表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/201

新学期開始

 夏季休暇が明け、魔術学園の新学期が始まった。

2、3年生は1ヶ月後の学園祭の準備で忙しなくなっていた。


 魔術学園の学園祭は2日間開催される。

 1日目は、一流の芸術家達が学園内で展示をし、それをお茶を飲みながら優雅に眺め、一流の音楽家達が奏でる一流の音楽を鑑賞する。そんな芸術鑑賞の場。


 2日目は家族を学園に招待しての、大規模なガーデンパーティーが開催される。これは主な準備は学園側が行うので、私達生徒は家族に招待状を送るくらいだ。


 では、2、3年生の生徒は何に忙しなくしているのかというと、学園祭1日目には学部毎の発表があるのだ。

 騎士学部なら武闘大会を毎年開催しているし、魔術学部は魔術具発表会を行っている。

要はそれぞれの学部の総まとめを発表する場だ。

外部の文官や騎士、学者や魔術具研究者も見学に来るので3年生の就職の為の自己アピールの場にもなるそうだ。気合いも入るだろう。


 学部別授業が始まるのは2年生からなので、今年1年生の私には関係ないが、来年に向けて学園祭当日はそれぞれの発表を見学しに行きたいと思っている。


「シヴァンさんは文官学部なんですよね?どんな発表なんですか?」


 2年生のシヴァンは文官学部を選択しているらしい。今の時期は学園祭の準備で忙しいようだ。


「そうだよ。文官学部は自分の領地をテーマに何か研究して、発表する人が多いね。僕は今年は3年の先輩の手伝いをしているんだ。来年は自分の研究の発表をしようと思っているから、その参考にもなるしね」


 文官学部は主に領地運営を行う者や王宮に務める文官になるのを希望する者が学ぶ場だそうで、ファロム侯爵家跡取りのシヴァンや王宮での文官を目指すカインは文官学部に入るらしい。


「そうなんですね・・・」

「ティアは何の学部に入るか決めたのかい?」

「いいえ。学園祭を見学してみて考えようと思っています」


 私は文官になる気は無いので文官学部は無いし、騎士になる気も体力も無いので騎士学部も無い。

学問を重点的に学ぶ学術学部か、魔術具研究を行なう魔術学部かで悩んでいる。


「そうか・・・では、学園祭は僕が案内してあげようか?ティアはまだ学園内を全て覚えている訳ではないだろう?」

「当日はお忙しいのではないですか?」

「いや、今年は事前準備さえ終えれば当日は結構暇なんだよ」


 今年は自分の発表ではないので、事前準備さえ終えれば、当日は結構時間が空くらしい。


 うーん、どうしようかな。それってゲームのシヴァンイベントなんだよね。

でも、今のシヴァンさんは善意で言ってくれているだけだしな・・・


「兄様、僕にも案内してよ」

「カインは文官学部って決めていなかったか?」

「一応、他の学部も見学してみたいんだよ」


 私が悩んでいるのを見透かしたのか、カインが助け舟を出してくれた。カインが一緒にいてくれるなら安心だ。


「では、お願いしてもよろしいですか?」

「ああ、構わない。・・・アーサーはどうする?」


 シヴァンがアーサーにも声をかける。


「いや、俺は騎士学部って決めてるし、当日は武闘大会を見学したいから遠慮しておくよ」


 アーサーは家が騎士の家系な事もあり、騎士を目指しているので、騎士学部を選ぶと決めているそうだ。


「あ、そうだ。シヴァンさん、よろしければもう一人、誘いたい人が居るんですけれど、いいですか?」






「ミーナ、あれからテオとはどうなったの?」

「・・・ほぇ?!」


 学園内でミーナに会ったので、気になっていた事を聞いた。


 スクラル領の星祭りで、テオとミーナは一緒にランタンを飛ばして、しばらくふたりきりだったはずだが、何か進展はあったのだろうか。

 あの後はもう遅いからとミーナはすぐに帰ってしまったし、テオも何も答えてくれないので、気になっていたのだ。


 ミーナは少しモジモジとしながら話す。


「えっと、特に、何もなかったわよ?ランタンを飛ばして、しばらくお話しさせてもらって、皆と合流したから・・・」

「えっ、そうなの?」

「うん・・・お話しできたのが、すごく、楽しかった。・・・テオさんは、本当に優しい方ね」


 その時の事を思い出しているのか、頬を染めて潤んだ目をしているミーナ。


 ・・・可愛い。恋する女の子って感じだ。

 まだテオの気持ちはわからないけれど、二人が幸せになれるなら私も応援するよっ!


 ミーナを見ながらニマニマしていた私は、もう一つ話があったことを思い出した。


「そうだ、ミーナ、学園祭当日なんだけど・・・シヴァンさんが学園祭を案内してくださるから、カインと3人でまわる事になったんだけど、良かったらミーナも一緒に学園祭まわらない?」


 ミーナがパチパチと瞬きをする。


「ファロム侯爵家の方々と、ティアと、わたくしが?いいの・・・?」

「もちろん!ミーナも来年の学部まだ決めてなかったよね?一緒にいろいろ見学しよう?」


 ね?と言うとミーナはポロポロと泣き始めた。


「えっ?!どうしたの、ミーナ?!嫌だった?!」


 どうやらミーナは身分の高い人に対しては緊張してしまう性格のようだが、カインとは同じクラスだし、シヴァンは人当たりが良い人だから大丈夫かと思っていたが、やっぱりダメだっただろうか。

 ミーナはグスッと鼻をすする。


「ち、違うの・・・嬉しくて・・・」

「え?嬉し泣きなの?!」

「グスッ、学園祭、一人で過ごさなければ、ならないのかと思っていたから・・・嬉しくて・・・是非よろしくお願いしますぅ」


 どうやら、嫌な訳ではないようだ。よかった。ミーナは結構泣き虫なのかもしれない。


 こうして、学園祭1日目はシヴァン、カイン、ミーナ、私の4人で学部見学をする事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ