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侍女アンナの結婚

  僕とシアルーンが結婚して10年が過ぎた。

 僕達は3人の子供に恵まれた。

 8才の長男トーマス、7才の長女アンタルシア、

 3才の次男ラグナスである。


 「父上、母上、今日はご結婚10周年おめでとうございます!」


「10周年おめでとうございま〜す!」


 朝食をとる食堂に、3人の子供達が入って来た。


 「本当に10年なんてあっという間でしたね?」


 僕の愛するシアルーンは今日も世界一美しい。


「そうだな、あっという間だった」


 10年前、結婚した私達は、公爵位を賜った。

バーキング伯爵領に隣の王領を加えたバーキング公爵領は、広大な領地になった。

 そこで領地の中で街道が交差して、水源が多くほぼ平地であるスィーンと言う街を新しく領都にして、そこに領主の屋敷を建てたのだ。


 幸せな私達だが、今の悩みと言えば子供達のスキルの事だろう。

長男のトーマスのスキルは、なんと、三大奇跡スキルの一つ〈移動の極意〉だったのだ。

 いや、生まれた時は私と同じでスキルを持っていなかった。

 それがある事件でスキルを得たのだった。




 それは去年の事…



 「トーマスお坊ちゃま、平民の子供の中では、あらゆる勝負で序列が決まります。

 その中でも木登りで一番高い木に登った男の子は

仲間の中でも男の中の男と呼ばれて尊敬されるのです」


 母上の侍女であるアンナの話は面白い。

平民で下町出身の彼女は、平民の生活をよく知っているから僕に面白い話をいろいろ教えてくれるのだ。

 母上の部屋に遊びに行った僕は、今日もアンナの話を聞いていた。


 「それで教会の鐘楼とか高い所に登ったらヤッホーって叫ぶのよね?」


 母上もアンナの話が大好きなので、すぐに話に入って来た。


 「そうなんです。高い所から周りを見渡す爽快感。

 思わず、ヤッホーって言いたくなるのですよ」


 そうか、木に登ってヤッホーって言うのか。


 トーマスは、母シアルーンと違って記憶力がちょっと残念な子だった。



 その日の午後、トーマスは公爵邸の庭で一番高い木の前に来ていた。

 元は丘だった所を切り拓いて建てた公爵邸であり。

 庭の周りを囲む木は10メートルをはるかに超える大木ばかりだった。

 

 「この木が一番高いかな?」


トーマスはスルスルと木を登って行った。

 

 「木登りの途中で絶対に下を見てはいけません」


 トーマスは、アンナの教えを守り、上だけを目指した。


 だいたい、アンナが育った下町にそんな高い木は無い。

 男の子達が登った木も街中の公園にあるような低い木である。

 トーマスが登っている10メートルを超すような大木では断じて無いのだ。

 しかもトーマスは公爵家の嫡男である。

 子供の序列争いなんて関係ないのになぜ登るのか?

 子供のやる事は、本当にわけがわからない。


 そして、木のてっぺんに着いたトーマスは叫んだ。


 「ヤッホー!ヤッホー!ヤッホー!」


 小高い丘の上に建つ公爵邸。その高さから更に高い木からの眺めは素晴らしかった。

 トーマスはしばしの間、その景色を見惚れていたのだった。


 その時、アンナは庭でシアルーンの部屋に飾る花を探していた。

 そこで「ヤッホー!」という声が聞こえてきたのだ。

 いったい誰が?と思って声がした方に向かった。


 同じ頃、アランフリードの護衛騎士であるダウマンは、昼から剣の稽古の相手を頼まれていてトーマスを探していた。

 

 アンナとダウマンが「ヤッホー!」の声がする木の下に着いて、声の主がトーマスだと気がついたその時、そろそろ降りようと下を向いたトーマスは手を滑らせて落ちた。真っ逆さまに…


「きゃーー!!坊っちゃま!!!!」


 2人がトーマスの大怪我を確信したその時奇跡が起きた。

 〈移動の極意〉のスキルが生えたのだ。

 トーマスは、アンナの横に瞬間的に移動した。

〈移動の極意〉は瞬間移動のスキルだったのだ。


 「君たち今の見たね?」


 いつの間にかアンナとダウマンの後ろにアランフリードがいた。

 三大奇跡スキルは厄介である。

 持っている者は少なく、良からぬ考えの者に知られれば災難がやって来る。


 「そういえば、君たち独身だよね?恋人もいないよね?」


 「はい、公爵様、おりません」


 2人揃って答えた。


 「そうか、そうか、実は君たちが結婚して家族で

公爵家に仕えてくれないかなぁと思っていたんだよ。 

 近くに良い土地があってね。屋敷も用意してあげようと思っていたんだ」


 やっ…殺られる!この笑顔はやばいやつだ…


 殺気を感じた2人がコクコクと頷いたのは言うまでもない。


 そして39才のダウマンと34才のアンナは、めでたく結婚したのであった。


 ちなみに次男ラグナスが持っているスキルは、

ベルナール元王太子と同じ〈緑の宝〉である。

 これもアンナがラグナスに「馬の糞を素手で○○すると金色の蝿が寄って来る」と教えた事による。


 金色の蝿ってどんなのかな?という3才児の興味は、止まる事を知らない。

 ラグナスは、すぐに厩に行って馬糞を素手で○○してスキルを得たのであった。


 ラグナスが〈緑の宝〉を得た事で、元王太子がどうやってあのスキルを得たのか全部バレた瞬間だった。


 奇跡の三大スキルを得るのは非常に難しい。

 その理由は、貴族が生まれつき持つスキルを持たずに生まれなければならない事。

 そして、普通の貴族が絶対にやらない事に手を出した事に他ならない。

 奇跡の三大スキル取得に、深く関わったアンナという女性は、大変得難い人物なのかもしれない。





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