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嫉妬

たぶん甘々注意

「ねぇ、ティア。僕、心配だなぁ・・・」


 クルクルと私の髪の毛を指でいじりながら肩に顎を置いて話すカイン。後ろから感じるカインの温もりと離れられないように回された手に私の心臓はドキドキしっぱなしだ。


 どうしてこうなったのか・・・


 放課後、魔術学部へ申請書を提出に行った私がなかなか戻って来ないので、カインが探しに来てくれたそうだ。

カインが私を見つけたのが、ちょうどエリクと助手の約束をした時で、バンッとドアを開け研究室に入ってきたカインに回収された私は、無言のまま連れられてそのまま帰宅し、今に至る。


 ・・・うん、わからん。

 怒ってる、訳でもなさそうなんだよね。


「たしかにエリク様は身分差別する方じゃないかもしれないけれど、研究室ではふたりきりなんでしょう?僕、まだ彼を信用出来てないんだよね・・・ティアに何かあったら、嫌だなぁ」

「でも、エリク先輩は魔術の事しか頭にない人だし・・・」

「『エリク先輩』?・・・随分と仲良くなったんだね?」


 少し声が低くなったカインに、ぎゅうっと腕に力を込められる。


「っ、カイン、苦しっ」

「ティアは攻略対象に対してはガードが固いのに、それ以外に対しては緩すぎるよ・・・」


 耳元で囁かれたと思ったら、カプリ、と耳を甘噛みされる。


「ひゃっ!」


 ビクッと身体が反応する。

 耳元で囁かれるだけでもゾクゾクとするのに、そんな事されたらカインの動きに私の全ての感覚が支配されているように、カインの事しか考えられなくなる。


 そんな私を見てカインは満足そうに耳元に唇を寄せる。


「そうやって、ティアが僕の事だけを考えてくれてたらいいのに」

「〜〜〜っ」


 カインの声には甘さが含まれていて、心臓がドキドキとうるさく音を立てる。



 怒ってる・・・と言うよりは、


 ・・・拗ねてる?


 いつもの怒っている時の黒オーラは出てないし、今のカインは、何と言うか・・・甘えてくる感じだ。

 きっと、エリクが本当に危険な人だったらカインはこんな反応はしないで、上手く私とエリクを引き離すのだろう。レオンハルトとの補講にカインも加わったように。


 たぶん、これはカインの嫉妬だ。


 モゾモゾとカインの腕の中で体の向きを変え、カインの首にぎゅっと抱きつく。


「わっ、・・・ティア?」


 抱きついた衝撃でカインは後ろに倒れてしまい、ボスッ、と二人でベッドに倒れ込む。私がカインを押し倒すような体勢になった。


「ね、カイン。私が好きなのはカインだよ?家でも学園でも、カインの事ばかり考えてるもの。・・・エリク先輩の助手になったのだって、カインと離れていても話せる魔術具が欲しいと思ったからだし・・・」


 カインの乱れてしまった前髪を手で上げると、エメラルド色の目が驚きと不安で揺れていた。


「だから、そんな不安そうな目をしないで?私はカインの嫉妬深い所も、たまにちょっと強引な所も、いつも心配して守ってくれる所も、全部、全部大好きだよ」


 そのままおでこにちゅ、と口付ける。


「・・・」


 プシューと音がするように、カインの顔がみるみる赤くなっていく。


 そのまま硬直していたカインだが、しばらくすると両手で顔を覆い、私の下でモソモソと丸まった。


「うぅ・・・ティアには敵わないなぁー・・・」


 顔を真っ赤にしてポツリと呟くカインも愛しく思う。


「そんな風に反応が可愛いカインも大好きだよ」

「もう!またそんな事言って!」


 カインは口では文句を言うが、顔を真っ赤にしたままでは説得力が無い。可愛い。


 ・・・そんな私も自分の大胆な行動を思い出して少し恥ずかしくなってきたのだが。


 キスしちゃったよ。おでこだけど。


 カインの上から降りて、ベッドに腰掛ける。


「・・・ティア、兄様からエリク様の事を聞いたんだけど、本当に魔術の事しか興味無い人みたいだから、たぶん、大丈夫だと思うし、魔術を学ぶにはいろいろ勉強にはなると思う。・・・でも、頭ではわかっていても嫌だったんだ。ごめんね」


 ムクリとカインも起き上がり、私の隣に腰掛ける。なんとなくシュンとしょげている子犬みたいに見える。


「・・・カインが嫌ならエリク先輩の助手、断ろうか?」


 私が助手になる事で電話が出来るならやってみたいと思ったけれど、カインに嫌な思いをさせてまでしたいものではない。


 そう言うが、カインはゆっくりと首を横に振る。


「いや、大丈夫。エリク様は魔術に関してはすごい人らしいから勉強になるだろうし、貴族然としていないから、ティアにとっては他の魔術学部の人よりも安全だと思う。・・・変な人だけどね」

「ふふっ、たしかに」


 エリクは人の話は聞かないし、魔術について語りだしたら止まらないし、見た目もくたびれた感じだが、魔術に関しては優秀で、悪い人では無いのだ。


「それに、僕も欲しくなっちゃったよ、ティアと遠くにいても話せる魔術具。・・・作ってくれる?」


カインがそう言ってくれるならば、頷く以外の選択肢はない。


「うんっ、私もエリク先輩に協力して、頑張って作るよ!」


 カインと電話をする為に、この剣と魔術のファンタジーな世界で携帯電話を作るよ!

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