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お茶会の後で

甘々注意。ティア視点→カイン視点になります。

 久しぶりにカイン、アーサー、テオ、アリアと私の5人でお茶会をした。


 モンブランはとても美味しかったし、久しぶりに皆で過ごす時間は気の休まる心地よい時間となった。

 最近ずっと忙しくしていたカインやアーサーも息抜きになったといいな。


「ティア、少し時間いいかな?帰りは僕が送って行くから」


 そろそろお開きにしようかと話していると、カインがそう言ったので、私はカインの部屋に招かれる事となった。




 皆を見送り、カインの部屋に行く。


「どうしたの?」

「ちょっと魔術具を調整させて欲しいんだ。ブレスレットを貸して」

「はい、どうぞ」


 夏季休暇前にカインが贈ってくれた魔術具のブレスレットを渡すと、パチン、と留め具を外し、石のいくつかを交換していた。


「これでよし、と」

「何をしたの?」


 はい、と渡されたブレスレットを手首につける。


「魔術具の効力を更に上げてみたよ」

「ちょっと待ってカイン!あれでも十分強力だったよ?!」


 ロサルタン領ではこのブレスレットのおかげで助かったのだ。

 金色の膜が私を守って、周りを爆発させた。私の周りの物が全て吹っ飛び焼け焦げたのだ。あれ以上強力にはならなくてもいいと思う。

 そう言うが、カインは首を横に振る。


「ダメだよ。だってティアが傷ついた」


 そっと首にカインの指先が触れる。

 あの男につけられた傷はもう消えたけれど、カインの触れた所がピリッとした気がした。


「――――っ」

「この魔術具はね、込められた魔力量で威力が変わるんだよ。ほんの少しの魔力量だったら、突風が吹いてティアから相手を引き離す程度だ。前回爆発まで引き起こしたのは、ティアに魔力量を調節する余裕が無かったんだよ。それほどティアを追い詰める奴なんて死んだって構わないと思うよ?」

「・・・そうだったんだ」


 確かに、私はあの時は余裕なんて全くなかったな。とりあえず魔力を込めただけで、魔力量の調節は出来てなかったと思う。

 ・・・死んだって構わないは言い過ぎだけどね!


「じゃあ、少しだけ魔力を込めれば周りに守りたい人がいても大丈夫?」

「うーん、ちょっと吹っ飛ばされるくらいかな」


 ・・・それは、大丈夫なのだろうか。

 今度この魔術具を使う事態になったら、余裕がある内にちょっとの魔力で試そうと心に決める。そんな事態にならないのが一番だけどね。


「いつも心配かけてごめんね。ありがとう、カイン」

「・・・。ここでお礼を言ってくれるんだもんなぁ・・・」


 いつも心配してくれて、私を守ってくれようとするカインの気持ちが嬉しくてお礼を言うと、カインは困ったように笑った。


「へ?そりゃ、カインは私の為に魔術具作ってくれてるんだし、お礼は言うよ?」

「・・・うん。ティア、ずっと一緒にいてね?離さないからね?」

「カインの方こそ、ずっと一緒にいてね。離さないで?」


 そっとカインに体を預ければ、応えるように抱きしめてくれ、頭にキスをくれた。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 レオンハルトの起こした事件の後始末もほとんど終了した。

 今回の件で、ティアに手を出そうとする危険なレオンハルトと、ティアを蕩けた顔にさせるリリアーナの二人をティアの前から消す事が出来た。

 ティアに会えない日々はキツかったが、満足のいく結末を得られた事に口元を緩める。



 レオンハルトとリリアーナを排除した事で、ティアの前世の物語は少し歪んだように思う。

 今の所、物語通りの恋愛的な展開にはなっていないし、ティアが惹かれたのはリリアーナだけだ。ただ、ロサルタン領で杜鵑草事件に関わる人物と相見えたり、大筋は似たような展開を辿っていっている。

 ・・・このままだと、あの事件が発生してしまうかも知れない。


 僕が今回の夏季休暇で学んだのは、物語の犯人となる人物がいなくなっていても、関連のある事件が発生してしまうという事。いざとなったらあの事件の犯人となる『彼』を排除してしまおうと思っていたけれど、それだけではダメなのかも知れない。



 レオンハルトもいなくなったし、『攻略対象』でティアに手を出そうとする奴はもういないんじゃない?とは思うが、僕がちょっと目を離すとティアと『攻略対象』達は仲良くなっているので、油断は出来ないだろう。


 ただ少し、ニコラス殿下が気にかかるな。

 今更レオンハルトのティアへの言動を詫びてきたのは僕を取り込む為だろう。

 どうやら今回の件で王宮の人間にも一目置かれてしまったらしい僕を取り込もうとする貴族は多い。ニコラス殿下もそういった貴族と同じなのだろう。国王陛下に王太子となるなら僕を取り込めとでも言われたか?

 ・・・まぁ、何でもいいが、僕は誰かに従うつもりは無い。ティアの為となるのなら国を守るし、ティアの害となるなら国も滅ぼそう。その障害になるものは要らないんだ。







「ティア、こっち向いて?」


『離さないで?』なんて可愛い事を言ってくれたティアの頭にキスを落とした僕は、腕の中のティアの顎を持ち上げて上を向かせる。


「・・・っ」


 そのまま唇に口づけるとティアの身体が少し強ばった。それをほぐすように何度か軽いキスをする。


 ・・・柔らかい。

 こうしてキスをするのはまだ2回目だけれど、僕は既にティアの唇の虜になっている。小さくて薄いピンク色の唇で懸命に応えてくれようとするティアが可愛くて、何回でもしたくなるんだ。


「ティア、可愛い」

「んっ・・・」


 もっとティアを味わいたくて、少し口づけを深くしてみても、ティアは抵抗する事なく受け入れてくれた。


 ・・・ティアは本当にどんな僕でも受け入れてくれる。

 魔術具の件でも、僕はティアだけに固執し、ティア以外の者などどうでも良いと言ったようなものだ。それでもティアは「ありがとう」と言ってくれた。僕がどれだけ独占欲を見せても、束縛しても、嫌な顔一つしないんだ。

 甘やかされているなと、自分でも思うけれど、僕を甘やかしてくれるのなんてティアくらいだから、そんなティアに甘えていたいんだ。



 魔術学園を卒業するまであと1年半。

 卒業したらすぐに結婚して、ティアを完全に僕のものにするんだ。


 誰にも邪魔はさせないよ。


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