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新入生歓迎パーティー(3年生)1

 三度目の新入生歓迎パーティーが始まった。


 新入生歓迎パーティーは2、3年生主体で準備を行うので、生徒会メンバー指揮をとらなくてはならなず、とても忙しそうだった。

 それは当日の今も変わらず、慌ただしく動いている。

 さすがにカインも今日は生徒会副会長としてやる事があるようで、会場入りすると「おとなしく待っていて」と私をミーナに預けると仕事に戻って行った。保護者か。


「あ、ニコラス殿下にエスコートされているあの方がシャルロッテ王女だよね」

「ええ、さすがはネルラント王国の王女様ね、お美しい方よね」

「そうだね」


 今宵、ニコラスはシャルロッテ王女をエスコートして会場入りしてきていた。

 シャルロッテ王女はサラリとした金髪とサファイアのような碧眼を持つ絵に書いたような美少女だ。輝く銀髪と金色の目の美少年ニコラスととても良く似合っている。


 というか、リリアーナやアリアもそうだが、この世界の女性って、胸大きい人が多いよね。シャルロッテ王女も顔立ちは幼さが残るのに胸の大きさはすごい事になっている。胸元の開いたドレスを着れるのは大きい人の特権だな、羨ましい。


 え?私?前世と同じくそこそこしかありませんけど、何か?


 チラリとミーナを見る。

 ・・・うん。ミーナにも負けている。


「ティア?どうしたの?」


 しまった。変態のように女性の胸を見ていたら、ミーナに気づかれた。やましい気持ちがあった訳じゃないけれど、なんとなく誤魔化す。


「ミーナのそのドレス、可愛いなと思って。似合ってる」


 これも本当に思っていた事だ。

 ミーナのドレスはネイビーの生地に小花が散らしてあるような刺繍がされているドレスで、おとなしめのミーナによく似合うデザインだ。


「ありがとう。お姉様のお下がりなのだけど、それなりに物は良いのよ。うちは貧乏だから何年も着れるような物を買うから」


 ミーナのマイリス男爵家はあまり裕福ではない。さらに兄弟も多いので、ドレス等高価な物はサイズを手直しして家族が共用で使うそうだ。


「ティアは今回のドレスも美しいわね。ティアのドレスはカイン様からの贈り物だったりするのかしら?」

「違うよ。私もお下がりのドレスをリメイクしてるの。髪飾りはカインがドレスに合わせてプレゼントしてくれた物だけど」


 私は今回は薄桃色のドレスだ。いつもの如く、祖母にもらったドレスをアリアに今風にリメイクしてもらった。カインが髪飾りをプレゼントしてくれたし、カインの胸に同じコサージュもついている。


「あら、そうなの?いつもお揃いの花飾りを付けているから、てっきりドレスもカイン様からの贈り物なのだと思っていたわ」

「まさか。ドレスは高価なんだから、そんなのもらったら気が引けちゃうよ」


 今のお下がりのドレスでも不相応だと思うのに、自分に合わせて仕立てるドレスとか恐れ多すぎる。

 ドレスは基本的にオーダーメイドだ。前にアリアにチラッと値段を聞いたけれど、だいたい平民の家族は3ヶ月くらい暮らしていける値段だった。恐ろしい。


「ふぅん。なんだ、ティアはドレスはあまり欲しくはないのか」


 上から降ってきた声にビクッと体を縮こませる。


「ツ、ツバキ王子?!」


 突然現れたツバキに私とミーナは慌てて礼をする。


「畏まらなくても良い」


 ツバキはそう言うが、ミーナは王族のツバキは苦手なのだろう。緊張で体が固まっている。

 一緒に旅行も行ったニコラスは少し慣れてきたようだが、末端男爵家のミーナは身分が上過ぎる人と関わると硬直するようだ。


 そんなミーナに気づいているのか、いないのか分からないけれど、ツバキは私の耳元に顔を寄せてきた。


「卒業パーティーの時のドレスもその薄桃色のドレスも昔ユズリハ姉が着ていた物だな。ティアが着るとまた違った雰囲気になって可愛らしいな。似合っている」

「・・・!!」


 このドレスはやっぱりリオレナール王国の王女様の物だったのかとか、ここでそれを言うなとか、距離が近いとか思うことはたくさんあるけれど・・・


「み、耳元で囁かないで・・・!」

「お」


 ぴっとりくっついて耳元で甘い言葉を吐かないで欲しい。ツバキは低めの声なので背筋がゾクゾクとする。


 ぐいーとツバキの胸を押し返して距離を取ると、何故か嬉しそうに目を細められた。


「ふぅん?なんだ、少しは俺の事を意識してくれるようになったか?」


 ニヤリと笑うと私の手を取り、頬に擦り寄せるツバキ。


「へ、違いまっ――――」



 手を離してもらおうと力を込めると、パシンッと音がして、ツバキの手が離された。



「・・・カイン、生徒会の仕事はもう終わったのか?」

「ええ。あとは他の者がやってくれますので」


 私とツバキの間に入ったカインにツバキが小さく舌打ちをした。


「人任せにするのは良くないぞ。最後までしっかりやって来たらどうだ?」

「僕がいなくては何も出来ない程彼等は無能ではありませんので」

「ここ最近はレイビスもかなり苦労しているようだし、副会長ならばもう少し手伝ってやったらどうだ?」

「僕はこちらにいた方がいいとその生徒会長が判断したのですよ」



 いつも通り喧嘩を始めるツバキとカインにオロオロとしていると、ミーナが硬直したままだと言う事に気づいた。


「ミーナ、大丈夫?」


 二人は一旦置いておいて、ミーナに声をかける。

 ゆっくりと振り向いたミーナは思い詰めたような顔をしていた。


「・・・ティア、わたくし、少し夜風に当たってくるわね」

「うん・・・?行ってらっしゃい」


 フラっとした足取りでミーナは会場を出た。

 ・・・何だろう?緊張で固まってたって言う割には、頬が赤く上気して、感情を抑えているような感じだ。


 ミーナを気にかけつつも、カインとツバキを仲裁していると、声をかけられた。


「お話中失礼いたします。少々よろしいでしょうか」


 そこにいたのはニコラス。そして、ニコラスにエスコートされている金髪碧眼の美少女、シャルロッテ王女だった。

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