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透明人間徘徊冒険譚  作者: あ
4/6

二日目

目が覚めた。

もう日は昇っていて、

窓からランチをしている主婦の集団が見えた。

主婦かどうかは憶測でしかないが。


これからどう生きるか、

透明人間をどう活用していくか、

そのことを考えようとネットで調べてみたが、

基本的には性欲のままに書かれたものばかりであった。


仕方がない。

しかし自分はそれがしたいわけではない。


自分は間違いなくそういう欲求はあるし、

実際に起こしてしまったが、

そんなことは生きる希望ではないと思うし、

そうであってほしい。


だから何かできないかと考えるのだが、

別に人助けがしたいわけではない。


捨てられたごみを拾うのは、

拾わないと無視した自分も悪いことをしたということになってしまうんじゃないか、

なんて無駄な妄想が頭に広がるからそうしているだけで、

別に地獄や天国、

一日一善なんてものを信じているわけでもないし、

自分の力で自発的に人の役に立てることをしたいとは思わない。


うんうんと頭を悩ますが、

頭の出来はお察しの通りよくないので、

外に出てから考えようと、また外へ繰り出した。


今日は休日で、今は昼だ。

以前の自分なら、絶対に外へなぞ出たくない状況なのだが、

透明人間となった今では人が多いほうが嬉しいかもしれない。


もちろん人とぶつかってはいけないので、

避けないといけないということを鑑みるとよいわけではないのだが

この人間に付いていこうとか、スマホの中身を覗き見ようとかの

自分好みの対象を見つけるのに都合がよいのだ。


しかし人間観察というものは楽しい。

普段なら人がいるところなど遠慮したいので

そそくさと逃げるように去るのだが、

透明であると聞き耳を間近で立てられて、

女学生どうしのつまらぬ無駄話でも、

まるで最高級の調味料が使われているように

とても面白く感じる。


そういう風にしてふむふむと歩いていると、

ショッピングモールへとついた。


女学生がドアを開けている隙にひょいと入り込むと、

そこは洋服をきたマネキンが立っていた。


洋服屋か、しかも女物のブランドだ。

こうなると性欲がむずむずと湧いてくる。


一生懸命に彼氏とのデート服でも選んでいるのか

あーでもないこーでもないと選別している

女が着替えの場所へ向かうを察知すると、

少し速足で向かって待機し、

壁に張り付いて待った。


狙い通り女が入っていたが、

頭が性欲に支配されすぎて

すぐに俺はなんて馬鹿なんだと気が付いた。


着替えコーナーは一人用に仕切られている。

そこに二人も入る場所は存在するにはするが、

多分そういう風には作られてないだろう。

実際にとても窮屈だし、服の端のほうが当たっている。


そうしているうちに服を脱ぎだした女は、

一人で鏡と睨めっこしている。


自分はかかとをあげ、壁にもたれ

なかなか外に出るのに慣れていないこの身体では

つらい体勢を維持していた。


これはいい、最高の眺めだ。

なんて綺麗な身体だ。

どんどん興奮していたが、

鏡をみて鼻毛のチェックをしだして、

瞬間にボルテージが下がった。


誰にも見られてないと思っているのだ。

この女は悪くない。


そう思いながら、それでも女の身体を凝視する。

そうこうしているうち女は元の服へと戻し、

そのまますたすたと出ていく。


自分もなかなか満足したので、もういいかなと出た。


うーむ。

こんな使い方はしたくないと決心したばかりなのにすぐしてしまった。


楽しいは楽しいし、時の流れも速いのだが、

もっと他にできることがないのかと考える。


こんな素晴らしいことができるようになったのに、

ネットでも転がっているような一般的な犯罪者と変わらないではないか。


うんうんと頭を悩ませ、

女が持っているアイスをひったくりのようにひとなめし、

すたすたと歩く。


外に出た時間が時間だったのでもう夕方になる。

今日もくだらないことだけで時間を費やすのか。


いや、くだらないことだからいいのだ。

人のためとか大儀とかそんなものがあったら、

もう何かしらしている。


何もできないからこうなったのだ。

何も考えず、何もしなかったら透明人間となったのだ。


変に一人で納得すると、

そこからはくだらないことをまた始めた。


ゲームセンターに入り、勝手にメダルを奪って

見知らぬ少年のコインケースへ増やして反応を楽しんだり、


短いスカートの女のスカートめくりをしたり、

禁煙の場所で煙草を吸っていた人には、

持っていたライターで見えないように服に火をつけたりした。

本当に、本当にくだらないことを繰り返した。


これじゃあまるで透明人間じゃなくて幽霊みたいだな、

なんて考えながら、

夜が更け部屋へ戻り、

風呂に入り、飯を食べ、

眠りについた。






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