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透明人間徘徊冒険譚  作者: あ
2/6

初日 昼

そうこうしているうちに、家へ戻る。


おや、隣に住んでいる女性がゴミ袋を抱えて出てきた。

あぁもうそんなに時間が立っているのか。


このままだとぶつかるのでひょいと避ける。

そうして自分の玄関を開けようとして、

隣の玄関に目がいった。


いまなら入り込める。

いましかない。

いけ、いけ

声が聞こえた。


本能が告げるままにドアノブへと手をかけするりと入り込む。

同じ間取り同じような部屋。

なのにどうしてだろう。

とても興奮する。


当然だ。

上がる前に足の裏をさっさと払い

急いで手を洗う。


気持ち悪かったがそこまで気になることでもなかったな。裸で出歩くのは。

玄関がガチャリと開く。


戻ってきた。

ふぅとため息を彼女が吐く。


彼女はなかなかきれいな人で、

いやなかなかというのはカッコつけてしまったが、

アイドルよりもきれいだと自分は思う。


ただし自分の顔の好みは人とずれているらしく、

学生時代はこの人の顔がかわいいなどとくだらない話を友人にしたさいは、

どこがと疑問を持たれることが多かった。


まぁそんなことはどうでもいい。

自分の感覚で彼女はすごくきれいだ。

ショートヘアーですごく自分好みだ。


あぁ思考がどんどん気持ち悪くなっている。

裸で女性の部屋に入り込み、まるで盗撮をしているようなものだからか

凄く興奮していて思考が乱れに乱れている。


彼女はベッドに寝ころびスマホをいじっている。

部屋はあまりきれいではないようで、無造作に物が置かれている。

洗濯物を覗くと下着などが置いてあり、まじまじと見つめてしまう。


自分はあまり人に興味を抱かないなんて言っておいて、

いざこのような立場になると

どんな人間よりも乱れて必死じゃないかと思うと自嘲してしまう。


だが仕方がないものだ。

今までとは異質な状況が起こっているのだから。


これからどうしよう、

彼女が寝るのを待ってその体をまさぐってやろうか

なんてとても気持ちの悪い、

でも興奮が抑えきれない思考ばかりしてしまう。


ぐぅとおなかが鳴る。

冷や汗がどっと出る。


まずい心臓の鼓動が強くなる、恐る恐る彼女を見ると

どうやらイヤホンをしていたらしい聞こえていなかったようだ。

さっきまでの思考は飛び、座り込んでしまいそうなほど、

貧血のように力抜ける。


それと同時にかなり冷静になる。

なんて気持ちの悪い男だ。さっさと自分の部屋へ戻ろう。

だがどうしたことか。


軽率にこの部屋へ入り込んでしまったが、抜ける方法が困難だ。

俺はなんて馬鹿なのだろう。性欲に支配されてしまった自分の愚かさに情けなくなる。

とりあえず彼女がトイレなどで離れる隙に窓から逃げてしまおう。

そう考えて数十分が立つ。


腹は減るし、トイレはこちらが行きたくなってきた。

なんて自分は愚かなのだともう何度目になるだろうという自責を続けているところ、

彼女がついにトイレに立った。


トイレのドアを閉めてすぐに、いまだ!と窓から逃げようとするが、

じょぼじょぼという音に気を取られる。


おかしい、自分にはこんな趣味はなかったはずだ。

だけどまるで憑りつかれたようにトイレのそばに行き耳を立てる。


あぁおかしいおかしい

なぜこんなにも興奮するのだ。


なぜなぜなぜなぜ

紙の音がする。


もうすぐで出てきてしまう

いまならまだ間に合うぞ

回転する思考とかみ合わず、全く動かない足

つばをごくりと飲む

水が流れる音がする。


ガチャとドアが開く。

あぁなんてことだ絶好の機会が逃れた。

いや逃してしまったのだ。

なんて愚かなのだ。


自責につぐ自責。

腹の減りとトイレの我慢をしながら

とうとう自分の部屋に戻れたのは彼女が二度目のトイレへと向かった2時間後のことであった。




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