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祖母と婚約証書

 ゲームにおいて祖母は重要人物である。


 ゲームの中でヒロインは王子や貴族という高貴な身分の彼らと恋に落ち、愛し合い、結婚をしようとする。

 しかし、この身分制度の社会で王子等身分の高い者が何の身分も無いただの平民と結婚出来る筈がないのだ。そこで登場するのがヒロインの祖母だ。


 祖母は実は、隣国リオレナール王国の元王女なのだ。

 リオレナール王国は国力も高く、ここ数十年は医療にも力を入れている大国だ。

 リオレナール王国の王家には代々黒髪黒目の者が産まれるらしい。王家以外の領民には黒髪黒目の者は産まれないので、王家の証とされているそうだ。


 祖母は若かりし頃、サクレスタ王国から行商に来ていた平民の祖父に一目惚れし、猛烈アタックの末、身分も国境も飛び越えて嫁いで来たのだという。

 その時に外面的には勘当という形でリオレナール王国を追い出されており。王位には祖母の弟が就いたのだ。

 しかし、祖母は今でもリオレナール王国と繋がっており、祖母の弟(元国王で現大公)と仲良く文通をしている。


 そんな祖母はヒロインの恋愛を熱く応援し、リオレナール王家の協力を得てヒロインをリオレナール王国の王族にする。

 ヒロインは王族の証である黒髪黒目を持っているので誰しもを納得させ、愛し合っている者の元に嫁がせるのだ。



 ・・・いやぁ、おばあちゃんすごいわ。色んな意味で。


 でも、今の私の婚約者は平民のカインだし、祖母がゲームのようにアグレッシブに動く事は無いだろう。


 現時点で私に出来る事は、カインと仲良くして婚約を続け、成人したら結婚する。という事ぐらいかな。

 やる事リストに書いておこう。




 コンコン


 1階から聞こえてきたノッカーの音に慌ててノートを片付け部屋を出る。


 今日はカインが遊びに来る日だ。

 カインはいつも2、3日に1回ぐらいのペースで遊びに来てくれる。テオやアリアは学ぶ事が多いらしく、週に1回遊べれば良い方なので、カインと遊べるのは嬉しい。

 私が礼儀作法やお手伝い、教会で出された課題があって遊べなくても手伝ってくれたり、待っててくれたりする。

 以前、カインはそれでいいのかと聞いたら「僕はティアと過ごせるだけで幸せだからいいんだよ」と言ってふにゃりと笑ってくれた。優しい。


「どうぞ、あがって」

「失礼します」


 カインをリビングに通し、紅茶を入れる。


「ありがとう。僕、ティアの入れてくれた紅茶好きなんだ」

「そう言ってもらえると嬉しい。父さんの紅茶にはまだまだ届かないけど」

「ティアは努力家だね」


 実は私が父から紅茶の入れ方を習いだしたのは、カインに出会ってからだ。カインは私がどんな紅茶を入れても美味しいって飲んでくれるけれど、やっぱり心から美味しいって思ってくれる物を飲んで欲しいからね。


「そうそう、今日はこれを持って来たんだ」


 そう言ってカインが取り出したのは1枚の紙。

 受け取って内容を見ると、難しい言い回しの言葉がいっぱい書いてあった。


「・・・契約書?」

「婚約証書だよ」


 ・・・婚約証書?

 聞き慣れない言葉だ。


 カイン曰く、婚約してから結婚するまでに2年以上あく場合は婚約証書を作成し、教会に提出して婚約者がいる事を公に認めてもらう事が必要らしい。

 そして婚約証書が提出されれば婚約破棄や婚約者の変更は本人達の同意無しでは出来なくなるそうだ。


「そうなんだ。全然知らなかったよ」


 私から婚約を言い出したのに何も調べてなくて申し訳ない。


「気にしなくていいよ。ティアは知らないだろうなって思って、準備しておいたから」

「ありがとう。助かったよ」


 改めて、婚約証書を見る。


 ふむ。サインが必要なんだね。カインはもう書いてあるみたい。


『カイン・ファロム』


 そういえば、カインの家名って今まで知らなかったな。ファロムなんだ。

 ・・・ファロムってどこかで聞いた事があるような・・・どこだったっけ?


「ここにティアのお父さんのサイン、こっちにティアのサインをもらえるかな」


 カインは指を差して説明してくれる。私達は未成年なので、保護者のサインも必要なのだそう。


「わかったよ。そういえば、カインのお父さんのサインがあるって事は私達の婚約認めて貰えたんだね。よかった!」


 カインがあまり会わせたくなさそうだったから婚約の事はカインにお任せしたけど、ちゃんと認めてもらえるのか心配だったんだよね。


「もちろんだよ。と言うか、父はあまり僕に興味無いからねぇ。ここにサインが欲しいって言ったら特に読みもせずサインしてくれたよ!」


 わあ、全く認められてなかったよ。

 その言い方だと婚約するって事すら言ってなくない?


「大丈夫なの、それ?!騙してる事にならない?!」

「大丈夫だよ。ちゃんと『婚約証書だよ』って渡したし、『そうか』って返事もあったから。仕事しながらの返事だったけど」


 うーん、カインはニコニコしてるけど、これ伝わってないな。絶対。


「私、お義父さんが婚約の事を知ったらカインとの婚約解消されたりしないかが心配だよ」

「安心して。その辺の対策はしておくから!」


「任せて」と自分の胸を叩くカイン。


 ふむ。カインさん、このまま通す気ですね。


「カインがそう言うなら信じるよ」


 実際結婚するまではまだまだ時間があるから、ご両親に認めてもらうのは急がなくても大丈夫かな。私としては婚約解消をされなければ良いのだ。


「今度、証書を教会に提出しに行こうと思うんだけど、ティアも一緒に行く?」

「行く!」


 前世でいう婚姻届を二人で役所に提出に行くみたいな感じだね。前世では結婚できなかったけど。今回もまだ婚約だけど。

 やっぱり二人の事だから二人で行きたいと思う。


「じゃあ、2日後の午後にティアの家に迎えに来るから、準備して待っててね」

「わかった」

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