれたのは、地下だった。


エレベーターで降りていく間、俺の胸は期待と不安で一杯になっていた。

手にしているのは、自分が初めて描き、リアライズした剣。バランスは悪いかもしれないが、これは間違いなく俺のオリジナルだった。


リュックサックには、3日間で描いてリアライズしたものが詰め込まれている。


「お疲れ様です!桐生副社長」


訓練場でハキハキとした声をかけてきたのは、A級探索者の青年だった。年齢は30代前半くらいだろうか。筋肉質な体格に、実戦で培った鋭い眼光。


「そちらの方が例の?」


「はい。こちら、鈴鳥さんです。特別な技術をお持ちの方でして」


桐生さんの紹介に、青年の目が俺に向けられた。その瞬間、俺は背筋が伸びるのを感じた。


「……桐生副社長が連れてくるってことは、相当な実力者なんでしょう」


周りにいた他の探索者たちも、俺の方を見始めた。


「あの方が個人的に連れてきた人?」


「あの方が目をかけるなんて、ただ者じゃないな」


「どんな能力を持ってるんだろう?」


期待の視線が集まる。俺の心臓は激しく鼓動し始めた。


(みんな、俺に期待してる……)


まさかそれがこんな形で注目を集めることになるとは思わなかった。


「そこの君、彼の相手をしてやってくれないか?」


桐生さんの声で、模擬戦闘がセッティングされた。俺は自作の剣を手に、探索者と対峙することになった。


「副社長……?」


「桐生副社長のお眼鏡にかなった実力、見せてもらおうじゃないか」


桐生さんが自分の対戦相手に選んだ探索者は正直あまり強そうではなかった。


体格は特筆して大きくもなく小さくもなく、武器や防具もシンプルだった。


「では、鈴鳥さん」


「あ、はい!」


俺は自作の剣を構えた。周囲の視線が重い。みんなが俺の実力を測ろうとしているのが分かる。


桐生さんが手を上げる。


「それでは——始め!」


俺は意気込んで前に出た。でも、最初の一撃を振り下ろした瞬間——



カキィン!



自作の剣が真っ二つに折れた。


「え?」


相手の探索者も驚いている。俺の手には柄の部分だけが残り、刃は床に転がっていた。


「あー……武器の強度不足ですね」


訓練官が苦笑いを浮かべながら近づいてくる。


「大丈夫ですか?こちらの訓練用武器を使ってみますか?」


周囲からため息が聞こえた。


「なんだ、武器が壊れただけか」


「期待したのに……」


俺は顔が真っ赤になった。でも、まだ他にも武器がある。


「す、すみません。他の武器を」


俺はリュックから自作の鎧を取り出した。防御に特化したデザインで、今度こそうまくいくはずだった。

鎧を装備し、相手の攻撃を受け止めようとした瞬間——



バキバキバキ!



鎧がまるで紙細工のように砕け散った。相手は手加減して軽く叩いただけだったのに。


「うわ……」


「これもダメじゃん」


「何なんだよ、これ」


見学者たちの視線が冷たくなっていく。俺は慌てて防御用の指輪を取り出した。



「これは魔法の指輪で——」



指輪から防御魔法を発動させようとしたが、何も起こらない。魔力の反応すらない。


「……動かないんですけど」


相手の探索者が困惑している。


その時、別の探索者が俺の装備品を手に取って調べ始めた。


「これ、全部見た目だけじゃん」


「魔法の反応がまったくない」


「材質も最悪。こんなので戦闘なんて無理」


「おい、これ本当に能力で作ったのか?」


俺は震え声で答えた。


「は、はい……俺が描いて、リアライズで……」


その瞬間、場の空気が完全に変わった。


「リアライズでこんなゴミしか作れないの?」


「これが桐生副社長の言ってた『特別な技術』?」


「時間の無駄だった」


「こんなおもちゃで俺たちを馬鹿にしてるのか?」


見学していた他の探索者たちからも、容赦ない言葉が飛んできた。


「マジで時間の無駄だった」

「俺たち、何のためにここに来たんだ?」

「新人の俺でも、こんなの作らないぞ」


年下と思われる探索者からそう言われた時、俺の胸に屈辱が突き刺さった。30歳にもなって、20代前半の若者にまで見下されている。


「桐生副社長、今度からはもう少し人選を慎重に……」


「ええ、申し訳ありませんでした」


桐生さんが周囲に謝罪している姿を見て、俺は自分がどれほどの恥をかかせたのかを理解した。


一つ一つの言葉が、俺の心に突き刺さった。


その時、桐生さんが俺の前に立った。でも、その表情は今まで見たことがないほど冷たかった。




「これが現実ですよ、鈴鳥さん」




桐生さんの声には、失望が滲んでいた。


「私のアイテム活用が間違った判断をしたのは初めてですよ。顔に泥を塗られたのもね」


俺の心臓が凍りついた。


「回収したアイテム、全て検証させてもらいました。ギルドの武器職人や武器生成能力を持つ専門家たちにも見てもらった結果……」


桐生さんは一呼吸置いてから、冷たく言い放った。



「全て、ガラクタ同然。実戦では何の役にも立たない。あなたの賢者の指輪と転移ブレスレット以外は、すべて無価値です」



俺の世界が崩れ落ちた。


「あなたには心底ガッカリしたよ」


桐生さんのその言葉で、俺の中の何かが完全に砕け散った。


創作への情熱、未来への希望、人への信頼——全てが一瞬で灰になった。


俺は何も言えずに、その場に立ち尽くしていた。


周囲の探索者たちの視線が痛い。軽蔑と失笑の混じった目で俺を見ている。


「帰ります」


俺はそれだけ言って、訓練場から逃げ出した。


桐生さんが何か言ったかもしれないが、もう聞こえなかった。エレベーターに飛び乗り、一刻も早くこの場所から離れたかった。






家に帰る途中、俺の頭の中は混乱していた。


(なんで俺は……なんで俺はこんなに無力なんだ)


桐生さんの言葉が頭の中で響き続ける。


『あなたには心底ガッカリしたよ』


俺のことを特別視してくれていた唯一の人にも、見捨てられた。


(もう誰も信用できない)


あの探索者たちの冷たい視線。失笑。軽蔑。


人の優しさなんて、結局は相手にメリットがあるときだけ。桐生さんだって、俺に価値があると思ったから親切にしてくれただけ。


価値がないと分かった途端に、あんな冷たい態度。


(所詮、人間なんてそんなものか)


電車の中で、俺は車窓に映る自分の顔を見つめていた。

30歳、独身、交際経験なし。

今日で無職予備軍。そして何の才能もない。


(佐藤さんや山田さんも、きっと俺を見下してるんだろうな)


あの時の優しい笑顔も、今思えば憐れみの表情だったのかもしれない。


「30歳のおじさんが創作ごっこなんて、痛々しいですよね」


そんな声が聞こえてくるような気がした。


俺は創作なんてするべきじゃなかった。コレクションだけしていれば、こんな屈辱を味わうこともなかった。


家に着いた時、俺の心は完全に閉ざされていた。

もう誰も信用しない。

優しさなんて全部嘘だ。

そう思った瞬間、突然の爆音が響いた。


外が騒がしい。窓から外を見ると、街の向こうで巨大な爆発が起きていた。

そして空には、見慣れない青い裂け目があった。


「ダンジョンブレイク……?」


テレビをつけると、緊急ニュースが流れていた。


『緊急速報です。本日午後11時頃、住宅街に隠れて存在していたダンジョンでブレイク現象が発生しました』

ダンジョンブレイク。ダンジョン内のモンスターが現実世界に溢れ出す、最悪の災害。

『現在、肉食タイプのモンスターが市街地に出現しており、住民の皆様は至急避難してください』


俺の住む地域も、避難指示が出されていた。


スマホに緊急速報の警告音が連続で鳴り響く。画面には「レベル4災害発生」「即座に避難せよ」の文字が点滅していた。


外では救急車のサイレンが何台も通り過ぎていく。ヘリコプターの音も聞こえる。政府の災害対策本部が設置されたというニュースも流れていた。


(こんな時に、俺みたいな無力な人間が何をできるっていうんだ)


でも、それでも。


慌てて外に出ると、近所の人たちが右往左往していた。


「逃げろ!」


「モンスターが来る!」


その時、俺は見てしまった。


向こうの角から現れた巨大な肉食モンスター。

鋭い牙と爪を持つ、狼のような化け物。そして、その前で逃げ遅れた母娘。

母親は子供を庇うように抱きしめていたが、二人とも恐怖で動けずにいた。


俺は反射的に走り出していた。


その瞬間、俺の頭の中で桐生さんの言葉がよみがえった。



『これが現実です』



『心底ガッカリした』



(そうだ、俺は無力だ。でも——)



母親が娘を庇う姿が、妹の千秋と重なって見えた。

もし千秋があんな状況にいたら、俺は何もしないでいられるだろうか。



「こっちです!」



(今度こそ……今度こそ俺が!守る!)



母娘を自分の家に案内し、二階の武器コレクションの部屋に避難させる。


そして俺は、今まで避けてきてスマホに事前にリーディングリストに登録してあった神話級やレジェンドクラスの装備品の中から『女神アテナの黄金の羽』という設置型のマジックアイテムをリアライズして装備固有の能力を発動させた。


部屋全体に神々しい金色の羽が周りに降り注ぎ、部屋が明るくなって消えた。


動作確認のために自分の腕に包丁を――めちゃくちゃ怖かったけど――突き立てたら包丁が砕け散った。


痛みはなく、傷一つついていない。これなら絶対に大丈夫だ。


(すごい……これが神の力……これなら、俺にも、人を守れる!)


桐生さんに否定された俺のリアライズでも、これなら必ず母娘を守れる。


これで桐生さんを……いや、桐生を見返してやる……今度こそ。


『女神アテナの黄金の羽』——神の名を冠する神聖な力が宿った黄金の羽は物理・魔法攻撃から守り、邪悪な存在を退ける。


「これで大丈夫です。しばらくここにいてください」


母娘は異常な行動によって証明された安心に、安堵の表情を浮かべた。


「ありがとうございます……」


小さな女の子が俺を見上げて言った。


「お兄ちゃん、すごいね。魔法使いさんなの?」


その純粋な瞳に、俺の心が少しだけ温かくなった。


(だが、討伐隊が編成されて探索者が助けに来るまでに籠城するしかない)


(それに、リアライズは明日までもう使えない)


「食料を取ってきます。動かないで待っていてください」


でも、問題があった。食料と水が足りない。

この部屋にあるのは、俺が普段食べている菓子パンとペットボトルの水が数本だけ。

母娘、特に小さな女の子が何日も持つとは思えない。


(車に積んである非常食を取ってこなければ)


外は危険だ。でも、このままでは最悪の場合は餓死してしまう。


(大丈夫、あのアイテムで部屋全体を守ってくれる。少しの間ならきっと大丈夫だ)


ドアを恐る恐る開けて、外を見渡す。


モンスターは見えず、家の外でカッターを使って効果の確認をしたが正常に動いていた。


駐車場に止まってある自身の車のトランクに非常時の水や食料品を運び込もうとした。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


あの母親の声だ、金切り声で何か異常事態が発生したと瞬時に判断して『アテナの聖域』の効果を部屋に向かって走りながらカッターで逐次確認しつつ到着した。


たった数分。


たった数分間だったのに。


俺が家に戻った時、二階の部屋は血の海になっていた。


母娘は……見るからに致命傷だ、生存は絶望的な血の量に自分の血が流れているのではと錯覚するくらいに血の気が引いた。


小さな女の子の手が、俺の方に向かって伸びていた。


壁には爪痕が無数に刻まれ、タンス、ひしゃげた椅子、血に染まって散らばっている母娘のパーツ。


ガラスの破片を踏んだ足を見てると、確実にアテナの聖域は確かに発動していた。でも、それでも守れなかった。


なぜ?なぜ守れなかった?


まるで助けを求めるように。彼女たちの亡骸に近寄る、もう二度と動くことはないと分かっていても。


「あ……あ……」


声にならない声が漏れた。


俺の脳裏に、さっきまでの出来事が鮮明によみがえる。


『これで大丈夫です』


俺はそう言った。自信満々に。根拠もないのに。


(なんで……なんで俺は家を出たんだ)


(なんで俺は、彼女たちを一人にしたんだ)


怒りが込み上げてきた。自分の愚かな判断への怒り。根拠のない自信で人の命を預かった自分への怒り。

そして何より、その愚かさで母娘を死なせてしまった自分への怒り。


俺は拳で床を殴った。血が出るまで何度も何度も殴り続けた。


だが、血は出ない。

痛くもない。

代わりにそれが、自分の心を殴っているかのように、心が、痛くなる。


「馬鹿野郎……!馬鹿野郎……!」


自分に向かって叫ぶ。


「なんで俺は……なんで俺は……!」


桐生さんの言葉がよみがえる。


『これが現実です』


『ガラクタ同然』


『心底ガッカリした』


俺の能力は所詮、本当に大切な時に、本当に力が必要な時に、誰かの役に立ちたい時に、何の役にも立たない。


「俺のせいだ……俺のせいで……」


その時、脳裏に妹の千秋の言葉がよみがえった。


『お兄ちゃんがいなかったら、私は絵なんて描かなかった!』


『嘘つき!』


そして今度は、血まみれになった女の子が俺の方を振り返る幻覚が見えた。


「嘘つき……」


「守ってくれるって言ったのに……」


母親の声も聞こえる。


「あなたを信じたのに……」


「どうして嘘をついたの……」


俺は頭を抱えて叫んだ。


「やめてくれ……!!やめろぉ!来るなぁ……くるなぁぁぁぁぁ!!!」


でも幻覚は止まらない。女の子が立ち上がり、血を流しながら俺に近づいてくる。


身体は金縛りにあったかのように動かない。

呼吸のやり方を忘れ、息が詰まる。


だんだんと意識が朦朧としてくる。


「なんで守ってくれなかったの?」


「なんで一人にしたの?」


千秋の声と重なり合う。


『お兄ちゃんはいつも嘘つき』


『私のために諦めたって言うけど、本当は逃げただけでしょ?』


『今度も逃げたんでしょ?』


「違、うん、だ…………お……れ…………は………………」


桐生さんに見放され、人への信頼を失い、そして今度は人の命まで失った。


俺の中で何かが完全に砕け散った。それは音を立てて崩れ落ち、二度と元には戻らないものだった。


創作への情熱、人への信頼、自分への信頼——全てが一度に失われた。


息も満足にできない。

自身の生命の危機に正常な判断が出来ず、現実と幻覚の境界が曖昧になっていく。




夢を見ていた。




母娘の血が、俺の手にも付いて。洗っても洗っても落ちない血。

完全に壊れた俺を客観視する俺。

止まらない女の子の声。


「嘘つき……嘘つき……」


夢の中の俺はその場で膝を抱え、子供のように泣き続けた。

外ではまだモンスターの咆哮が響いている。

でも俺には、もう何もする力が残っていなかった。


人を信じることも、自分を信じることも、もうできなかった。


優しさなんて全部嘘だ。


相手にメリットがなければ、誰も俺なんて見向きもしない。


そして俺は、何も守れない無力な存在だ。


そう思いながら、俺は暗闇の中で一人、絶望に支配されていた。


神々しくも残酷な天使の羽が、ただ、自分の周りだけにあった。

読んでくださりありがとうございます!

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