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演奏会

この回には暴力場面があります。

閲覧にはご注意ください。

 「どうだい?ダウマン。シアルーン様は見えるかい?」


 舞台袖のカーテンに隠れてアランフリードは、護衛のダウマンに30秒ごとにこの質問を繰り返していた。


 「アランフリード様、そんなに気になるなら、先ほどおられた玄関にいた方が良いのではありませんか?」


 「嫌だよ、あんな女性が多い所。香水の匂いで演奏の前に気分が悪くなるじゃないか!」


 さっきまで演奏会の会場である王立ホールの玄関で、シアルーンが到着するのを待っていたアランフリードだったが、演奏会に来た若い女性達に早速囲まれて、這々の態で逃げて来たのであった。


 「シアルーン嬢が何色のドレスを着て来るかで、

私の一生が天国になるか地獄に変わるか決まるんだよ?

 もう少し僕に優しくしてくれても良いじゃないか!」


 まったくもって傍迷惑な奴である。


「あっ、シア!」


「!!!」


「カーテンにしわがありました」


「ダウマン!!!!」


「あっ、シア!」


「もうその手はくわないよ!」


「シアルーン様がいらっしゃいましたが良いんですか?」


「!!!!!!!!!!!!」

 

 「何色だ?何色のドレスを着てらっしゃる?」


 蚊の鳴くような声になったアランフリードに、ダウマンは、自分で確認するように言って逃げた。


 アランフリードは、恐る恐るカーテンの隙間から

観客席を見ると、紫のドレスを着て椅子に座ろうとしているシアルーンの姿が見えるではないか。


 「やったー!!!!」


 舞台袖で大きな声で叫んでしまったが許して欲しい。

 僕は今なら逆立ちしてピアノを弾けるくらい何でもできる自信があるのだ!


 その日の演奏は絶好調だった。

かつてないほどやる気に満ち満ちた演奏は、観客の心を掴んで魅了した。

 アランフリードは己が持つ全ての力を出しきって演奏を終えた。

 それを讃える大歓声と観客の拍手は当分の間鳴り止む事がなかったのである。


 観客席が落ち着きを見せた頃、アランフリードは

挨拶に立った。



 「皆さん、今日は私の優勝記念演奏会に来ていただいてありがとうございました!

 今日、この場に立つ事ができて本当に嬉しいです。

 それと言うのも、コンクールの前日に私の出場を妨害する人達によって、私は王立学園の音楽室に閉じ込められたからです」


 観客席から「どういう事だ」とか「そんな事が」と驚きの声が上がる。


 「私を音楽室に閉じ込めた輩は、卑怯な事に同時にある女性も閉じ込めました。

 その女性は、男性と密室で過ごしたという無実の罪を着せられ貴族籍を剥奪されました」


 会場からは、「何て事を」「ひどすぎる」との声が沸き上がった。


 「その女性こそ、先日の王宮舞踏会で王太子殿下に無実の罪で婚約破棄された、シアルーン.アドレイ公爵令嬢その人です。

 私がここに立っていられるのは、アドレイ公爵令嬢が魔導具で私を逃がしてくださったからに他なりません」


 「待て!あの男は、バーキングとかいう留学生のはずだ。アランフリード王子とは別人だ!」


 貴賓席から王太子が叫んだ。

 そう、この演奏会には王太子も招待していたのだ。


 「私は、バーキング伯爵の称号も持っております。

 留学するにあたり、アラン.バーキングを名乗っていたのです」


「そんな話マイケル.クストーから聞いてないぞ!

私はクストーに騙されたのだ!

 クストーに聞いてくれ!私は何も知らん!」


 貴賓席から下の観客席に降りてきた王太子は、関係ないと言い張った。


 「クストー君、君の口から真実を聞かせてくれたまえ」


 護衛に連れられて、クストーが現れた。

 そして彼ははっきりと答えた。


 「僕はアラン.バーキングとシアルーンアドレイ嬢を音楽室に閉じ込める事ができたら、コンクールで優勝させてやると王太子殿下に言われて2人を閉じ込めました!」


 「黙れ!黙れ!黙れ!そんな話認めない!

 認めないぞ!!」


 会場は「シーーーン」と静まり返っていた。


 「王太子殿下、貴方は無実の罪を着せて、アドレイ公爵令嬢の貴族籍を剥奪しました。

 これは許されるものではありません。

 アドレイ公爵令嬢に謝罪と彼女の名誉の回復をお願い致します」


 王太子は下を向いていたが、席から立ち上がって行方を見守っていたシアルーンを睨むと、「おまえが…」と呟き、突然側にいた護衛が挿していた剣を奪うと、走っていきなりシアルーンに斬りつけた。




「きゃああああああぁ!!」




 会場内に悲鳴が上がった。



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