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プロローグ
お待たせ致しました。
夜道、血塗れの胸を押さえ、倒れる一人の青年。
「お兄ちゃん……お兄ちゃん!」
(声が……聞こえる……それは誰の声……?)
混沌とした暗闇の中、その青年を見つめる一人の少女。
(これは、お前の……声なのか……?)
そう、それはその少女……否、妹の声であることは確か。
だが、その声は違っている。
何故なら……。
「お 兄 ち ゃ ん !」
妹の左手には血の滴るナイフが握られていた。
そう。
紛れもなく青年……如月晴哉を殺したのは、妹……如月早那であったからだ。
無論、早那のその判断に誤りはない。
だって、彼女をここまで追い込んだのは、彼であることに違いはないのだから。