空白
空白
宇海 巴
薄暗い部屋、秋の夕暮れと似た橙の灯がほのかに色づいている。頬を赤く照らされた彼女はくすりと僕を見て笑った。
「君が言ったんだよ。豆電球は消さないでって」
「でもやっぱり恥ずかしいな。寝顔、見られちゃうじゃない」
照れる僕を面白がる彼女は暗がりだと一層綺麗に見えた。
手を握り、もう片方の手で軽く口に触れた。「おやすみ」
彼女が夜寝付けないことを言ってきたのは昨日の昼。まさか元恋人と添い寝をする日が来るとは思わなかった。
何も考えずに寝ようとするとンンと唸る声が聞こえる。
ーいないものにしようとしてもやはりそこにいる。
「…なんで僕なんだよ」ボソッと呟いてみたが彼女は心地良さそうに眠っていた。ホッとして僕も寝た。
孤独な夜のことだった。