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序章第二話「それぞれの、異世界転移」

前回のあらすじ

妹に殺された強欲の片割れ・如月晴哉は女神の間なる部屋で自称女神と対峙した。

「――は?」



「……は?」

 晴哉の疑問の声に、自称女神は蔑んだ目を構えながら答える。

「だからね、最低で災厄で人として全然価値のない負け犬クソ野郎なあなたは、妹に恨まれてナイフで刺されて死んだの。分かる?」

 自称女神は己の頭を指で軽く突く。

 呪符のごとく備え付けられ、連ねられた悪態は鉛のように重く、余るところなく、晴哉の心をズタズタに引き裂いた。

 晴哉は自称女神を睨んだ。

「お前……ッ!」

 いつこいつを殺してやろう?

 そう考えながら。

 だが、そんな考えもままならないまま、次の質問が成される。

「それで、どうするの?」

 自称女神は澄ました顔で発言した。

 晴哉はその疑問の意味が分からず、眉を寄せる。

「異世界転移するか、地獄に落ちるか。」

 自称女神は声量を上げて言う。

「どっちに、する?」

 ****************

 晴哉を殺した早那は、返り血を浴びた髪と腕を揺らしながら、盲目的に暗闇を歩いていた。

「どこに……逃げようかな……。」

 深い後悔。

 それは兄の死が悲しいからではない。

 これから警察に追われるかもしれない。

 その可能性を思い出し、途方に暮れていたのだ。

 正当防衛として捕まらない可能性もある。

 だが、彼女の苦悩を知らない警察は、過剰防衛として見て、捕まえるかもしれない。

 自由を手に入れるため殺したのに、捕まっては話にならない。

 誰もいない交差点。

 歩行者信号が青に変わり、彼女は歩き出す――刹那、暴走車が高速で通り過ぎ、彼女はタイヤに巻き込まれ、死んだ。

 ****************

「あら」

 自称女神は言った。

「貴方の妹、たった今死んだわ。……可哀想ね。若いのに。」

 自称女神は晴哉を皮肉った。

 どうしてそれが分かるのか、その原理は分からない。

 だが、やけにリアルさがあった。

「暴走車に轢かれて死亡……。せっかく自由を手に入れたのに、死んじゃって本当に可哀想ね。……まあ、今はそんなことは置いといて。」

 途中で話を変える自称女神。

「異世界転移するか、地獄に行くか、早く決めなさい。」

 その時、彼の心は決まっていた。

 そしてそれを口に出す。

「――――異世界転移。」

 自称女神は目の色を変え、微笑みながら言った。

「異世界転移ね。それじゃあ、いってらっしゃい。クズ男クズ男クズ男クズ男クズ男クズ男クズ男クズ男クズ男クズ男クズ男」

 その微笑みには、何かの意図があるのだろうか――

「――凡愚」

 ****************

 早那は白く、上下左右の判別のつかない部屋で、意識を覚醒させた。

「……ここは……。」

 早那は声を上げた。

「いらっしゃい。ここは、女神の間よ。」

 目の前には純白のドレスを着た、女性が座っていた。

 何もない部屋で、見つめ合う二人。

 嗚呼(ああ)、どうかあの男に苦しみを――。

 ……二人は、そう願っていた。

今回も早く投稿出来ました!

ヤッターーーーー!

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