表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/201

生徒会

 学園祭も終わり、学内も落ち着いてきたある日の事。カインとアーサーと談笑していると、レイビスがやって来て言った。


「カイン、生徒会に入らないか?」


 レオンハルトがいなくなってしまったので、先生方の推薦で来期の生徒会長はレイビスに決まったらしい。

 他の生徒会メンバーは家柄や成績を吟味し、先生方の推薦と生徒会長の意向で決めるらしい。カインは侯爵家の身分で成績優秀なので、生徒会メンバーに選ばれたという事だった。


「断る」

「カインはとても優秀だし、生徒会にいてくれるととても助かるのだ。そこをなんとか出来ないか?」

「出来ないね」


 取り付く島も無く断るカイン。


 あー、新入生歓迎パーティーの時に、生徒会は断るとか言ってたね。でも、生徒会長がレオンハルトじゃなくてレイビスならまだ良さそうなのに。


「アーサーは生徒会メンバーになる事を受け入れてくれたぞ?」

「そう。アーサー、頑張ってね」


 アーサーはゲームの通り生徒会メンバーに選ばれたらしい。アーサーの方を見ると、カインとレイビスのやり取りを見て苦笑していた。


「カイン、そんなにレイビスを邪険にするなよ。一緒にやろうぜ?」

「嫌だよ。生徒会に入ったら放課後とか休日に時間を取られるでしょ?ティアと一緒にいる時間が減る。僕に利点が無いよね?」


 アーサーの誘いもスッパリ断るカイン。レイビスも「うーん」と考え込む。


「利点か・・・自分の評価が上がり、働く時に有利だぞ?」

「既に不正摘発や戦争回避で十分すぎる程評価の高い僕には必要無いね」

「確かに」


 うん、と頷くレイビス。


 ・・・納得しちゃったよ。

 身分が高くて優秀な人は色んな役割も回ってくるから大変そうだな。


「では、ティアさんも一緒なら良いのか?」

「へ?」


 私には関係ないなーと思っていたら、急に話を振られて驚いた。


「ティアさんも優秀な人だからな、大歓迎だ。どうだ?ティアさん、一緒に生徒会に入らないか?」

「いえ、わたくしは・・・」

「ティアはダメだよ」


 身分的に相応しくないので断ろうとすると、カインが間に入り、断りを入れる。


「何故だ?」

「ティアは平民だからね。生徒会はいわゆる全生徒の纏め役、だから身分の高い者が選ばれるんだ。平民がそこにいると貴族のプライドを刺激し、顰蹙を買ってしまうかも知れない。ティアをそんな危険に晒したくはない」

「む、そうだな」


 カインの言う通り、平民の私はなるべく目立ちたくはない。生徒会に入るとイベント毎に駆り出されるし、全生徒の前に立つ事もある。避けたい。


 レイビスが、再び「うーん」と考え込む。


「私の至らぬ点にも気づいて指摘してくれる・・・やはりカインは適任だと思うのだが・・・」


 今日のレイビスはなかなか執拗だ。



「なあ、ティア。なんとかならないか?」


 そんなレイビスをみかねたのか、アーサーがこっそりと話しかけてきた。


「私は生徒会には入らないよ?」

「いや、ティアじゃなくて、カインを入る気にさせられないか?」

「えぇ?カインにやる気が無いのに無理強いさせなくても・・・」


 苦い顔をすると、アーサーは更に声を潜めてレイビスの事情を教えてくれる。


「ほら、本来ならレオンハルトが王子として生徒会を纏めていくはずだったのに、急にレイビスに生徒会長の役割が回って来ただろ?王子の代わりを務めなければならないレイビスも焦ってるんだ。戦争を回避させる程優秀で統率力のあるカインはどうしても生徒会に引き込みたいらしいんだよ」


 どうやら、レオンハルトがいなくなった代わりにレイビスが苦労しているようだ。レイビスがカインの優秀さを認めてくれていて必要としてくれているのは素直に嬉しい。


「うーん、カインが頷くかどうかは分からないよ?」

「頼む」


 レイビスはめんどう見がいい人だし、ロサルタン領に行った時は歓迎して良くしてくれたし、基本的にとても良い人だ。そんなレイビスが困っているならと、レイビスの誘いを断り続けているカインの袖を引く。


「ねえ、カイン。私、当分の間は魔術具研究で放課後残る事も多くなると思うの。たぶん、カインは終わるまで待っていてくれるんでしょう?」

「え?それはもちろん。ティアを一人で帰らせたりはしないよ」


 戦争等の危険がなくなっても、カインやアーサーは変わらず私の傍にいて、私が一人になる時間が少なくなるように守ってくれている。心遣いはありがたいが、私の都合に二人を振り回すのは申し訳なく思う。


「じゃあ、私が研究している間にカインは生徒会の仕事をしたらどうかな?私も、カインに何も用事が無いのに待たせるのも申し訳ないし・・・」


 私の助け舟にレイビスが目を輝かせた。


「それは良い考えだ。カイン、ティアさんが研究している時間だけでも構わない!生徒会に入ってくれないか!」

「えぇ・・・?」


 「うーん」とカインが悩み始めると、レイビスは更に押す。


「ティアさん優先で構わないから!」

「・・・」


 やがて・・・


「じゃあ、ティアが研究している時間だけなら・・・」


 と渋々ながらも了承してくれた。


「ありがとう、カイン。よろしく頼む!」


 レイビスが嬉しそうにカインの手を握り、アーサーが「よくやった」と言うようにポンと私の頭を撫でた。




「まったく、ティアを使うなんて狡いよ」

「ティアを使わないとカインは動かないだろ」

「ごめんね、カイン。でも私はレイビス様がカインの優秀さをちゃんと評価してくれてるの嬉しいな。『私の婚約者はこんなにすごいんだよー』って自慢したくなるよ」

「・・・ティアがそう言うなら」

「カイン、耳赤いぞ」

「アーサー、うるさい」


カインは生徒会副会長に就任した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ