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兄のお見合い

 最後にひと騒動あったけれど、狩猟大会は終了した。

 私達のチームは見事優勝を果たし、褒賞を受け取った。

 褒賞は4人で分けて、私はその褒賞で魔石を購入した。狩猟大会で壊れてしまった分もあり、とても助かった。


 貴族の森に生息しているはずのない魔獣、アリベルが出た件は、騎士団が到着しアリベルを拘束して檻に入れてどこかへ運んで行った。

 カインは誰かが持ち込んだって言っていたから、持ち込んだ人物を探すのだろう。


 ・・・ゲームではどうだっただろうか。

 ゲーム内でも出現した魔獣は大きな虎のような魔獣、アリベルだった。


 ならばゲーム内では誰が持ち込んだのか。

 たしか、ゲーム内の狩猟大会は2年生の時だったから、その時3年生のシヴァンが狩猟大会の後に何人か捕まった貴族がいたとか言っていたような気が・・・




 ・・・・・・。




 あー、覚えてない!

 そんなスチルも立ち絵も無い貴族の名前なんて覚えてないよ!


 でも、一つ思い出した。その貴族達は学園に不満を持っていたから事件を起こした。魔力の量で差別されるのが不満で、憂さ晴らしのような動機だった。つまり、犯人は魔力の少ない生徒だ。


 ・・・情報少なっ!

 魔力が少ないって、Cクラスに限定したとしても全学年合わせたらどれだけいると思っているのだ。絞りこめるかっ!


 ただ、ゲームと確実に違うのは、明確に私を狙っているという点だろうか。

 ゲーム内では偶然が重なった結果、魔獣はヒロインに襲いかかったけれど、私は故意に乾きにくい血を付けられて魔獣に襲われた。

 私に血を付けた男子生徒は黒だろうけど、一人であんなに大きな魔獣を運んでこれたとは思えないし、他にも共犯者がいるのだろう。


 しかし、私が狙われる理由がわからない。

 魔力が多い平民の私が不満?ならばゲーム内も条件は同じだ。だがゲームでは狙われていない。


 他にゲームと違うのは・・・開催時期と悪役令嬢だろうか。

 ゲーム内は2年生秋で悪役令嬢はリリアーナだった。

 しかし、現在私は3年生春で悪役令嬢はシャルロッテだ。

 ・・・もしかして、シャルロッテが絡んでる?


 シャルロッテは何故かカインの事を気に入っているようで、その婚約者の私の事は気に食わなさそうだし、排除しようとしてもおかしくはない。


 カインは犯人を見つけ出して血祭りにあげるって言っていたけれど、シャルロッテが黒幕だとすると、ネルラント王国の王女様だし、王太子の婚約者候補だし、かなり難しいんじゃないかな・・・

 いや、血祭りはさすがに冗談だろうけど。


 とりあえず、またカイン達に心配をかけてしまいそうで申し訳なく思う。ゲーム知識で解決出来たらよかったんだけど・・・そう上手くはいかないかな。







「ただいまー」

「あ、おかえり!」


 父と母と兄が家に帰ってきた。今日は三人ともキッチリとした服を着ている。

 今日はなんと、兄のお見合いだったのだ。

 父の知り合いで、年頃の娘さんがいる人から、会うだけでもどうだーと話が進んだらしい。私は狩猟大会の事は一旦頭の隅に追いやり、兄たちを出迎えた。


「ねぇ、ねぇ、どうだったの?相手の女性はどんな人?気に入った?次はいつ会うの?私が会うのはいつ?」

「待て待て、落ち着け」


 リビングに入って来るなり詰め寄る私に、兄はどうどうと手を上下させる。私は馬か。


「ゆっくり話してやるから、とりあえず座れ」


 兄がソファーを指差すので大人しく座った。


 ちなみに、父と母は「今日もティアは元気だなー。じゃ、ニック後はよろしく!」と部屋に行ってしまった。


「それで、どんな女性か、だったか?」

「うんっ。どんな人だったの?」


 前に、一緒に喫茶店を経営してくれるなら誰でもいいとか枯れた事を言っていた兄だが、実際相手が目の前に来れば気持ちも少しは変わるだろうと、期待を込めて兄を見つめる。


 兄は顎に手を当てて少し上を向き、今日の事を思い出すような仕草をする。


「家は建築業を経営しているらしい。礼儀作法は今ひとつだが、背筋はピンと伸びていてよかったな」

「うん・・・?」

「喫茶店の経営を一緒にしてもらう事になると言ったら、わからない事ばかりだと思うが頑張ると言っていたので、やる気がある感じは気に入った」

「はあ・・・?」

「次会うのはまだ決まっていないが、とりあえずアルバイトとして働いてもらおうと思うし、その時ティアとは会えるんじゃないか?」

「待って」


 兄の回答に疑問を覚えた私は制止をかける。


「どうした?」

「お兄ちゃん、今日は結婚の為のお見合いに行ってきたんだよね?」

「そうだけど?」

「喫茶店従業員の面接に行った訳じゃないよね?」

「そうだな。結婚のお見合いだったぞ?」


 キョトン、と不思議そうに瞬きする兄。



「うわぁぁぁ・・・」


 ぜんっぜんダメだった!この兄、結婚相手を喫茶店従業員としてしか見ていないよ!

 こんなんじゃ相手も呆れて去って行くよ!


「いきなり唸り始めてどうしたんだ?」

「お兄ちゃんのバカー!このままだと結婚出来ないよ?私の求めてた回答はそれじゃないよ!もっと、恋愛感情的にどうだったのかを聞いているの!」

「恋愛感情的に・・・?」


「えー・・・」とかいいながら悩む兄。

 そんなに難しい事かなぁ?


「ほら、顔が可愛かったとか、趣味が合いそうだったとか、こういう仕草にときめいたとか!」

「うーん・・・。じゃあ、ティアは?」

「ん?」

「ティアはカインのどこを見て結婚を決めたんだ?ほら、8歳の時にいきなり婚約しただろ?」


 兄には話した事がなかったかな?

 私がカインに結婚を申し込んだのは・・・


「私は、魔術学園に行くのに同じ平民の婚約者が欲しくて、その時はカインの事平民だと思ってたから結婚を申し込んだんだよ。でも、その後ちゃんとカインの事が好きなんだって気づいて、今に至る感じだよ」


「・・・つまり、最初は条件で決めたんだな」


 ・・・はっ!そうだ、私も結婚を申し込んだ時は条件で決めたよ!恋愛感情は後から気づいたんだったよ!


「ち、違うよ・・・私は、無自覚だったけど、ちゃんとカインの事が好きで結婚を申し込んだんだよ」

「じゃ、俺も後から恋愛感情に気づくかもしれないし、とりあえず条件で結婚相手考えてみるな!」

「のおぉぉぉ」


 いい笑顔で締めくくられた!


 お兄ちゃんのお見合い相手の人、ごめんなさい。

 妹の恋愛は兄の参考にはなりませんでした。兄はしばらく喫茶店従業員として考えるみたいです・・・。


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