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23話『頼れる人』

11/13 以下の修正を行いました。ご迷惑おかけします。

・五話の最後にちょっとした伏線を追加。

・レイとスメルクの元素レベルを変更。レイは火と土が得意で、スメルクは水と風が得意にしました。


 レクトがハルたちに授業を行っている頃。

 アリスたちは、探索者協会に足を運んでいた。


「で、弟子入り、ですか……?」


 協会の受付嬢が、アリスたちの要望を聞いて困惑する。


「はい。現役の探索者であるなら、どなたでもいいんです。どうか次の実習まで、私たちに探索者としての戦い方を教えていただけないでしょうか?」


 深々と頭を下げるアリスに、受付嬢は難しい顔をした。


「申し訳ございませんが、協会にそのような制度はありませんし……見習いが経験を積むには、やはり教習所が一番だと思います」


「その教習所に、頼れる人がいないんです」


 深刻な面持ちでアリスは告げる。

 しかし受付嬢は、首を縦に振らなかった。


「事情はよく分かりませんが……難しいものは難しいとしか言いようがありません。妙な前例を作るわけにもいきませんし……申し訳ございませんが、今回はお力になれそうにありません」


「……そうですか」


 アリスは落ち込んだ様子でカウンターから離れた。

 近くで話を聞いていた他の生徒たちと共に、協会を出る。


「やっぱり、駄目か……」


「まあ、以前も似たようなことをしたしな。それで無理だったんだから、今回も難しいのは当然か」


 レイとスメルクが溜息交じりに言う。

 以前この協会に来た時も、アリスたちは現役の探索者に弟子入りできないか検討した。しかし結果は失敗。探索者たちはとりつく島もなかった。


「その……すみません。私のせいで、皆さんまで授業をボイコットすることになってしまって……」


 アリスは目の前にいる生徒たちに深々と頭を下げて謝罪した。

 ほぼクラスメイトの全員が、自分のボイコットに付き合ってくれたのだ。しかし思うように事は進まず、アリスの胸中は罪悪感で溢れそうだった。


「皆さんは、授業に戻っても構いません。……私はもう少し粘ってみます」


 実習も近い。本来なら少しでも鍛錬に時間を費やすべき期間だ。

 しかし、クラスメイトたちはアリスの傍から離れず、


「ちょっと、アリス~?」


 シャッハが意地悪な笑みを浮かべて、アリスの両頬を指で摘まんだ。


「ひゃ、ひゃっはさん? らにするんれすか!?」


「あのねぇ~。もう何度も言ってるけど、アタシたちは好きでアリスの傍にいるのっ! 勿論、アリスが公爵家だからとか、そーゆーのも関係なしでね! 皆、アリスの直向きな性格に惹かれたから、力になりたいと思っているわけ! 分かった!?」


「ひゃ、ひゃい……」


 理解したならよし! とシャッハはアリスの頬をはなした。


「しかし、アリスが面と向かって誰かと喧嘩するとは思わなかったな。今までも何度か授業をボイコットすることはあったが、アリスが切っ掛けとなったのは初めてじゃないか?」


「うっ……そ、そうかもしれません」


 アリスが気まずそうに視線を下げる。


「でも、ハルは行っちゃったな」


 レイが呟くような声音で言った。


「ボイコットを推奨するわけにはいかないからな。本人が行きたいと言うなら、認めるべきだろう」


「ハル、この前の授業で助けられたことについて、改めてお礼がしたいって言ってたし、その気持ちも分かるよね」


 スメルクとシャッハが、ハルの行動に理解を示す。

 どちらかと言えば悪い行動をしているのは自分たちの方だ。誰もハルの行動を咎めることはできない。


「ボイコットを続けるかどうかはともかく、俺たちも教習所に戻った方がいいな。協会を頼れないなら、教習所の方が訓練に使える道具がある分まだマシだ」


「……そうですね。一度、戻りましょう」


 スメルクの意見にアリスは同意を示す。

 生徒たちはそのまま固まって教習所の方へ向かった。


 今はまだ授業中だ。他のクラスの生徒たちを邪魔しないよう、アリスたちは静かに教習所の敷地に入り、グラウンドを横切って校舎へ向かおうとした。


「あっ、アリス!」


 グラウンドで授業を受けていたハルが、アリスたちに気づく。


「ハルさん。レクト教官の授業を受けていたんですね」


「う、うん。でもアリス、聞いて欲しいの。レクト教官、やっぱり凄い人で――」


 ハルにしては珍しく興奮した様子だった。

 しかし、ハルが何かを告げるよりも前に、レクトが近づいて言葉を制止する。


「ハル。その説明は後だ」


 そう言ってレクトは、アリスたちを見た。

 その目はボイコットの件を咎めているようには見えず、いつも通り覇気がない淡々としたものだった。


「アリス、レイ、スメルク、シャッハ。……誰でもいいから、今からハルと模擬戦をしてくれないか?」


 そんなレクトの提案に、アリスたちは目を見開いた。


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― 新着の感想 ―
[一言] アリスはもう一度くらい痛い目にあったほうがいいと思うけど、それやると公爵家が『教習所の責任』とか理由つけてでしゃばってくる可能性あるからなぁ。 出来れば自分で納得して貰いたいところ。
[一言] 直向きというかただ感情的なだけですよね。 感情だけで行動する奴はろくなのいないです。 罪悪感感じるくらいなら最初からこんな事するんじゃないよ。 喧嘩とは言ってますがアリスからの一方的なもの。…
[一言] 流石にアリスさん甘やかしすぎない?というかアリスさん罪悪感あるとか言うけど本当に罪悪感あるならそれこそ他の先生に頼りなさいよ。そうすればボイコットなんてさせずに済むんだから。なんというかアリ…
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