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国王陛下来訪2

 政治的にいろいろと巻き込まれつつある、というのはリオレナール王国の事だろう。


 リオレナール王国が提示した選択肢に、ニコラスの婚約者候補の件、リオレナール王国は何かと勝手に私を巻き込んでくれる。


「先日、リオレナール王国からの推薦人である第一王子が不祥事により失脚した。これはご存知かな?」


 陛下は私に向かって話しているが・・・


「・・・えっ?わたくしですか?」


 推薦人って・・・ニコラスの婚約者候補のだよね?

 てか、第一王子って誰だ。ツバキは第三王子だったと思うから、違うだろうし。失脚?何で?


 私が疑問だらけで答えあぐねていると・・・


「・・・うちの子は第一王子とは面識ないわよ。彼の母親は平民差別意識の強い方だからね。会わせた事はないわ」


 祖母がフォローを入れてくれた。

 そうだよね、私が幼い頃に親戚として会ったことがあるのはツバキとツバキの姉とその両親だけだ。


「申し訳御座いません、陛下。わたくしはニコラス殿下の婚約者候補になっているかも知れないというのはツバキ王子から聞いておりましたが、推薦人の事は存じません」

「・・・そうなのか」


 陛下は思案顔で頷くと、話を聞いていた兄が顔をしかめた。


「『ニコラス殿下の婚約者候補』って・・・ティアはカインと婚約してるだろ?何だそれ?」

「リオレナール王国はティアの意志も聞かずに随分と勝手な事をしてくれているのね・・・?」


 祖母もいつもより低い声のトーンだ。顔は笑っているけど目は笑っていない。

 私に向けられている訳ではないけれど、背筋がぞわりとする。


「・・・!いえ、この件は第一王子の独断だったと聞いております。それに第一王子は失脚しましたので、もうこのような事が起きる事はないでしょう」

「そうだよ、おばあちゃん!リオレナール王国はちゃんと私に選択肢をくれたからね」


 第一王子が悪いだけでリオレナール王国全体が悪いわけじゃないよ、と陛下と共に祖母と兄に弁護する。


「てか、まず『リオレナール王国の選択肢』って何だ?俺知らないんだけど」

「ああ、えっとね・・・」


 兄の言葉で、家族にツバキに示された選択肢については話していなかったと思い至る。私はツバキから留学初日に言われた選択肢について説明した。


「は?いくらティアがリオレナール王家の容姿で魔力が豊富でも他所の国の人間が勝手に何言ってんだ?」


 話を聞いた兄が憤慨すると、祖母はふぅ、とため息をつく。


「ニック、王家ってそんなものなのよ。国が第一で、個人の事なんて後回しなの。わたくし達とは感覚が違うのよ。それは仕方のない事だし、国を第一に考えるのは悪い事ではないと思うわ」


 私や兄は完全に一平民の考えだけれど、祖母は王族としての考えも分かるのだろう、兄が納得いかない顔をした。

 すると、私達の話を思案顔で聞いていたニコラスが声をあげる。


「あの、ティアは選択肢を提示されて、どれを選んだのですか?」

「私は当然カインを選んだよ、カイン以外の選択肢は考えられないから。・・・でも、リオレナール王家はあまり納得しないって言われたけれど・・・」


 ツバキがカインを認めてくれればいいらしいが、今のところカインとツバキは対立してばかりだ。ツバキの告白もあるし、ツバキがカインを認めるのは難しいのかもしれない。


「ねぇ、ルドルフ。貴方がわざわざお忍びでここまで来たのはわたくし達の考えを聞くためよね。もし、わたくし達が今のままの生活を望むのならば、貴方は協力してくれるのかしら?」


 しゅんと落ち込んだ私を見かねた祖母の質問にハッと息を呑んだ。

 リオレナール王国は私の王族としての扱い、アタラード家の帰還を望んでいる。サクレスタ王家としてはリオレナール王国の意向に従った方が利があるのではないか。わざわざ大国に逆らってまで、私達をこのまま平民でいさせる理由はないのではないか。


 でも、そうなったら、カインとの婚約が・・・。


 ツバキも言っていたが、カインは侯爵家次男。跡取りでもなく魔力も少ないので、リオレナール王家が結婚相手として認めるのは難しいらしい。


 婚約を解消させられるんじゃないかという嫌な予感に指をぎゅっと握り込む。



 陛下はそんな私を見て、一度ゆっくりと瞬きをすると――――


「ぜひ、協力させてください」


 ――――と言った。


「「え?」」


 私と祖母が同時に素っ頓狂な声を上げた。


「あら?・・・そう?てっきりリオレナール王国側に協力するか、何か取り引きでも持ちかけてくるのかと思ったのだけれど」


 陛下が平民の格好で忍んでまで来たのは、元王女の祖母と内密に取り引きする為だと思ったらしい。

 祖母の予想に陛下は苦笑いした。


「こちらにも、ティアにこのままこの国にいてもらわねばならない理由がございまして・・・」

「あら、そうなのね。・・・なんだ、久しぶりに貴族の化かし合いが出来ると思ってわくわくしたのに」


 ・・・おばあちゃん!後半小さな声でボソッと言ったけれど、聞こえてたよ!私は冷や汗かいたからね!


「僕らはティア達に協力しますから、ティアはそのままカインと婚約続けてくださいね」

「ニコル・・・ありがとう」


 そのままでいいと言われてホッと息をつく。陛下達が協力してリオレナール王国の防波堤となってくれるならば心強い。


「お願いね。わたくしの方からも、あちらの王家に釘を刺しておくわ」


 うふふ、と黒い微笑みを浮かべる祖母。

 ・・・祖母の方が心強いかも知れない。


 兄も、「よかったな。俺はカイン程ティアを大切にしてくれる奴はいないと思うし、ティアはそのままカインと結婚すればいいんだぞ」と頭をわしわしと撫でてくれた。


 私はカインと結婚する以外の選択肢は考えられない。

 でもツバキがやって来てから、国同士のやり取りに巻き込まれてしまって、それは私の我儘なのではないか、私がカインと結婚する事を誰も望んではいないのではないかと不安に思う事もあった。


 でも、家族も、ニコラス達も私を肯定してくれて、応援してくれて、そのままカインと結婚すればいいと言ってくれて、胸の不安が溶けていくのが分かった。

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