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女子会


「幼馴染みの恋人がいるのに、王子からも告白されるなんて、なんてときめく展開なのでしょう!」

「ごふっ」


 アリアから出た台詞が聞いた事ある話過ぎて、飲んでいた紅茶を吹き出す所だった。危ない。


「ティア?大丈夫?」


 ケホッ、とむせている私の背中をミーナがさすってくれる。


「大、丈夫、ありがとう」


 ここはアリアの家で、今はアリアとミーナと私の三人でお茶会をしている。


 話題は、ミーナが最近物語を執筆し始めたらしく、その話だ。

 私はまだ読んでいないけれど、恋愛物語で、ときめきが満載らしい。


 話の大筋はこうだ。


 貴族の女の子には幼馴染みの優しい恋人がいて、ふたりは仲良しなんだけど、ある日その国の王子様が女の子に一目惚れして告白する。王子は少し強引に女の子に迫り、女の子の気持ちも揺れ動くという三角関係の恋愛物語だ。


「実は実在の人物をモデルに書いたの。実際は違うと思うのだけど、こうだったらときめくわ、と思うと想像が止まらなくて、本にしてしまったわ」


 ミーナすごいわー。

 でもその実在の人物って私じゃない?ところどころ違うけど、設定が私に近くない?


「ちなみに、その実在の人物って・・・」

「ティアよ」


 ですよねー・・・。


 自分がモデルの恋愛物語とか恥ずかしいっ。普通の恋愛物みたいにときめけない気がするっ!


 うーん、と頭を抱えると、だんだんとミーナが涙目になってきた。


「ティア、やっぱり不快だったかしら・・・ごめんなさい。ティアやカイン様、ツバキ王子のやり取りを見ていたら創作意欲が止められなかったの・・・ティアが嫌ならこれは廃棄するから・・・」

「ああ、違うのミーナ!嫌じゃなくて!ちょっと恥ずかしかっただけだから、その、私も読んでみたいから廃棄しないで!」


 アワアワとミーナにフォローを入れると、何故かアリアが目を輝かせた。


「そうですわ、ミーナちゃん!こんな素晴らしい物語はもっと世に広めるべきですわ。わたくしはミーナちゃんを応援いたします。・・・つきましては早く続きを執筆してくださいませ」


 アリアちゃん、めっちゃハマってるよ!目がキラッキラしてるよ!


「頑張りますわ。・・・そういえば、アリアさんは恋はしていないの?」

「アリアちゃんの恋バナっ」


 そういえば、恋バナに関してはアリアは昔から聞き役で、自分の話をする事はほとんどない。

 私もミーナも興味深々でアリアを見つめる。


「わたくしは特にありませんわね。今は仕事が恋人でしょうか」

「えぇー残念」

「創作意欲の為にも、アリアさんの恋バナも聞いてみたかったのだけれど、残念ね」


 アリアは可愛いしスタイルも良いし、モテそうなのになぁ・・・。アリアの恋バナが聞けなくて残念だ。私とミーナが残念がると、アリアが苦笑する。


「恋バナ、では無いかもしれませんが、わたくしは結婚するなら仕事を続けさせてくれる相手が良いですわね。フラゾール裁縫店の職人さんから選ぶのが一番かしら」

「お兄ちゃんと似たような事言わないで・・・」


 確かに条件も大事だけどね。皆、花ざかりのはずなんだけど、考えが枯れている気がする。


「結婚となると難しいわね。わたくしは結婚出来るのかが怪しいわ・・・」


 ミーナも遠い目をしながら呟く。

 ミーナのマイリス家は末端貴族とも呼ばれているので縁を結びたい貴族も少なく、更に兄弟の多いミーナは売れ残る可能性が高いそうだ。


「あら、ミーナちゃんは、テオくんはもうよろしいのですか?」

「告白もせずに振られてしまったのよ・・・」

「あら、そうでしたの。それは失礼を」


 アリアはミーナがテオに振られた事を知らなかったようだ。目を丸くして驚いていた。


「なので、わたくしは今、物語に自分に無いトキメキを求めて創作活動をしているの。むしろ振られた事が原動力となっているわ」


 ぐっと拳を握るミーナには失恋の悲しみなんて見受けられない。むしろ以前より笑顔が増え、明るく創作活動をしている。

 失恋を乗り越えて女は強くなるのかもしれない。


「ミーナちゃんはお強いですわね」

「ミーナが元気そうでよかった・・・あ!」

「どうしたの、ティア?」


 突然声を上げた私にミーナとアリアは不思議そうな顔をする。


「えっと、今年は夏季休暇にファロム領に旅行に行こうと計画しているんだけど、よかったらミーナも一緒に行かないかなって誘おうと思ってたんだけど・・・テオもいるんだよね・・・やっぱり気まずい、よね?」


 今年の夏季休暇は、昨年の学園祭でシヴァンに誘われたファロム領への旅行を計画している。

 いつも通りカイン、アーサー、テオ、アリアは行く事が決定しているけれど、今年はミーナも一緒にどうかと話していたのだ。


「旅行?わたくしが行ってもいいのなら、同行させてもらってもいいかしら?・・・テオさんの事は何も無かったに等しいし、気にしないわ。学園卒業前に皆様と思い出を作りたいもの」

「ほんとにっ?」


 ふわりと微笑むミーナが頷いてくれたので、今年の夏季休暇の旅行はミーナも一緒に行く事となった。


「楽しみですわね」

「そうだね!その為にも、次のテストも乗り越えるよ!」

「うっ、嫌な事を思い出させないで・・・」

「ミーナ、一緒に勉強頑張ろう?」

「ええ・・・また勉強を教えてくれると嬉しいわ」

「任せて!」


 もうすぐ魔術学園最後の夏季休暇だ。皆とたくさん思い出を作れるといいな。



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