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進級と休息

 学年末のテストは無事にクリアする事が出来た。今回は実技も全て合格出来たのでホッとした。


 卒業式、春季休暇を挟んだら2年生に進級だ。


 この1年間で、思っていたより攻略対象達と仲良くなってしまった気もするが、悪役令嬢であるはずのリリアーナと友人関係になれたのは嬉しかった。


 このまま何事もなく平穏に卒業したいものだ。


 気がかりなのは、レオンハルトの動向と新しく増える攻略対象のニコラスと宗教戦争だろうか。


 レオンハルトは、最近は妾になれとは言って来なくなったが、図書室で何かを言いかけていたあの日から、たまにじっと見られている気がする。敵意や害意では無いが、好意でも無い気がする。いつも高慢な態度のレオンハルトらしくない。


 ゲームでは、レオンハルト暗殺事件が2年生の秋頃、学園祭が終わる頃に起きるはずだ。暗殺事件全容についてはゲームでも詳しくは語られていない。誰が、何のために、どうやってその事件を起こしたのか、全くわからないのだ。

 わかっているのはニコラスの好感度が高ければレオンハルトは暗殺され、それ以外の攻略対象の好感度が高ければ、暗殺事件は未遂に終わるというだけだ。この事件に関しては私のゲーム知識は何も役に立たなさそうだ。


 新しく増える攻略対象のニコラス自体は可愛らしいし、良い人なのだが、好感度が上がる事でカインと結婚出来なくなる事も困るし、レオンハルトが暗殺されてしまうのも後味が悪い。

『関わらない』はもう無理そうなので、なるべく避けて、ゲームイベントを回避する方向でいきたいと思っている。


 あとは、宗教戦争。まだ起こるかどうかは分からないが、注意が必要らしい。これ、ゲームには全く無かった展開なんだよね。どうなるのか予想がつかないが、戦争の道具にされるのは嫌なので注意しておこう。


 今の時点で気がかりな事がこれだけあるので、2年生になってからもいろいろとありそうだ。




「ティアはどんな物語が好きなの?」


 私は今、ミーナのマイリス男爵邸に遊びに来ている。

 学年末テストを無事に合格したので物語好きのミーナと思う存分語り合うのだ。


「私は断然恋物語!甘々な話が好き!」

「わかるわ!ときめくのよね!これとかオススメなのだけれど・・・」


 マイリス男爵邸は貴族街の端に位置していて、平民の住む区域から近い事がわかった。ミーナの部屋は本が溢れていて、ほとんどが小説などの物語系で、物語好きの私は心躍る空間だ。マイリス家は裕福な方ではないらしく、ミーナが少ないお小遣いで長年かけて集めた本たちだそうだ。


 物語について語るミーナは生き生きとしていて、楽しそうで、普段のオドオドした感じは全くない。本当に物語が好きなのだとわかる。


「わたくし、いつか物語を書く事にも挑戦してみたいと思っているの。いろいろな物語を読んでいると、ここがこうだったらいいのに、とか、こういう話があっても素敵、とか思うのよね」

「わかる。私は生み出す力はないから妄想で補完しているだけだけど、それを形に出来たら素敵だよね」


 日本にもあったような二次創作のような形だろうか。日本の創作の世界はいろんな物語が多種多様に溢れているから、もしミーナと日本に行けたりしたらとても楽しめると思う。


「そう言ってもらえると嬉しいわ。やっぱり書くなら恋物語かしらね。ただ、わたくしはあまり経験が無いから周りを見て想像する感じで書くしかないのだけれど」

「いいと思う。特にリリアーナ様とか素敵だよ!あの一途な愛!そしてあの凛とした美しさの中に秘められた可憐さ!尊すぎてずっと見ていたいくらいだよ」

「ふふっ、ティアは本当にリリアーナ様が好きね」

「もちろん!・・・ミーナは最近は大丈夫?」

「え・・・?」

「ほら、勉強会の時も最初にリリアーナ様が来た時は緊張していたでしょう?」


 ミーナのマイリス男爵家は末端男爵家と言われる程小さな家で、その事で昔、周りの貴族から蔑まれたり、嫌がらせを受けたりもしたそうだ。だから特に身分の高い人には苦手意識が出来てしまったのだとか。レイビス、カイン、アーサーには慣れたみたいだけれど、勉強会にリリアーナが来た時には少し強ばった顔をしていた。


「ええ、もう大丈夫よ。わたくし、リリアーナ様はあまりいい噂を聞かなかったから、怖い方だと思っていたの。でも実際はとても優しくて、笑顔が可愛いらしくて素敵な方だという事に気づいたわ。ティアがリリアーナ様に憧れを抱くのもわかるわ」

「そうでしょう。リリアーナ様は素敵な人だからね」


 リリアーナはツンとした態度が多かったからか多くの人から誤解を受けていたようだ。たぶん、弱い所を見せてはいけないという思いがあったのだろうが、リリアーナはとても繊細で優しい人なのだ。リリアーナの魅力を理解してくれる人が増えて嬉しく思う。


「リリアーナ様と二人でもお話させていただいたのよ。身分に開きはあるけれど、わたくしともお友達になっていただけたの。とても嬉しかったわ」

「本当に?よかった!」


 ミーナとリリアーナが仲良くなってよかった。最近は一緒にいることも増えているから、友人同士が仲良くなってくれるのは私も嬉しい。


「いつか、三人でお茶会をするのも楽しそうね」

「楽しそうだね。魔術学園を卒業しても仲良くしてくれると嬉しいな・・・」


 あと2年もあるゲームシナリオを回避し続けて、卒業したらどうなっているかなんて今は想像もつかないけれど、魔術学園で出来たミーナやリリアーナという友人達とは変わらず仲良くして、一緒にいれたら幸せだと思う。卒業しても、お茶会を開いたりして友人関係を続けていきたい。


「ええ。わたくしの方こそティアにもリリアーナ様にも仲良くしてもらえると嬉しいわ」


 ミーナといろいろな話で盛り上がったその日は、ゲームのイベント回避を意識しない、ひと時の休息の日となった。

魔術学園1年生はこれで終了です。次から2年生に進級します。1年生ではフラグを立てまくったので、これから徐々に回収していきます。

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