私はまだ変身できるぞ!
俺はラナとの会話の後ラナが帰ってくるのを自室で待っていた。
コンコン
恐らくラナだろう。いや、確かにラナ以外に他に誰がいるんだという話なのだが。
友達いないし。記憶が無くなる前は自分に居たことを願っておこう。
そう、しよう。
「どうぞ~」
とりあえず入って良いという了承を俺は出す
「失礼します。お嬢様」
やはりラナだった。しかしラナの服装を見るといつものメイド服ではないようだった。
イヤ、流石にメイド服で旅に出られたら目立って仕方ないのだけれど。
「っで、どうだった?上手くいった?」
俺はさっそくラナに話題をストレートに聞き出す。
これで上手くいってなかったらいってなかったで困るんだけどな。
マジでね。
「えぇ、まぁ、はい」
おや?どうやら何か訳有りというか今朝よりテンションが低い。
何かあったのだろうか?
まてまて単純に夜はテンションが低い(正常)のかも知れない。仕事モード的な?
う~ん、無いな。ラナに限ってそんなことは無いよな。多分。
皆は人を見掛けで判断しちゃいけないよ!
「どうしたんだ、ラナ?何かあったのか?」
何かあったかも知れないと思い俺はラナに優しく問いかけてみる。
優しくできてるかはわからんけどもね。
「いや、お嬢様に心配なされる程ではないのですが少しモメてしまいまして」
やはりか異世界から来た部外者な悪く言えば被害者な俺はともかく、王宮直属のラナがここから出ていくことは不味かったのだろう。
戦力的な考えだと俺もダメだったのかも知れないが。
そこまで強いステータスでもないけどな!
「っで、どうなったんだ?」
「はい、友人にも頼み込んで何とか出来たのですが。やはり私にも罪悪感というものがありますから」
あれ?少し罪悪感の使い所が違うような?
気のせいか?イヤ、気のせいだな。
「そうか、そこまでして俺についてこなくて良いのに」
この人の執着はスゴいと思うよ。ワザワザ記憶のない人の旅についていこうなんて誰もしないと思うんだ。
いくら元・お嬢様だからって異性と旅に出るなんて、ねぇ?
まぁ今は女の子の体なんですけどね!
別にそういうことが出来ない訳ではないと思うけど。
「いえいえ!そんな選択肢は私にはありません!絶対にお供させて頂きます!!」
「お、おぉ。そうか」
ダメだ、少し引いてしまった。
イヤ、これは仕方ない。仕方ないよ。
だって、こんな必死になるとは思わなかったし。
俺はそう自分に必死に言い聞かせてみたり。
「それで?どんな風にモメたんだ?」
「実は」
「実は?」
失礼かも知れないが勿体ぶらずに早く教えて欲しいのだけれど。
イヤ、待てよ?ここまでためるってことは何かしら大変なモメかたをしたっていうことか?
それはありえるかも知れないな。
「私のペットのお世話を友人に頼んでいたのですけど、あの娘動物が苦手で何度もお願いしてやっと頼めたんですよ。大変でした。」
「…………え?」
え?はい?
あれ~?俺って難聴なのかなぁ?難聴鈍感系主人公になってしまうのか?俺は。
ふむ、今の俺は俺ではなくて私だからなぁ。
いやいや、今はそんなことどうでも良いのだ。
今、ペットって言ったか?
え、何?モメたのってそれなの?
でも、ペットか、何を飼ってるかによるよな。
「少し聞いてみたいんだけど何を飼ってたの?」
少し興味本意で聞いてみる。
え?だって気になるじゃん。こういうのはズバズバ聞いていきたい衝動に刈られるよね。
「え~と、飛竜です。」
うっわ、ヤバいよ流石異世界。
飛竜飼ってるとか言ってるよこの人これが異世界の常識でありませんように。
できるならばそれが王宮直属のラナだから飼える事が出来るとかでありますように。
合掌
ん?でも飛竜か、案外役立ちそうだけどなぁ。
人間二人旅、しかも異世界となると難易度が上がるだろう。
現代日本よりはマシかも知れないけど。
俺って一応高校生みたいだし。多分まだラナも同じ位の年だろうし。
アルバイトが限界だろうな。
そう考えると命の駆け引きはあるものの冒険者っていう何でも屋が有るっていうのはありがたい。
って、また余計なことを考えてしまった。
今は飛竜だ。居るか居ないかで大分違うだろう。
「飛竜なら大分役立ちそうだけどな。連れて来ても良かったのに。」
「飛竜は私が育てていたんですが、基本的には王国の持ち物ですから。後は食費がスゴいですから。あの子は基本的に王国の中で1番高級なお肉を食べて育ってますから少しというか大分食べ物には我が儘になってしまって。連れていこうにもご飯をちゃんと食べさせてあげれないかもなんです。」
な、なるほど。確かにそうだよなぁ。
高級な物を常識的に食べていたのに、急にワンランク下がった物を食べろと言われても納得出来ないよな。
あの、あれだ。日本人がいきなりゲテモノ料理を食えって言われたときと同じ拒否反応だな。
でも、あれって案外美味しいものが多いらしいけどな。人によっては違うと思うけど。
「ん?というかなんでワザワザ動物が苦手な人に世話なんて頼んだんだ?他にもいるだろう?動物が好きな人とか」
飛竜を動物って言って良いのかは分からないけど。
そもそもあれって何動物なんだ?何類なんだ?
爬虫類かな?わかんねぇや。
おっと、またどうでも良いことを考えていた。
イケないイケない。
「私って友達少ないんですよね。お嬢様の世話役なんていう大層なことしてましたから皆に疎まれちゃって。あの娘が唯一私の友人なんですよ。」
「そ、そうか。」
ラナのまさかの事実。聞くに耐えない。
俺も本当に友達居るんだろうな?
だが、だ。少し考えてみろ?
本当に友達がいるのなら!何故あのとき転移したときに俺の周りに誰も居なく、誰も俺に話しかけて来なかったんだ?
うん、そういうことですよね。
俺は俺自身の気付いてはいけない何かに気付いてしまったようだ。
とりあえずこの考えは封印しておこう。
「それで、とりあえず旅の了承は得られたのか?」
というかさっきから話が全然進んでないし、早く進んでもらわないとここから今夜中に出れないよ。
「えぇ、はい!そこは大丈夫でしたよ!私は出来るメイドさんですからね!フフン!(どやぁ」
スゴい胸はってめっちゃどや顔されてる。
それでも美人だとそれでさえも可愛く見えてしまう!
クソぉ!これが運命かぁ!!
そもそも元・上司にどや顔を見せるなぁ!!
止めろぉ!!可愛いだろぉ!!
この反応を客観的に見るとどうやら俺はチェリーボーイだったのかも知れない。
まぁね、友達も居ないのにそこまで関係が進んだ彼女なんて居るわけないですよね。
きっと、あれだ。ラノベ読んでニヤニヤしてるオタクだったんだよ俺は。
たまにゲーセンにでもいってね、音ゲーとかしてたんだよきっと。
そのうちにね中二病の後遺症とかで自分で二次小説とか書き出したりしてるんだよ。
笑っちゃうわ!!
「それなら良いんだけど。流石に俺はこの格好でいくのは少々というか大分目立つからさ、何か変装したいんだよね」
また、バカなこと考えてたけどそうなのだ俺はこの国の元・お嬢様なのだ。だからこんな姿で出ていったら周りにバレてしまうそれだけは避けたい。
面倒クサいからね!なんか、こう、縛られて生きる人生って疲れるんだよね。多分ね。
俺自身が体験したことないからわかんないけど。
あれ?もしかしてお嬢様時代の人格残ってる?
え?そのうち俺の人格食い潰されない?めっちゃ怖いんだけど。
「フフフ!こんなこともあろうかと!変装魔道具をご用意しました!」
おっと、どうやらラナが変装用の道具を持ってるらしい。
しかし、こんなこともあろうかとなんて!流石出来るメイドを自称するだけはあるぞ!
少しカッコいい!!そんな何でも出来てしまいそうなラナさんに僕惚れそう!
しかも魔道具か、魔法的な感じのやつなのかな?
ふむふむ、これは期待できそうだ!
ヤバいよ思ったよりラナさんが有能過ぎる件について。
「とりあえず使ってみて効果がみたいな。見せてくれない?」
もはや俺の口が自分の意識に影響されず勝手に動いてそうなんだけど。
そんぐらい考えてる事と喋ってる事がリンクしてないよ。
もう、良いかな。
無意識的に動いてる口にはもう、考えない方向で行こう。そうしよう。
何故かそうしないといけない気がするんだ。
「はい!この魔道具の水晶は姿を変えるならいっそのこと種族も変えよう!ということで1番適正のある種族に姿を変えることが出来るのです!」
「わ~!すごいですね!でもそれってお高いんでしょう?」
「いいえ、今ならなんと!どどんと値下げして無料でお譲りします!しかも何度も使えるんです!この話は今だけ!今ならお得です!さぁ!どうします!」
「買った!」
最早話の展開と喋り方がテレビ×××ングだよ。
イヤ、使うけどね?
「とりあえず使ってみようか」
ほら、俺の口も使いたいって言ってるし。
使わないことには何も始まらないし。
というかだよこれはどう使えば良いんだろうか?
「ねぇ、ラナ?」
「どうしました?お嬢様?」
「どうやって使えば良いの?」
「あ!あぁ!す、すみません!私としたことが使い方を言ってませんでした!お嬢様は魔力の使い方をわかりますか?」
魔力?
魔力の使い方なんて物は知らない。
日本にはそういうのは無いらしいみたいだからなぁ。
オカルト的な物はあったらしいけど。
龍脈とか?
「わかんない」
「そうですか。う~ん私たちにとっては当たり前に出来る事ですからね。少し教えるにも難しいんですが」
それはただ単にラナさんがエリートなのでは?
出来ない人は出来ないと思うんだけど。
「そうですね、自分の体の中にある何か蠢いている物を探り当ててからその不思議なエネルギーを一点に放出する感じですかね。つまりはイメージですよ!」
う~ん、わかるようなわかんないような。
とりあえず体の内を想像、イメージしてみようかな?
うむむ、う~ん?こ、これかなぁ?
多分このなんか動いてるのだと思うんだけど。
これを引っ張り出して。そうだなぁ、これを水道から出すイメージ?ON、OFFの使い分けができるような感じでどうだろうか?
これを水晶に流してみる?う~んなんか違うなぁ
「お嬢様余計なイメージはしなくても良いです。大切なのは外に出すことです!
技術はその次ですよ!」
水道は駄目らしい。なら、パイプ?これが1番簡単かな?
管から流す感じで、そのパイプを水晶に繋げてこれを恐らく魔力であろう物を通す。
ぐっ、体から何か大事な物が抜けていく感覚。
「お、お嬢様!だ、出しすぎです!もう、それ以上出すと旅に支障が!」
これは言っておかなければ。
じゃないと旅に出れなくなる。
「ラナ」
「は、はい。ラナはここですよ!」
「私が倒れても絶対に騒がないでよ?衛兵達が来て旅に出れなくなっちゃう。わかった?」
あ、れ?口調がなんか違う気がする。
「お、お嬢様!?わ、わかりました。」
「ふふ、ありがと、後はね、もう少し早く言ってほしかったなぁ。このバカには魔力の使い方なんて分からない、わ、よ。」
そこで俺の意識が飛んだ。
最後に聞いたのは綺麗な声だった。それだけだった。
今回はなんとか長く書けました。
これからもよろしくお願いします!