公爵令嬢ですが、婚約者ではない男性と音楽室に閉じ込められました!
アランフリードは、公爵家当主になってからピアノを一度も弾いていない。
それは領地の端から端まで走り回って、どこか崖が崩れて道が通れない所は無いか?
畑の農産物の出来はどうか?といつも忙しく見廻っているからだった。
でも、アランフリードは、愛する妻や子供。それに領民の為に働く事に、まったく不満を感じていなかった。
そんなある日、オランドールから歌劇団の舞台監督と関係者が公爵邸を訪れた。
あの音楽室に閉じ込められた一件からシアルーンが奇跡の生還を見せるまでを歌劇にした舞台は、各国で上演され、大喝采を浴びている歌劇である。
そういえば、オランドールを去る時に書類にサインしたな。
「お久しぶりです。バーキング公爵閣下。
契約書通りに歌劇の契約料をお持ちしました」
書類に書いてあった金額は途方もない金額に上っていた。
「こんなに契約料をいただけるんですか?何かの間違いでは?」
「いえ、近隣国を回っただけなのでこの金額ですが、来年はリンドル王国をはじめとした遠方からも来てくれと言われておりますので、次も同額以上お支払いできると思っております」
「おお、リンドルも来られるのですね。ではこのスィーンにも来ていただけないでしょうか?
このお金で新しくホールを建てたいと思います。
そのこけら落し公演に来ていただければと」
「それは良いですな。ぜひお願いします」
こうして、音楽ホールの建設が始まった。
オランドールから専門家を招いて音響や照明に配慮した設計をして作られたホールは、リンドル王国でも随一の音楽ホールに出来上がったのだ。
そして、先年王太子になった兄一家など王族や、貴族を大勢招待し、ホールはこけら落とし公演の日を迎えた。
兄のヒヨルド王太子は45才。第一王子は26才である。自分と大して歳が変わらない甥だった。
舞台が始まると観客は、シアルーンと音楽室に閉じ込められられた事に怒り、魔術具で脱出した所で拍手喝采した。
そして、シアルーンが斬りつけられた場面で号泣し、アランフリードの歌で生き返った場面でまた号泣したのだった。
「君たち夫婦は、本当にすごい体験をしたんだね。
話には聞いていたけど、今日の劇を見て改めて感心したよ」
歌劇は脚色され、アランフリードの名前もシアルーンの名前も変更されている。
でも語られる内容は、ほとんど変更されずに使われていた。
「兄上、お願いがあります。このスィーンに音楽学校を作らせていただけませんか?
あのオランドールに負けないような音楽の都をこの国にも作りたいのです」
王太子はしばらく考えていたが、すぐ了承した。
「君の音楽に対する熱意をこの劇を見て痛感した」
というのが返事だった。
2週間に渡って開催された歌劇は、大好評のうち千秋楽を迎えた。
その日は、アランフリードは子供達を連れて公演を観に行った。
「いいですか、ラグナス坊っちゃま。観客席で大きな声を出してはいけませんよ。
出して良いのは笑い声と涙だけです」
侍女のアンナの言葉にラグナスは「はい!」と返事をする。
家族は楽しそうに笑って泣いて、歌劇を楽しんだのだった。
バーキングの人達は知っている。
痩せ細った農地を耕し、大家族で貧しい生活をしている農民の家に、朝早く小さな男の子と姉らしい少女が乗った馬車が肥料を置いているのを。
バーキングの人達は知っている。
怪我をして動けなくなっていた老人を、一瞬で家に送り届けた少年を。
バーキングの人達は知っている。
今観ている歌劇の続きを…
バーキングの人達は知っている。
自分達が公爵一家に守られているのを。
だからバーキングの人達は思うのだ。
奇跡のスキルを狙う悪人達から、この家族を守らなければならないと。
それが公爵一家への愛の形なのだと…
これでこの物語は完結です。
最後まで書けた〜っ!!
迷子にならずにゴールに行けた〜っ!!
紫対決をしている友達にも大いに誇りたいと思います!
最後まで読んで下さった皆様、どうもありがとうございました!




