第1話 現実逃避
ふかふかのお姫様ベッドですやすやと黒髪の少女が寝息をたてている。
それをボン・キュッ・ボンの赤髪のメイドが優しく頭を撫でながら少女が目覚めるのを待っていた。
「魔王様早くお目覚め下さい。アメリアは早く魔王様の可愛らしいお声を聞いて、魔王様を堪能させていただきたいのです。」
口調こそ優しげではあるが顔を赤らめ呼吸はハァハァと荒かった。
「うーん」
何かを感じとったのか黒髪の少女は嫌そうに顔を歪めながら意識を覚醒させていた。
パチリと目を開けると周りをキョロキョロ見回してから赤髪のメイドを見つけるとじーっと見つめた。
「あなた誰?」
赤髪のメイドは少女から声をかけられると顔を赤らめつつ自己紹介をはじめた。
「お初にお目にかかります。私魔王様のメイドを仰せつかりましたアメリアと申します。侵入者を蹴散らして魔王様が真の魔王様へなれるようにアメリアがお導きいたします。」
赤らめた顔から真顔でキリッと自己紹介が終わったが、黒髪の少女はふーっとため息をついてもう一度眠った。
「魔王様そろそろご準備されませんとさすがにあぶないのでは?」
危ないって何?
不穏な言葉が聞こえ思わず少女は体を起こした。
「危ないってなんで?」
疑心暗鬼という嫌そうな表情を隠さずに少女はアメリアに問いかけるがアメリアは嬉しそうな表情のまま語り始めた。
「現状について簡単にご説明いたしますと。魔王様が自身の後継者をお探しになるため、候補者を異世界から召喚されました。そのうちの一人が貴方様なのです。真の魔王になるためには魔王様から与えられたこのダンジョンを改造し、侵入者を始末し、魔王様が成長していただくのが目的でございます。」
少女は自分の頬をつねりながら、夢じゃない事に気づき諦めたようにため息をついた。
「具体的には何したらいいの?」
少女は鈴のような可愛らしい声で問いかける。
アメリアはニコニコと笑みを浮かべ、会話を続けた。
「まず魔王様にはダンジョンに自身のスキルを使っていただいたり、罠や魔族を設置していただきます。1度侵入者が入って来て、侵入者が出ていくか、死ぬかすれば大丈夫です。始末した侵入者から金品強奪して次の侵入者を始末するためにダンジョンをより強化していけば問題ないかと」
少女はそれを聞くなりふむふむと思考を回転させる。異世界ならゲームのようにステータスとか出せるのか?とりあえず心の中でステータスと唱えてみる。ビュンっと音と共に水色のがメンバーが目の前に表示された。
少女はアメリアに視線を向けたが、アメリアは首を傾げて不思議そうな表情を浮かべていた。
おそらく自分以外には見えないものなのだろうと納得し、ステータスバーを眺める。
Lv1 名前 月夜見 刹那 性別 女 スキル 年齢21 罠設置、状態異常付与、ステルス。
ステータスの能力欄を見て少女は絶望した。
これだけで侵入者倒すの不可能じゃない?刹那は意識を保つのが精一杯だった。