演奏会の前に
紫のドレスの後の話と、演奏会の前日の話です。
アランフリードは、シアルーンを訪ねた後アドレイ公爵家を訪れた。
応接室で向かい合う公爵に自分の素性を明かし、あの場からいなくなった事を謝罪すると、アドレイ公爵は驚いていたが、すぐに謝罪を受け入れてくれた。
そして、シアルーンが、今神殿で巫女の仕事をして元気に過ごしている事を伝えた。
更に来月の優勝者記念演奏会に招待してドレスも用意したので、当日に侍女を遣わしてドレスの着付けをして欲しいと言うと、部屋からものすごい勢いで走って出た人物がいたが、誰だったんだろう?
しかし、シアルーンに結婚を申し込んだと話すと、公爵は部屋から人払いをした。
二人だけになった部屋で公爵は尋ねてきた。
「リンドル王国では、第一王子と第三王子殿下の王位継承権が剥奪されたと聞いておりますが、何があったのでしょうか?
アランフリード様が王位継承される可能性ががあるなら、シアルーンにも関係して来ますので、ぜひお聞かせ願いたい」
「やっぱり情報がもう漏れていたか…」
アランフリードは、早くも他国に知られている事に心の中で舌打ちした。
「第一王子と第三王子が不祥事を行ったので、王位継承権が剥奪されたのは事実です。
しかし国王も王太子も健在ですから、取り立てて今問題があるわけではありません。
また、兄の第二王子もその息子もおりますので、私が王位に就く可能性は低いと思われます」
「継承権を剥奪されるほどの不祥事とは、かなりの罪だったのでしょうな?
それこそ国王と王太子の暗殺とか?」
「!」
顔色を取り繕うのが大変だったが、何とか冷静な態度を取る事ができた。
さすがは公爵家の当主だ。的を得ている。
「娘を得たいとおっしゃるなら、隠し事は無しにしてもらいたい。
他国に嫁がせるのです。
王位争いをしている危ない国に娘を嫁がせたくないと思うのは当然ではありませんか」
参った…。
この人には隠し事ができそうにないな。
アランフリードは、兄達によって国王と王太子が暗殺されようとした時に、自分の持つスキルで瀕死の状態から生き返らせた事を話した。
「なるほど、そういう訳でしたか。
リンドル国王が心配されるのはわかりますな。
貴方がお持ちの能力は、どこの国でも欲しがるでしょう。
でも、その情報は、まだ全てが正確に流れているわけではありません。
その能力を隠し通せれば、噂として終わるでしょう。
とにかく、その能力を人前で見せない事です」
「ご助言感謝致します」
「ああ、シアルーンとの結婚は、娘の意思に任せますよ。
あれが貴方と結婚したいと言うなら、私は心良く
送り出しましょう」
つ…疲れた…。
気力のほとんどが持って行かれたが、公爵の許可はもらえた。
これからは、シアルーン嬢の名誉を回復するのに
全力を尽くすぞ!
そう心に誓って、アランフリードはリンドル国に帰ったのだった。
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一か月後、アランフリードは、ピアノコンクールの優勝者として、そしてリンドル王国の王子として華々しくオランドールの空港に降り立った。
事前に情報を流していた為、コンクールの関係者や貴族達が、押すな押すなの盛況で迎えに現れた。
「ダウマン、どうして偉い人達は、揃いも揃って若い女性を伴って来るんだろう?
もう、香水の匂いで鼻が曲がりそうだよ」
アランフリードはシアルーンの隣に立てば、ちょっと残念イケメンに見えるだろうが、1人で立っていれば充分イケメンに掠っているイケメンである。
たまに女性に寄って来られる事もあるが、苦手としていた。
護衛騎士のダウマンは、「保険でしょう」と言った。
「権威あるオランドールピアノコンクールの優勝者で、しかもリンドル王国の王子です。
おまけに王位の簒奪を謎の方法で防いだという噂がある男ですから、どう転んでも良いように自分の娘を花嫁にして保険にと考えたのでしょう」
「まあね、こちらとしても、これだけ派手に入国したら、護衛騎士をいっぱい連れて来られるから、誘拐や殺される心配が無くなるからね。仕方ないか」
リンドルの国王が心配していた、アランフリードが他国の手に落ちる事態が回避できそうで、ちょっとだけ彼の気分は浮上したのであった。




