〈愛の形〉
流血場面がありますので、気分が悪くなる恐れがある方は、閲覧をおやめください。
シアルーンが斬られた!
彼女の華奢な身体から、すごい量の血が流れて行く!
血を…血を止めなくては!
「シアルーーーン!!!」
コマ送りのようにシアルーンが、その場に崩れ落ちた。
僕は、転がるように舞台から飛び降り、シアルーンの元へ駆け寄った。
真っ白な顔をしたシアルーンの身体からは、おびただしい量の血がどくどくと出ていて床を濡らしている。
僕は、シアルーンの身体を広い所に横たえ、ありったけの魔力を叩きつけた。
「うっ…」
苦痛の声を漏らしたシアルーンに、僕は慌てて魔力を止めた。
そうだ、演奏を!何か曲を演奏しなければ!
何の曲を?
音楽室で、好きな曲だと楽譜を抱える彼女の姿が思い浮かんだ。
あの楽譜は…そうだ、〈愛の形〉!
あの時楽譜を見たじゃないか!
思い出せ!!どんな曲だった?!
僕の頭の中で曲と歌詞が目まぐるしく周っていく。
そして歌い出した曲にゆっくり魔力を乗せて行った。
あのとき あなたに であった
わたしは あのとき
こいに おちた
歌に更に魔力を乗せて行く。
それは 生涯いちどの 恋
その時、会場から僕の歌に同調した女性達の歌声が聞こえて来た。
愛する人の 金の 瞳
その瞳に 見つめられ
途端に 私は とらわれびと
同調して歌う声がどんどん大きくなっていく。
もっと!もっと魔力を!もっともっと!
母上!私に力を貸してください!
あなたを守りたい
あなたを失いたくない
だから 私は 手を離す
会場中の人が歌ってくれている
いつか あなたと 会うために
それは 私の 愛の形
それが 私の 愛の形…
ゆっくりと、シアルーンの目が開いた。
「なんと奇跡だ!」 「信じられない!」
「神の御心に感謝します!」
会場中から喜びの声が沸き起こる。
そして僕の助けを受けて、立ち上がったシアルーンに会場から万雷の拍手が送られたのだった。
その後、会場にいた医師の診察を受けたシアルーンは、駆けつけたアドレイ公爵の馬車で帰って行った。
王太子は、その場で捕らえられて、王城の地下牢に送られた。
会場にいた観客も興奮が冷めやらない様子だったが、皆良い笑顔で帰途について行った。
僕は、泊まったいるホテルで歌劇団の舞台監督の訪問を受けていた。
さっきの演奏会の会場に〈愛の形〉で知られる
歌劇を取り仕切る舞台監督もいたそうだ。
舞台監督は、さっきの奇跡を見て、これを元に新しく歌劇を作りたいんだそうだ。
「あなた方の物語は、愛の奇跡だ!
この奇跡は、世界中の人に伝えなければなりません!」
と熱く語る舞台監督に、魔力を使い果たして疲れきった僕は、「考えさせてください」と態度を保留にして、部屋のベッドに倒れ込んだのだった。
今回の〈愛の形〉の歌詞を、この小説を書き始めた時からずーーーっと考えてたんですけど、これが限界でした!
この私に恋や愛の詩が作れるわけ無いんですっ!
あとはぜ〜んぶアランフリード君が頑張れば良いんだ!




