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忠誠

カイン視点→ニコラス視点になります。

 ノア・クラシスの起こした事件は終息した。彼はもう二度と日の目を見る事は出来ないだろう。


 優しいティアはそんなノアにも手を差し伸べた。あの後、ノアは今までの罪を洗いざらい吐いたそうだ。おかげで彼の罪はもう少し重くなりそうだが、彼が満足そうだからそれで良いのだろう。


 もうすぐ卒業式。ティアは僕と結ばれて、ティアの前世の物語はほとんど終わり。やり残した事を一つ片付ける。



「カイン!条件は揃えました。約束は守ってくださいね」


 ニコラス殿下の執務室に呼び出された僕は勢いよく殿下に詰め寄られた。気のせいか、嬉しそうに振られている尻尾が見える。


 条件とは、シャルロッテ王女とノアの排除、それにニコラス殿下が協力する事だ。それを達成したら僕の忠誠が欲しいらしい。


 ・・・ニコラス殿下は少しだけ、ティアと似ているのかも知れないと最近思う。

 純粋な所、ぼんやりしているように見えて意外としっかりしている所、・・・僕を理解して受け入れてくれる所。


 国王陛下から僕を従わせるように言われているのかとは考えていたが、ああもキッパリ『忠誠を要求します』と言ってくるとは思わなかった。そしてまさかの『二番目でいい』発言。

 国のトップとなる予定の王太子が臣下に言う言葉では無いなと思うけれど、二番目で良いなら従ってもいいかなと思えるのには充分だった。

 彼はティアに害なしたり、魔力が多いからと利用しようとしたり・・・僕からティアを取り上げようとしたりもしないから。


 取引をする前からニコラス殿下は僕とティアの関係に協力的だった。よっぽど僕の事を恐ろしく思っているのか、ティアと仲が良いからなのか。何にしても、そんな殿下だったら従ってもいいかもしれないと思った。


 それにニコラス殿下の言う通り、殿下の元で僕が采配を振るえるならば、ティアの理想とする平凡な生活を維持しやすいだろう。・・・多少身分が上がってしまうのは目を瞑ってもらおう。ティア自身もかなり評価を上げてしまっているし。


 ニコラス殿下は本当に僕の条件を達成してくれた。想像していた以上に積極的に協力してくれて、殿下が僕をフォローしてくれた場面もあった。

 王太子として指揮を執る殿下は、王族らしく威厳があり、仕えるのに相応しいと思った。


「わかっております」


 そう言って、殿下の手を取り跪く。愛や忠誠を誓う誓いのポーズ。僕がティア以外にこんな事をするなんて思ってもいなかった。


「僕、カイン・ファロムは殿下がティアに相反しない限りニコラス殿下を支え、忠義を持って守り抜く事を誓います。・・・この忠誠を受け取って頂けますか?」


 殿下とティアが相反しない限り、僕は殿下に仕えてこの国ごとティアを守る。ニコラス殿下を支えていく、そう誓った。







 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








 ノア・クラシスによるティア誘拐事件はカインとアーサー、騎士団達により無事に終息しました。

 騎士団を動かしたので実は僕も現場に行っていたのですよ。戦闘ではおじゃま虫なので大人しくしていましたが。


 ティアを王宮の魔術師にして禁書庫の本を持ち出す許可を出し、それをノアに奪わせ罪を被せる。上手くいって良かったです。ノアは生涯幽閉となり、二度とティアの前に現れる事は出来ないでしょう。


 シャルロッテ王女は排除したわけではありませんが彼女がティアに害なす事はもう無いでしょうし、留学期間ももう終わりですので、国に帰るでしょう。


 これで僕はカインの忠誠を得るための条件を揃えたのです。



「僕、カイン・ファロムは殿下がティアに相反しない限りニコラス殿下を支え、忠義を持って守り抜く事を誓います。・・・この忠誠を受け取って頂けますか?」


 カインが跪いて僕の手を取り、忠誠の言葉を口にします。


「はいっ!」


 やった。やりましたよ!カインは僕の味方となってくれたのです!父上の課題は達成です!


 僕が拳を握りしめて達成感に浸っていると、立ち上がったカインが不思議そうに呟きます。


「それにしても、意外でした。殿下は人を陥れるような事は協力して下さらないと思っていましたので」


 なんと。あんな約束をしておきながら僕はまだカインに疑われていたようです。


「王太子となってからは、綺麗事だけで国はまわせない事を知りましたので・・・今回のように時に誰かを陥れてでも得なければいけないものもあるのです」


 以前、父上にも言われました。僕の優しさは美点であり欠点だと。


 シャルロッテ王女の件がいい例ですね。

 彼女は僕がいくら優しく言い聞かせても、ティアへの平民差別はやめようとしませんでした。しかし、冷たく突き放すように接すると彼女は優しいティアに傾倒し、平民差別をやめたのです。

 上に立つものは優しいだけではダメなのです。


「よくわかっているようで安心いたしました。さて、ニコラス殿下。僕の主となった殿下には主に相応しい振る舞いをして頂きたく存じます」

「主に相応しい振る舞い、ですか?」


 ・・・あれ?忠誠を誓ってもらったはずなのですが、なんだかカインの方が立場が上な気がしますね。何故でしょう。


「まずはその言葉遣いをやめて頂きたい。臣下への敬語はおやめ下さい。王太子がそんなへりくだったような話し方では舐められます」

「えっ?!これは、僕の癖のようなもので・・・」

「殿下」

「努力します!・・・じゃなかった、善処する!」


「ありがとうございます。それでは次に――――」


 それから僕は、王太子として相応しい振る舞いをするようにカインからたくさん注意を受けました。

 カイン、もしかして父上よりもスパルタじゃありませんか・・・?


 カインを味方にしたら父上の課題が終わると思ったら、カインから課題がやって来ました。

 ・・・カインは僕の為を思って言ってくれているのでしょうから、頑張りますけどね!


 やっぱりこのカインから一心に愛情を受けられるティアは特別なのだと改めて思いました。


次回は卒業式です。

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