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第4話「二度目のスケッチ」

半日でPV41……嬉しい……うぅ……泣けるよ(´;ω;`)

皆様!本当にありがとうございます!!

翌日、コンビニのバイトに向かったが、昨夜遅くまで動画を見ていたせいで眠気が抜けず、出勤時間ギリギリになってしまった。


店長からは「大丈夫か?体調悪いのか?」と心配されたが、ダンジョンの仕事を止めろとは言われなかった。むしろ「若いうちに色々挑戦するのはいいことだ」と背中を押してくれる。


いつもの品出し、レジでの会計、揚げ物の調理。変わらないルーティンの中で、俺は昨夜とは違う自分に気づいた。


休憩時間に気づいたのは、俺の目が無意識に様々なデザインを追っていることだった。


(気持ち一つで、いつもの景色がこんなに違って見えるのか)


エナジードリンクのパッケージ、客が持つスマホケース、雑誌の表紙、お菓子のパッケージデザイン……。これまで何気なく見ていたものが、全て「誰かがデザインしたもの」として目に映る。


(こんなに身の回りにデザインがあふれてるなんて、今まで気づかなかった)


「お母さん、これあった!」


休憩室からも聞こえてきた明るい声に、俺は思わず振り返った。


母娘が期間限定で販売している可愛い動物のキーホルダーを手に取って、子供が嬉しそうにはしゃいでいる。小さな手で大切そうに握りしめる姿を見て、山田さんの言葉がフラッシュバックした。


「一番嬉しいのは、自分の作ったものを誰かが喜んで使ってくれること」


クリエイターってのは、やっぱりいいな。胸の奥が温かくなる。


そう思ったのも束の間だった。


「そんなのよりこっちの方が可愛いじゃない」


母親がそう言いながら、別のキーホルダーを子供に手渡した。子供の表情はここからじゃあ見えなかったが、結局母親の言葉に従ってそのまま会計に向かって行くのが見えた。


休憩時間の終了後に子供が最初に選んだキーホルダーを見てみた、それは戻されていた。


俺の胸に、何とも言えない複雑な感情が湧き上がった。作り手の想いなんて、現実にはこんなものなのかもしれない。


妹は……それを知っていたんだろうな。だからこそ、俺の選択を拒んだのかもしれない。


---


仕事が終わると、俺は100円ショップに立ち寄った。


あんな出来事はあったが、人の好みは千差万別だとも思い前向きに考えることにした。


スマホのお絵描きアプリも悪くないが、やはり紙とペンで描いてみたい。適当にスケッチブック、シャーペン、消しゴムを選んで購入した。


家に戻ると、いつものように誰もいない静寂が出迎えてくれる。リアライズで生み出した武器たちが壁に整然と並び、夕日に照らされて鈍く光っていた。


武器コレクションの部屋で、俺は新しく買ったスケッチブックを開く。


YouTubeで見た「初心者向け線画講座」を思い出しながら、恐る恐るシャーペンを走らせる。最初は真っ直ぐな線すら引けない。手が震えているのが分かる。


「俺、昔はもう少し描けたはずなのに……」


何度も描いては消し、描いては消し。気に入らない絵はくしゃくしゃに丸めてゴミ箱へ。そんなことを繰り返しているうちに、ふと疑問が湧いてきた。


これが俺のやりたいことだったんだろうか?

そもそも俺がやりたいことって何だ?

ゴールは?目標は?


ただ漠然と、佐藤さんや山田さんの話や生き方を見て「やりたい」と思うようになっただけじゃないか。コンビニで見たあの母娘のように、気持ちを込めた作品だって、現実には軽く扱われることの方が多いのかもしれない。


でも……でも、今の気持ちを大切にしたい。


—やめときなよ。

—千秋が頑張ってるのに、お前が今更創作なんて。


聞き覚えのある声が聞こえる。


でも……あの、佐藤さんの笑顔。山田さんの……あぁ……あれは満足していた顔か。

そして俺のやりたいことは、きっと【笑って自分の人生は満足】だったって胸を張って言いたいことだ。


(よし、まずはシンプルな直剣から始めよう)


佐藤さんの魔法剣士用武器のことを思い出しながら、でもいきなり複雑なものは無理だと判断し、基本的な直剣のデザインから挑戦することにした。


刃の長さ、柄の太さ、鍔の形……。ゲームで見慣れた要素を一つ一つ思い出しながら、自分なりにアレンジを加えていく。


イメージを膨らませるために重さ、感触、切れ味など想像しながら書いていた。

気がつくと、もう深夜を回っていた。時計を見ると1時半。描き始めてから3時間以上が経過している。

紙には下手くそながら、確実に「剣らしきもの」が描かれていた。


「俺が……俺が描いたんだ」


客観的に見ると、バランスも悪いし、線もよれよれだ。とても人に見せられたものじゃない。でも、なぜか心臓がドキドキしている。


これまで俺は「手に入れる」ことばかりだった。ゲームアイテムをリアライズして、コレクションして、眺めて、それで満足していた。


でも今、初めて「作り出した」ものがここにある。


下手くそで、バランスも悪くて、とても人に見せられたものじゃない。でも、これは確実に俺のオリジナルだった。


「これを……リアライズしてみたらどうなるだろう?」


恐る恐る描かれた紙に向かって能力を発動する。いつものように光が収まると、そこには確かに剣があった。


でも、これまでリアライズしてきたどの武器とも違った。完璧じゃない。バランスも悪い。でも、これは間違いなく「俺の剣」だった。


一番驚いたのは大きさだった。

護衛隊が腰に下げていた剣と同じくらいの大きさだ。


手に取ると、重さも感触も現実のもの。不思議なことに、ゲームから取り出した武器とは違う「手馴染み」があった。自分で考えたデザインだから、握り方も振り方も自然にイメージできる。


(この感覚……これが「作る」ということなのか)


既存の武器コレクションを見回す。これらの武器一つ一つにも、きっと山田さんのような作り手がいたのだろう。最初はこんな気持ちで、愛情を込めて作ったのかもしれない。


(使ってみたい……これを使って、もっと色んなダンジョンに行って、アイデアをもっともっと膨らませたい)


創作への新しい可能性に胸が高鳴る。明日からまた描こう。今度はもう少し複雑なデザインに挑戦してみよう。またダンジョンで行って佐藤さんや山田さんに話したい。


そんな高揚感に包まれながら、気分転換にテレビをつけた。


「速報です。本日午後、都内のBランクダンジョンで大規模な事故が発生しました」


アナウンサーの深刻な表情が画面に映る。


「探索者約200名のうち、生存者はわずか15名。行方不明者は185名に上ります」


映像が切り替わり、血まみれで救出された探索者のインタビューが流れる。


「化け物が……見たこともない化け物がいたんです。護衛隊も一瞬で……」


探索者の震え声が、俺の高揚感を一瞬で氷点下まで冷やした。


(俺は……俺はこれに、命を賭けられるのか?)


手に持った自作の剣が、急に重く感じられた。これは所詮、安全な部屋で作った「おもちゃ」に過ぎない。本当の戦いで、本当に誰かを守れるのか。賢者の指輪の方が頼もしく見える。ここにある武器たちの方が俺が書いた剣よりも強く見える。


「作りたい」という気持ちは確かにある。でも、それがどれほどの覚悟を要求するものなのか、俺はまだ何も分かっていないことに気付いた。


何かを達成するのには、何かリスクを背負わないとダメなのか。


佐藤さんや山田さんは、こんな現実を知った上で、それでも創作を続けているのだろうか?


テレビの向こうで、行方不明者の家族が泣いている映像が流れている。

俺は自作の剣を置いて、深く息を吐いた。

創作への第一歩は踏み出せた。でも、それがどこに向かう道なのか、俺にはまだ見えていない。


明日もダンジョンに行く予定が入っていた。今度は、最初よりもずっと不安になっていた。

例えるならば、ジャングルにある底が見えないほど濁った大きな湖の中心に飛び込む感じだ。

最後まで読んでくださりありがとうございます!!(*‘∀‘)

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