第33話
「……レイラがいない」
俺は少し焦りを含んだ声色で言った。
ティアラ嬢に捕まえられるようボロを出してみます。――その提案をされたとき、女の子だから心配だと言ったらレイラに私の心配なんてしないで国の心配をしてくださいませ!と怒られた。
本当は女の子だから、ではなくレイラが危険になるのが嫌だっただけなのだが。
単純だとは思うが、レイラと数カ月間時間を一緒にしているうちに彼女の話す内容や聡明さに心を奪われた。初めて会ったときはただ綺麗だな人と思っただけだったのだが。
SOSは出されていないため、レイラの提案の通りに進んでいるのだろうが、心配の念は消えない。
「あっ!ルシウス様ぁ。お元気ですかぁ?」
そんな空気は読まずにティアラ嬢はいつものように俺に話しかけてきた。
ティアラ嬢に、レイラをどこに連れて行ったのか問い詰めたいところだったが、その気持ちをなんとか落ち着かせて、
「ああ、ティアラ嬢」
といつものように返事を返す。
「もしかして、ルシウス様レイラセンパイを探していますか?」
俺の考えを読んできたかのようにティアラ嬢は言う。
「……そんなことは――」
「ああ、大丈夫ですよ隠さなくって。知ってるんれ」
「……だろうな」
その言葉を聞いてティアラ嬢はふふふっと笑った。
「まぁ、レイラがなぜ効かないか洩らせばすぐに解放しますよ。まぁ、その時には私の魔法は完璧になっているでしょうが」
そして俺の胸元を触り猫なで声で――
「卒業パーティーまでにはあなたもオトして差し上げるわ」
思わず胸元に置かれた手をバシッと叩いた。
すると、
「……次はないですからね」
と射殺さんばかりの目を取り巻きたちと共にこちらへ向けてきたティアラ嬢から逃げるようにその場を去った。




