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狩猟大会4:アーサー視点

 今回の狩猟大会は、何故かティアが一緒に狩りに参加する事になった。


 最初は危ないからとティアの提案を棄却していたカインだが、ティアに何かを耳打ちされると、意見をひっくり返した。

 確かにティアは多量の魔力の持ち主だし、魔術学部で魔術具を研究しているし、チームに加える利点は大きいと思う。


 実際、ティアはその多量の魔力を活用し、狩猟大会用の魔術具を大量に作り上げていた。カインが監修している物もあるが、ほとんどがティアが考え出した物らしい。

 ケータイもそうだが、ティアはたまに突拍子もない発想をすると思う。

 アレらを使えば狩猟大会は俺たちの独壇場となるだろう。


 カインもカインで、何やらツバキ王子と賭けをしているらしく、「ツバキ王子みたいなタイプは正面切って負かす方が諦めるかと思って」と言って、絶対に負けないと意気込んでいるので、ティアの考えた魔術具を更に凶悪にするアドバイスをしていた。


 今までカインの魔力が足りなくて諦めていた魔術具がティアだと作れるそうで、今更ながらカインとティアの組み合わせは最強、いや、最恐だと思った。絶対敵に回したくない。




 狩猟大会当日。

 動きやすいようにニックの服を着て、男装しているように現れたティアを見たカインは「何あれ、超可愛い。ティアってなんでも似合うよね」とかボヤいていた。カインはティアなら何でもいいのだろう。

 確かに、男物の服を着たティアは小柄な美少年のようで可愛らしく、似合うとは思ったが。


 シャルロッテ王女が来た時は、まためんどくさいのが来たなと思った。

 シャルロッテ王女はどういう訳かカインを気に入ったようで、よく話しかけにくる。

 あんたの絆を深める相手はカインじゃないだろーとは思うが、あれだけ冷たくあしらわれているのにめげない根性はすごいと思う。


 今までもカインの顔や身分に寄ってくる女性達は多くいたが、たいていの場合その冷たい態度に恐れをなして引いている。更に婚約者のティアにだけ特別優しく笑うのだ。勝ち目がないと思うのだろう。


 なので、カインに近づこうとするあの王女様は何を考えているのかよく分からない。


 ちなみに、相手は一応王女様なんだし、あまり冷たすぎる態度はやめた方がいいんじゃないかとカインに言ってみた事はあるが、「え?彼女に優しくして何か僕に得があるの?」と言われたので、「無いな!」と答えた。

 この場合の『得』とは、ティアが喜ぶとか、離れてる時のティアの様子を知れるとか、そんな『得』である。カインはブレねぇな。





「アーサー様、そろそろ始まりますよ」

「お、構えるか」


 キリアが声をかけてきたので、俺は馬の手綱を引く。


 キリアは今年入学してきた1年生で、騎士志望の公爵令息だ。


 狩猟大会が開催されると決まると、メンバーを誰にしようか悩んでいた俺とカインの元にやって来た。


「カイン様とアーサー様に憧れています。俺を狩猟大会のチームに入れてくださいっ」


 公爵令息が頭を下げるものだから焦ったけれど、キリアは俺とカインのどこが素晴らしいのかを滔々と語りだし、1時間後、俺達は根負けしてキリアをチームに加えた。


 キリアは関わってみると、戦闘センスもあるし、頭も良い。人柄も俺とカインを讃えすぎな所以外は良い奴だった。

 カインも、ティアに対して敵意も害意も好意も無いキリアを気に入ったようだ。

 カインがキリアにティアの素晴らしさを語り聞かせるので、キリアはティアを信仰し始めた。さすがにやばいと思ったので最近は止めるようにしているが、既に手遅れかもしれない。ごめん、ティア。



「ティア、ちゃんと捕まっててね」

「うん」


 馬に跨り手綱を掴んだカインが前のティアの腰を抱く。


 二人で馬に乗ると密着した体勢になるので、ティアは少し恥ずかしそうだが、カインはかなり満足げだ。


 魔術具作りが忙しかったのもあると思うが、狩猟大会までの期間にティアを一人で馬に乗れるように練習させなかったのはこれを狙っていたのかと思う程だ。



「では、狩猟大会開始っ!」


 学園の先生が狩猟大会開始を宣言すると、生徒たちは一斉に森へと駆け出した。


「行っけえ、ドローン一号!」


 多くの生徒が森へと駆け出す一方、ティアは魔術具を一つ起動させ、空へと飛ばした。


「?!、あれは一体なに?!」

「空を飛びましたわ!」


 お茶会を始めようとしていた女子生徒がざわめく。


 うん。俺も最初は驚いたから、その気持ちは分かる。

 あの奇想天外な動きをする魔術具をティアは『ドローン』と呼んでいる。やる気の無さそうな名前だなと思ったが、こいつがすごかった。

 ドローンは空を飛び、一目散に森の中へと入る。木々に邪魔されないので一番早く目的の場所に到着するだろう。


「行こうか」

「ああ」

「はい」


 森の西側へ馬を進める。

 俺達は森の西側を狩場にする予定だ。西側には魔獣が多く生息しており、狩るのは大変だがポイントを稼ぎやすいのだ。

 だが、他の生徒もそう考える奴は多いだろう。


 一目散に駆けて行った奴らのほとんどは西側へ向かったはずだ。

 そいつ等を西側へ踏み込ませないように足止めするのがあのドローンだ。


 ドローンはティアがケータイを使って操作している。

 そして、ちょうど西側の中心部にドローンが来たら、ドローンに搭載しているもう一つの魔術具を起動させるのだ。


「成功したよ!」

「ありがとう、ティア」


 どうやら、上手くいったようだ。

 西側へと近づくと、先に駆け出していたチームが先に進めず立ち往生していた。


「なんだ、これは・・・?」

「透明の壁、でしょうか」

「剣も弓も無意味ですね・・・」


 ニコラス殿下のチームも西側を目指していたらしい。馬を降りて呆然としている。


 ティアが張った透明な壁――――『シールド』とティアは呼んでいる――――は、ドローンを中心に円形に広がっている。

 今まで攻撃を阻む盾はあったが、人も攻撃も阻む透明な壁というのは初めてだ。

 他の者は何かが分からなくて立ち往生しているのだろう。


 これはあらかじめ登録のある者しか通さない設定になっているのだ。


 なので・・・


「え、アーサー!危ないですよ、ぶつかります!」


 ニコラス殿下が叫んで止めようとしてくれるが、俺はそのまま馬を進める。


 スルっと俺は難なくシールドを通り抜ける。

 キリアやカインも通り抜けた所でツバキ王子や他の生徒は気づいたらしい。


「ティアの魔術具か・・・!」


 正解。


 シールドを攻略されるまで、この狩場は俺達の独壇場だ。




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