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学期末テスト1

 もうすぐ魔術学園は夏季休暇に入る。

 そして、日本と同じくその前にはテストがある。学期末テストだ。


「そういえば、ティアさんは随分とリリアーナの事が好きなのだな」


 テスト前の勉強会での休憩中、そうレイビスに切り出された。


「・・・どうしてですか?」

「授業中、よくリリアーナの方を蕩けた顔で見ているだろう?まるで、懸想でもしているように」

「・・・」


 み、見られてたっ!こっそりやってたつもりだけど、そんなに分かりやすかったかな?!恥ずかしいっ!


 何でか分かんないけど、アーサーが「あー」と上を向いて額を押さえて、カインが「懸想?」と黒いオーラを纏い始めた。ミーナはキョトンとした顔をしている。


「ティアはリリアーナ様に懸想をしていますの・・・あ、いや、しているの?」


 ミーナは最近、敬語を取るのを頑張っている。可愛い。


「いや、違うよ?!リリアーナ様はなんて言うか・・・憧れ?みたいな感じでね。立ち居振る舞いとか、見ていて参考になるから、ちょっと見てただけだよ?ちょっとだよ?」


 妙な誤解を与えないように懸命に説明をしていると、ポンと肩を叩かれた。そろりと振り向くと・・・


「ティア、その話、詳しく」


 黒オーラを纏ったカイン様がいらっしゃいました。



 カインに話せそうな部分を掻い摘んで説明をした。


「なるほどね、リリアーナ様の凛とした美しさと恋する乙女の可愛らしさにときめいて、授業中に周りから懸想をしていると思われる程に蕩けた顔で食い入るようにリリアーナ様を見ていたと、そういう事だね?」

「はい、その通りです・・・」


 その通りなんだけど、纏められるとなんか私、変態っぽくない?ヤバい奴じゃない?


 カインは「もうそんなに進行していたのか」と頭を抱えるし、レイビスも「そういう事か」と苦笑している。アーサーは我関せずとミーナと勉強をしている。


「いや、リリアーナにな『最近ティアさんにやたらと熱い視線を向けられているのだがどうすればいいのか』と困ったように聞かれてな」


 あ、そういえば、レイビスはリリアーナと双子だったよね。学園内の事も家で話すよね。


 というか、リリアーナを困らせてたよ!私!

 こっそりやってるつもりがガッツリ気づかれてた!


「申し訳ございませんでした・・・」


 なんかもう、申し訳なくなってきてシュンと項垂れると、レイビスが慌ててフォローしてくれる。


「あ、いや、勘違いしないで欲しいんだが、リリアーナも迷惑しているわけじゃないんだ。戸惑ってるだけだと思うんだ」

「戸惑ってる・・・ですか?」


 レイビスが言うには、リリアーナは幼い頃にレオンハルトと婚約して、ずっとお妃教育を受けてきた。

 そのせいもあり、周りの同年代の女の子は皆リリアーナの立場を利用しようとする者か、リリアーナの立場を恨めしく思う者しかいなかったらしい。

 だから、私がそのどちらでもない憧れだけの目を向けるので、そんな相手は初めてで、どう接していいのかわからないらしい。


「今リリアーナは未知の感情と向き合って悩んでいるんだ。・・・答えなんて簡単なのに。だから、もしリリアーナがミーナさんみたいにティアさんと友達になりたいと言ったら、仲良くしてあげてくれるかい?」

「それは、もちろん、光栄です・・・」


 けれど、私は考えてしまう。公爵令嬢としてのプライドの高いリリアーナが平民の私と仲良くしたいと思うだろうか。彼女のプライドが許さないのではないか。

 だから私も、無闇矢鱈にリリアーナに近づかず、眺める程度に抑えているのに。


 ・・・もし、本当にそうなったら私は大歓迎だけれども。

 あ、そうだ、これだけは言っておかないと。


「ね、カイン。私が懸想しているのはカインだけだからね?」


 勘違いしないでね?と言うと、カインは一拍置いて、ポンっと赤くなった。


「こ、こんな所で何言ってるの!」


 もー!と言いながら真っ赤になった顔を手で覆い机に突っ伏すカイン。相変わらず反応が可愛い。愛しい。


 ミーナとレイビスは「え、誰?」と首を傾げ、アーサーが「冷血の狼、カイン・ファロムだ。面白いだろ?」と答えていた。







 魔術学園のテストには、座学と実技がある。

 座学は一般教養、魔術、社交術で、実技は体術、魔術、社交術がある。


 座学は勉強会もしているし、特に問題はないだろう。実技の体術、社交術も授業を受けている限り今回は問題なさそうだ。


 問題は・・・


「魔術かぁー・・・」

「テストの話?」


 今はカインとアーサーとシヴァンといういつものメンバーで登校している。今日と明日は座学のテストだ。


「ティアは魔術の座学も大丈夫だろ?」

「いや、実技の方がね・・・」


 魔術の実技テストは魔術具に魔力を込めるというものだ。10個の魔術具全てに上手く込められたら合格となる。

 私が魔術具を壊さずに魔力を込める事が出来る成功率は6割強といったところだ。正直これは練習あるのみなので、今すぐに成功率を10割にするのは難しい。


「Cクラスには魔力を節約して込めていかないと足りなくなる人もいるから、ティアの魔力量は羨ましいよ」


 カイン達Cクラスは魔力が少ないので、10個の魔術具に魔力を込めようと思うと、1つ1つを起動するギリギリに魔力を込めるように調節しなければならない人もいるらしい。それはそれで大変そうだ。


「1年生は大変そうだね。テストに落ちると夏季休暇中、補講に来ないといけなくなるから、頑張ってね」

「え?!そうなんですか?」


 上級生、シヴァンからの情報に目を丸くする。


 そんなの聞いてなかったよ!せっかくの夏季休暇が!

 ・・・ん?ちょっと待てよ?今何か引っかかったよ?補講?夏季休暇?



「・・・ああ!」


 突然大声を出した私に三人がビクッと反応する。


「ティア?どうしたの?」


 ・・・ヤバい、とんでもない事を思い出した。


「カ、カイン、学園に着いたら話があるの・・・」

「え、うん」


 あんな大事なイベントを忘れていたなんて・・・

 先生方から補講の情報がなかったから結びついていなかったのだろう。


 ゲーム内の1年生の夏季休暇中、レオンハルトとヒロインがふたりきりで補講を受けるイベントが発生する。

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