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婚約者候補:ニコラス視点

 王宮へ戻った僕は父上の執務室に呼び出されました。


「それで、カイン・ファロムに忠誠は誓わせられそうか?」

「う・・・、申し訳御座いません」


 兄上が失脚したすぐ後に父上から出された課題ですが、僕はまだ達成の糸口すら見えません。

 兄上のようにティアに手を出したりしない事は誓いましたが、それだけではカインは僕に仕える気にはなってくれませんでした。

 カインは他の貴族のように王太子の僕に取り入ろうとする姿勢もありませんし、むしろ嫌われているような気がしてなりません。


「カインにはまた叙爵の話を断られている。褒美は出したが、他の貴族からもカインに叙爵を、との声は多く上がっているな」

「そうなのですか・・・卒業するまでは、と言っているのでしたか?」

「ああ、何を提示しても、今は要らないの一点張りだそうだ」


 せめてカインが叙爵を受けてくれれば、国の規律の枠に入ってもらえるのに、とは思いますが今まで何度も「魔術学園を卒業するまでは叙爵は不相応だ」と断られています。


 カインを味方として取り込まなくてはいけないのは分かっていますが、未だその方法は見えてきません。



 今回のリオレナール王国第一王子の不祥事の件でもカインが大きく動いています。

 第一王子の不祥事の証拠を集め、王子とリオレナール王国に突きつけ、この王子が推薦する者など僕の婚約者にしてはならないと、リオレナール王国からの僕の婚約者候補はいなくなりました。


 ただ、やっぱりこの件にもティアが関わっていました。

 その推薦されていた婚約者候補はティアだったのです。



 ティアはリオレナール王家の血を引いているそうです。学園内でも噂になってはいましたが、父上は確信を持って頷きました。容姿や多量の魔力がその特徴に一致しますのでむしろ納得したくらいです。

 学園内でツバキ王子がやたらとティアを口説こうとするのもティアをリオレナール王国に連れ戻したいが為でしょう。


 リオレナール王国はサクレスタ王国にとって影響力が強すぎます。かの大国にティアをリオレナール王国へ戻せと言われれば逆らえません。

 しかし、そうなるとカインとティアの婚約が危ぶまれてしまいます。


 だから、カインは今回リオレナール王国第一王子の不祥事を暴き、婚約者候補の話を消し、リオレナール王国側へ貸しを作ったのでしょう。

 いつの間にか他国の王族まで手を下せる力を付けているとは恐ろしいものです。


 今回カインが動いてくれた事で、裏組織と繋がる者を国から追い出せましたし、リオレナール王国とは対等の良い関係を築いていく切っ掛けになりましたので、国にとって利となりました。


 これでリオレナール王国がティアを要求しても断る事が出来そうですし、ティアやアタラード家の皆さんも王族として扱われる事を望んでいません。ティアとリオレナール王国の繋がりについては上手く隠さなければなりませんね。


「彼はどんどん力を付けていないか?・・・宰相も自分の息子の事ながら驚いていたぞ。国の為と働いてくれるならばこれ程心強い事はないのだが・・・」

「カインはティアの為にしか動きませんからね・・・」


今回の件、もしもティアが巻き込まれていなければカインは僕の婚約者候補になど露ほども興味を示さなかったでしょうから。


 今回改めて思いましたが、ティアとカインは本当に仲睦まじいのです。お互いの事を大切に思って、一緒にいたいと思っているのが伝わります。

 カインの『他を排除してでも』というやり方はもう少しなんとかならないかと思いますが、彼がティアに向ける想いは純粋です。ティアもまた身分等にこだわらず純粋にカインが好きなのです。個人的にも王太子としてもカインとティアには上手くいって欲しいです。僕はその為の協力なら惜しみません。



「あと、そなたの婚約者候補であるシャルロッテ王女だが」

「はい」


 シャルロッテ王女は海の向こう、ネルラント王国の王女様です。来月から魔術学園に留学生として来る予定です。

 一応、僕の婚約者候補として来る予定で、他の婚約者候補とも比べてよく考えるように、と言われています。


「魔術学園ではBクラスに振り分けられる事となったそうだ。そなたとクラスは違うが、気にかけて欲しい」

「かしこまりました」


 王族がBクラスですか。ネルラント王国は魔力が少ない者が多いというのは本当なのですね。


 サクレスタ王国では魔力の多さを重要視します。ネルラント王国は産業が盛んで勢いのある国なので、そこの繋がりを注視して婚約者候補に上がっているのでしょう。


 ただ、一番有力と言われていながらも婚約者『候補』止まりなのは、やはり魔力の少なさが原因なのでしょうか。王族でなければ動かせない魔術具もありますので、彼女を選ぶかどうかは悩む所ですね。


 そう考えると、もしもティアが僕の婚約者候補に上がっていれば、多量の魔力に大国リオレナール王国の後ろ盾、気品がありながらも謙虚な性格、間違いなく婚約者候補達の中ではトップだったでしょう。

 ・・・カインがいなければの話ですが。


 シャルロッテ王女は魔力はそこそこですが、身分は十分です。性格はまだ分かりませんが、パーティーなどのエスコート役は僕がする事になっていますので、彼女の人となりを見る機会はあるでしょう。

 どんな方なのか、楽しみです。

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