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夜会後日談

ティア視点→アーサー視点になります。

 熱も下がって学園に行った私は、早速シャルロッテと出くわした。


「あ・・・」


 チラリと隣のカインの様子を伺う。

 カインは今後の彼女の態度次第ではすぐにでも国から追い出すと言っていた。

 今はまだ観察の段階なのだろう、カインは変わらぬ表情でシャルロッテを見ている。


 シャルロッテはおずおずと私の前にやって来ると、躊躇いがちに私を見つめる。


「ティア様・・・」


 ・・・ん?


「ティア様、お身体の加減はもうよろしいのですか?」

「え、ええ。熱も下がって、すっかり元気になりました」


 どうした?!本当にシャルロッテだよね?

 いつも、『平民』とか『貴女』とかでしか呼ばれた事ないのに『ティア様』?!


 シャルロッテはパァっと顔を明るくさせる。


「あの、ティア様。今までの多くの御無礼をどうかお許しくださいませ。申し訳ございませんでした」


 深々と頭を下げるシャルロッテ。


「え?!・・・いえ、大丈夫です。頭を上げてください」

「・・・やはりティア様はお優しいですわね」


 頭を上げたシャルロッテは恥じらうように頬に手を当てる。


 誰だこのヒト。見た目はシャルロッテで中身が別人に入れ替わったとか、そんな現象が起きているのではなかろうか。


 シャルロッテは私の手を取ると、恋人のように指を絡ませて握り、そのまま私の腕にピットリとしがみついた。


「?!」

「ああ、ティア様・・・あたくしの女神・・・」


 何か言ってる?!

 幸せそうに私の腕に頬擦りをしたシャルロッテはうっとりと呟きを漏らす。


 シャルロッテの豊満な胸がムニュっと押し付けられるので、アリアとどちらが大きいかなーと現実逃避気味に考えていると、ベリッとシャルロッテが引き剥がされた。


「ティア、行くよ」


 そういえば、朝の教室に向かう途中だった。カインが不機嫌そうに私の手を引き、歩き始める。

 アーサーは『超笑いたいけど頑張って堪えている』みたいな顔をしていて、カインにじろりと睨まれていた。


 歩き始めた私がシャルロッテの方をチラリと振り返ると「まあ、カイン様は女性にも嫉妬しますのね・・・ティア様、また後ほど」と笑顔で手を振られた。

 ・・・なんだったのか。







 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








「それで?どこまでがカインの計画通りだったんだ?」


 生徒会室を人払いして、俺とカイン、ニコラス殿下は顔を突き合わせた。


 そういえば、生徒会は俺達3年は会期が終了したので、ニコラス殿下達2年生が生徒会役員に就任した。引き継ぎもほとんど終えたので、やっと俺やカインは忙しい日々から解放されたのだ。


「シャルロッテ王女をティアに救わせ好意を持たせる所まで概ね計画通りなのですが・・・」


 この部屋の新しい主、ニコラス殿下が困ったように口を開く。


「ティアが川に落ちた事と、シャルロッテ王女がティアに懐きすぎた所は予想外だったよ」


 カインはムスッとした顔で腕を組んでいる。


「僕はカインがシャルロッテ王女に怒り始めた時もどうしようかと思いましたよ」

「ティアをあんな目にあわせたのです、腹が立ったのは仕方ありません。殿下が上手く合わせてくれたのは助かりました」


 どうやらあのカインの怒りっぷりは本心だったらしい。いっそこのまま追い出してもいいかと思ったとか。

 ティアのおかげでそうはならなかったが。


「あの王女様、休み時間の度に俺らの教室来て、ティアにベッタリ引っ付いてるぞ」


 カインの計画では、シャルロッテ王女には適度にティアへの好意を抱かせて、誤ちを認めさせ自ら帰国するようにさせたかったらしい。しかし、予想以上にシャルロッテ王女がティア好意を持ってしまい(もはや崇拝と言ってもいい)、シャルロッテ王女はティアと離れたくないと言わんばかりにティアにベッタリだ。

 絶対に自ら帰るとか言わなさそうだ。


「ずるい!僕ですら休み時間の度に行くのは我慢してるのに!」

「いや、したかったのかよ」


 カインは登校時も下校時も休日もティアと一緒にいる事が多いのにまだ足りなかったのか。


「当然でしょ。それで?ティアの反応はどう?」

「当然なのか・・・。ティアは、戸惑ってるって感じだな。突然王女の態度が変わってどう接すればいいのかわからないみたいだ。・・・そうそう、ティアに『体はシャルロッテ王女で中身だけ別人に入れ替わってる可能性ないかな』って真顔で言われた時は笑ったな」


 真剣なティアの顔を思い出してくつくつと笑うと、ニコラス殿下もふふっと笑う。


「ティアは時々突拍子もない発想をしますよね」

「ティアが嫌じゃないならいいけど・・・むしろ嫌がってくれれば喜んで追い出すのに」

「まあ、しばらくは様子を見ようぜ」


 カインはシャルロッテ王女がティアにベッタリ引っ付くのが不満みたいだ。

 王女の変わりようには俺も驚いたが、全てが敵になり責められたあの状況で唯一自分を庇ってくれたティアに好意を抱くのは当然だと思う。


 まあ、カインがそういう状況に持っていったんだから、今回は自業自得じゃねえ?



「・・・『彼』はこの程度じゃ済まさないからね」

「わかってる」

「はい。次はどうしますか?」


 カインの次の標的ノア・クラシス。

 今まではほとんど動いていないが、協力者のシャルロッテ王女がティアに陥落した今、自分で動かざるを得なくなるだろう。俺は関わりが無いから知らないがカイン曰く、ノアは放っておくとティアを傷つけるかなりの危険人物らしい。


 俺達は今後の計画を確認して次に備える事にした。

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