0話・プロローグ⑵★五勇と一女の受難
再び五勇の物語が始動。
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リューセイ達六人は湿原を歩いていたが……。
“汝、勇者と英雄の違いとはなんぞや”
そうリューセイの脳裏に何者かが問いかける。
(違いって……同じじゃないのか?)
どういう事かと、ひたすら考えていた。
――そして時は一週間前に遡る――
ここはランズベール村から北に約十キロ離れたドロべトグ湿原。周囲には枯れた草木が無作為に生えていた。
空を見上げると……いや生い茂った草木のせいで殆どみえず僅かに差す光を頼りに進むしかない。
しかも足下はぬかるんでいて歩きにくいのだ。それに道を間違えれば沼に落ちてしまう。
そんな場所をリューセイ、アベルディオ、クライス、ユリエス、イシス、ルルカの六人が恐々と歩いていた。
あれから一週間後リューセイ達六人はランズベール村を出てヒナセブ草原を北へ向かい進んだ。
その途中の村々に立ち寄りながら先へと向かう。
そして現在この湿原を歩いている。
「ねえ……本当に、この道でいいの?」
「ルルカ……地図を見る限りだと王都に向かうには、この道しかないらしい」
「リューセイ、その地図は間違っていないのですよね?」
不安に思いイシスは、そう問いかけた。
「地図が間違っているとも思えん」
「クライス、そうだな……この道しかないなら」
「うん! アベルディオ、進むしかないよね」
不安じゃないのかユリエスは、ニコニコしながら先頭を歩いている。
「地図だと、もうそろそろホルイラ草原に出るはず」
「リュー、あと少しだな」
「草原に出れば娯楽の町エリュスプゲル。一度、行きたいと思っていたのよね」
目を輝かせルルカは、ウットリしていた。
そんなルルカをイシスは可愛いと思い顔を赤らめている。
片やリューセイ、アベルディオ、クライス、ユリエスの四人はルルカが何か問題を起こさないかと思い顔を青くした。
そんなことや、あんなことなど色々な話をしていると……。
「「「「「「……!?」」」」」」
六人は周囲に魔物の気配を感じ身構える。
「おいおい……こんな所で魔物って」
「クライス、ああ……そうだな」
「リューセイ、逃げる選択はないな」
眼をしかめアベルディオは周囲を見渡した。
目を閉じリューセイは魔物の気配を探る。
「感じたことのない気配だ。なんか異様な妖気を放っているように感じる」
そう言いながらリューセイは徐に瞼を開いた。
「ええ……私の勘が気持ち悪い魔物だと」
「イシス、怖い訳じゃないわよね?」
「そ、そんな事あるわけ……ないじゃないですか」
ルルカに言われイシスは冷や汗を流しながらも必死で怖いのを我慢している。
「話している場合じゃないみたいだよ。僕は近距離すぎてクロスボウじゃ無理だから盾でなんとかする」
来た道の方へ向きを変えるとユリエスは盾を構え何時になく鋭い眼光で先を見据えた。
すると「ガサガサ、ピチャピチャ、ペタペタ」のような奇怪な音が聞こえてくる。
「くる!!」
そう叫ぶとクライスは大剣を持ち直し構えた。
と同時に周囲から一斉に魔物が現れリューセイ達六人へ目掛け飛び跳ねて向かいくる。
「泥スライム!?」
咄嗟に動きリューセイは剣を振り上げ向かいくる眼前の泥スライムの群れを盾でかわしながら斬っていった。
「クソッ! 初めての魔物だが厄介って聞いている」
大剣を大振りしながらクライスは向かいくる泥スライムの群れを斬っている。
「互いの間隔を、もう少し開けた方がいい」
水晶を眼前に翳してアベルディオは強化の魔法を全員に付与した。
「数が多すぎます。レパートリーの少ない私では使える魔法が限られてしまう」
杖を翳し詠唱するとイシスは泥スライムに目掛けて炎系の魔法で連続攻撃する。
「クッ、キツい! 盾じゃ無理。やっぱりクロスボウに変えよーっと」
急ぎ盾とクロスボウを取り替え向かいくる泥スライムの群れを攻撃していった。
「もうイヤァ~……気持ち悪すぎる~! こんなのどうやって倒すのよー」
半泣きしながらルルカは鞭を無作為に振って泥スライムに中て倒している。
中々の鞭さばきだ。それにしても何時から鞭使いになったのだろう。まあ、それはおいとくとしようか。
「ルルカ……闇雲に攻撃しても駄目だ。的確に泥スライムへ中てないと」
「リューセイ、そう言ったって……鞭の使い方しらないんだもん」
それを聞いた五人は攻撃しながら溜息をついた。
泥スライムの攻撃は一向にやむ気配をみせず増える一方である。
「なんで泥スライムが、こんなに居るんだよ!?」
「リュー……泥沼があるからじゃないのか?」
「……ってことは永久に現れるんじゃ」
ゾッとしリューセイの顔は青ざめた。
「逃げた方がいいかもしれない」
「うん、アベルディオの言う通りだね」
そう言いユリエスは向かいくる泥スライムを攻撃する。
「ですが、どうやって逃げるのですか?」
「イシス、大丈夫だ。俺の魔法で逃げ道をつくる」
「それしか手がないか。だけどアベルディオ、確実にできるのか?」
そうリューセイに問われアベルディオは首を横に振った。
「それは……やってみないと分からない」
「まあ、やらないよりもいいんじゃないのか」
「クライスの言う通りですね。ここで泥スライムの群れと延々戦っていても体力がもちませんし」
顔を引きつらせながらイシスはそう言い襲いくる泥スライムを氷結の魔法で攻撃する。
「それしかないか。何をするのか分からないけど、アベルディオを信じる」
そうリューセイに言われアベルディオは、コクッと頷いた。
眼前に水晶を翳すとアベルディオは詠唱を始める。
その間リューセイ達五人はアベルディオの周囲に立ち向かいくる泥スライムの群れを攻撃していた。
《聖なる道 光り指し示す 我らが通る場所 邪なるモノ浄化し滅せよ!!》――《聖光邪滅殺!!》
そう言い放つとアベルディオは水晶を頭上に掲げる。すると水晶が眩い光を放ちリューセイ達六人へ降り注いだ。それは個々の体を覆い発光する。
それを確認するとアベルディオは水晶を目の前に翳した。水晶はまだ光を発している。
「泥スライムに体当たりされているのに痛くない」
「リュー、それだけじゃなく……消滅している」
「うん、これなら……って! 最初から、これ使えば良かったんじゃ」
そう言いながらユリエスは、ジト目でアベルディオをみた。
「まさか、この魔法を使うまでもないと思ったのでな」
「ああ、アベルの言う通りだ。それよりも急ごう」
「うんうん、急ごう~!」
こんな所に何時までも居たくないと思いルルカは歩き始める。
それをみた五人も、あとを追いかけた。
暫く歩みを進めると、やっとの思いで湿原を抜けホルイラ草原にでる。
「やっと出たな」
「リューセイ、こんなに草原が綺麗って思えたの初めてだよ」
そう言いルルカは目を輝かせた。
「そうですね……湿原が余りにも酷かったですから」
「そうそう、イシスの言う通り。もうあんな所なんか通りたくないよ」
嫌な顔をしユリエスは、ハァーっと溜息をつき湿原の方をみる。
「そうだな……俺も通りたくない。んー、そろそろ魔法の効力がきれる」
「アベル、まあ……もう必要ないだろう」
「ああ、そうだな。じゃあ急ごう。陽の沈む前に町に着かないと魔物が強くなる」
遥か先をみつめながらリューセイが言うと五人は頷いた。
その後、リューセイ達六人はエリュスプゲルの町へと向かい歩みを進める。
そして暫く歩いた後六人はエリュスプゲルの町に着いた。
読んで頂きありがとうございますヽ(^o^)
では、次話もよろしくお願いします(*^▽^*)






