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3年生開始

 リオレナール王国第一王子失脚の話はカインからも聞いた。

 これで私とニコラスとの婚約の話も無くなるし、リオレナール王国が私を無理矢理連れ帰る事も出来ないだろうから安心してとの事だった。

 私はカインが動いてくれたのだと言うことをここに来て初めて知った。


 きっと、カインは私が不安に思っていた事も気づいていたのだろう。


「ティアは何も気にせず僕のお嫁さんになってくれればいいから」


 そう言うカインの目はとても優しくて、慈愛に満ちていて。

 カインはプロポーズの時に「僕達の障害となるものは全部取り除くから」と言ってくれたけれど、本当に実行出来る男性が世の中にどれほどいるだろうか。

 それほどまでに私を想ってくれている事が嬉しくて、胸がきゅうっとなった。


 勢いよくカインにぎゅっと抱きつけば、「わっ」と言いながらも受け止めてくれて、カインが大好きな気持ちが溢れた。




 魔術学園も残すところあと1年。

 私達は3年生へと進級した。新1年生は初々しく登校していたし、2年前を思い出して懐かしいなと思ったりした。


 留学してくるシャルロッテ王女はまだ見ていないけれど、シャルロッテ王女の噂はよく耳にした。

 美しい金糸のような髪に青い瞳の絶世の美少女な上、豊満な胸をお持ちの方だとか。男子生徒が少し浮き足立っていた。


「シャルロッテ王女か、俺も実際に会った事は無いな。まぁ、どんな美少女でもティアには敵わないと思うが」

「まあ、ツバキ王子、ご冗談を」


 そして、朝から教室でツバキに話しかけられた。

 アーサー達は生徒会として入学式の手伝いに駆り出されているので、今は私一人である。


「冗談ではないのだが。・・・しかし、聞くのはいい噂だけではないからな。ティアはあまり近づかない事をオススメする」


 ツバキが僅かに顔をしかめる。


 ・・・性格の事だろうか。ゲーム内の彼女はかなりぶりっ子な性格で、男性が自分の思う通りにならないと気が済まないタイプだ。

 ゲーム内のリリアーナの嫌がらせは自身が表立って行われる事が多かったが、シャルロッテは周りの人間を使ったり、攻略対象に気づかれないように陰険な嫌がらせを行うのだ。

 出来る事なら私も関わりたくはない。


「それより、ティア。王都に新しく出来たチョコレート専門店は知っているか?」

「そんなものが出来たのですかっ!」


 チョコレートは今サクレスタ王国でも多様化しつつあるお菓子だ。いろいろな種類のチョコレート菓子が出てきていて、料理人さん達の努力が窺える。


「ああ、いろいろな種類のチョコレートが売っていて、トリュフやドラジェ、ザッハトルテなんて外国の菓子もあるみたいだぞ。」

「わぁ・・・」


 何それ超行ってみたい!


 私が目を輝かせてツバキの話に食いつくと、ツバキは嬉しそうに目を細めて小さく「変わらないな」と呟く。


「ティアは甘い物が好きだっただろう。開店したばかりで今はとても混みあっているらしいが、王族の俺と行けば優待してもらえる。どうだ、今度一緒に――――」

「ティア、ただいま!」

「あ、おかえり、アーサー」


 生徒会の仕事で席を外していたアーサーが戻ってきた。入学式の手伝いが大変だったのだろう、少し息を切らせたアーサーは私の隣に腰かける。


「えっと、それで、何でしたっけ、ツバキ王子?」

「いや、この話はまた今度にさせてもらおう」


 騎士も来たしな、と言ってツバキは自分の席に戻って行った。


「絶妙にティアの興味を引く話題出すよな・・・」

「ん?アーサー、何か言った?」

「いや、こっちの話。そうだ、ティア、今日も俺は遅くなりそうだから、帰りはカインと二人で帰ってくれ」

「大変なんだね。わかったよ」


 来週の新入生歓迎パーティーが終わるまで生徒会は多忙らしく、アーサーは一緒に帰れない事が多いのだ。


 そういえば、春季休暇のリオレナール王国第一王子の不祥事の件が終わってから、私がリオレナール王家と繋がっているのでは?という噂は下火になっているそうだ。

 リオレナール王国からの推薦の話があってからも私の事でサクレスタ王家が全く動かない事で、見た目が似ているのはただの偶然の一致だという認識になりつつあるそうだ。

 もしかしたら、陛下やニコラスが手を回してくれたのかもしれない。




 帰りはカインと二人で下校だ。


「それでね、もう少しでケータイが出来ると思うんだよね」

「ケータイ?」

「うん。魔力電話の発展系なんだけど、正式には『携帯魔力電話』だけど、略して『ケータイ』だよ!見た目はスマホを目指すけど、そっちの方が分かりやすいかと思うし。スマホほど機能が多くはないしね」

「そっか、よく分かんないけど、ティアなら出来るよ。頑張ってね」

「出来たらまずカインに見せるね!」

「楽しみにしてるね」


 私の魔術具研究は順調だ。ケータイが出来たらカインと電話したり、メールしたり、写真撮ったりするのだ。ふふん。


「ティア、あのね」

「ん?」


 私を呼んだカインが立ち止まり、そわそわと目を泳がせる。


「あの、新入生歓迎パーティーが終わったらさ、僕も少し余裕が出来ると思うんだ。それで、その・・・」


 自分の前髪をくしゃくしゃといじるカイン。

 ほんのり頬が赤くなっている。


「パーティー翌週の休日、僕と、デートしない?」


 頬を赤らめ首を傾げながら、クリっとしたエメラルド色の目を向けてくるカイン。


 キューンと胸を射貫かれた。


 か、可愛いっ!


 何その顔と仕草、可愛すぎる!

 最近はたまに大胆だったり意地悪だったりもするのに、未だにデートに誘うのに照れてるカイン可愛いっ!



「・・・よろこんで」


 あまりのカインの可愛さに両手で顔を覆って悶絶する。


「よかった。ティアの好きそうなお店があって・・・って、ティア、どこか辛いの?」

「私の婚約者が可愛すぎてツラい」

「えー?ティアの方が可愛いよ?」



 新入生歓迎パーティーが終わったら久しぶりにカインとデート、楽しみだ。

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