お嬢様ぁー!!
「あ、あの?ちょっと待ってくれません?え~と何か勘違いを貴女はしていると思うんですけど」
まてまて、俺は多分男だろうし、お嬢様ではない。決して女の子では無いのだ。
「あの、少しお話を聞いてくださいませんか?」
「まぁ話だけなら良いですけど」
「まずは自己紹介を
私は王宮直属メイドのラナ・カルナ。王女様の元・世話係でもあります」
おぅふ、マジかスゴい偉い人なんじゃ?
多分メイドさんの中では一番の位なんじゃないのか?
「えーと、俺は」
これは何て答えたら良いんだろうか?
「どうしたのですか?お嬢様?」
「イヤイヤ、だから待ってくれって。そもそも俺は男だし、お嬢様じゃないよ」
「いいえ!貴方はお嬢様で間違いありません!」
「なら、その証拠は!!」
「それはお嬢様のスキルです!」
スキル?あの変な読めないスキル達?
「ハイ、普通ならあんな風に読めなくなるなんておかしいんです。ですがある二つのスキルはあんな風に読めなくなることがあるんです。この読めなくなるスキルが二つある人がお嬢様なんです!」
えぇ、それだけで決めつけんの?マジかよ
ちょっとこの人頭抜けてるんじゃないかな。
それにそんなキラキラとした目で見なくても良いんじゃないかな
「それなら、あの、ミズキさんっていう人はどうなの?名前も容姿もバッチリ合ってるけど」
「多分、たまたまですね」
「はぁ、ねぇ1つだけ言いたいことがあるんだけど良い?」
「はい!何なりとお申し付けください!」
「じゃあ、いうけど俺って記憶喪失なんだ」
「はい!ですよね!知ってますよ!」
え?おい、今何て言った?
「ねぇ?もう一回いってくれる?」
「え?だから知ってますよ?記憶が無いこと」
「はぁ!?じゃあ何?ワザワザ人が混乱するように話してたの!?お前はそういうのかぁ!!」
メイドの肩を両手で掴みグワングワン揺する。
「や、やめてください~、お嬢様ぁ~。ラナは、ラナは気持ち悪くなってしまいますぅ~」
少し可愛そうなのでやめてやる。
「うぅ、まだ頭がグワングワンしますぅ」
「とりあえずそのお嬢様って呼ぶのはやめてほしい」
「はい!わかりました!お嬢様!」
ブチッ
俺の頭から何かがきれる音がする
「お前はぁ!なめてんのかぁ!!」
また肩を掴み揺する。
「ひぃやぁ~!や、やめてください~!なめてないですぅ~!ごめんなさい~!」
謝って来たので一応止めてやる。
「それで?俺はこれからどうするの?このままどっかに連れてかれたりするのか?」
正直そうなっては面倒クサイ。
俺はここから出て自由気ままな生活がしたい!!
「いえいえ、そんなことは致しません。そもそも私はお嬢様をここから逃がすためにここに居るのですから」
どういうことだ?ここから逃がす?
え?何?ここって、そんなに危ないところなの?
ちょっと怖くなってきたんだけど。
「話を続けてくれ」
「はい、お嬢様はあちらの世界へ行く直前に私にこうおっしゃりました。『あぁ!ようやくこのクソみたいな王宮から出ていける!!これであのバカ王も追ってこれないわ!私は自由よ!友達と遊んで、話して楽しむのよ!アハハ!さらばだ!王国!滅びろ!!私は自由だぁ!!』と」
えぇ、何そのハチャメチャな人。それが昔の俺なのか?
つまり記憶が失う前もそんな感じだったのか?
というか何ていう壮大な家出。
「でもお嬢様のその姿を見ると世界を渡った時に記憶も消えて体も作り替えられて新たな一人の人間として暮らしてたみたいですね」
えぇ、めっちゃむくわれないじゃん。可哀相すぎる。お嬢様!
「とりあえずだよ、俺はここから出て自由気ままな生活がしたいんだ、メイドさんはどうする?」
あれ?無視?
「おーい?メイドさーん?おーい」
「ラナです」
はい?もしかして名前で呼べと?俺からしたら初対面の人をそう呼ぶのは気が引けるんだけど。
「あぁ、昔はラナとお呼びくださっていたのに!私は寂しさで死んでしまいそうです。オヨヨ」
うわぁ、面倒クセェ。
「わかった、ラナさん」
これで良いだろう。早く話の続きを聞きたいんだけど。
「ラナです」
「呼び捨てにしろと!?俺からしたら会って間もないのに!?」
「はい!」
まぁ、それはそれは嬉しそうに頷く。
満面の笑みで。
「ぐぬぬ、わかったわかった。え~と、ラナこれで良い?」
「ッ!はい!!」
えぇ、ちょっと泣きそうな目なんだけどうるうるしてるんだけど。そこまで嬉しかったのか。
「それで?どうするの?メイドさんは」
「それがお嬢様の意思ならば止めません。というか私も連れてってください!」
「えぇ、嫌だよ」
目立つじゃん。こんな人といたら。まぁ面白い旅にはなるかもしれないけれども
「こう見えて私は結構強いんですよ!お嬢様の身の回りのお世話だってしちゃいます!!」
ラナはそういって腕に力を入れるポーズをする。
「ふぅむ、ならまだ保留で。まだ俺ここに居るし。用意しなきゃいけないものだって沢山あるだろうし」
「ふふふ、それならこの出来るメイドさんラナにお任せあれ!こうなることを見越してお嬢様のご準備は全て済ましてあります!今からでも出れます!!」
とうとう自分で出来るメイドと言っちゃったよこの人。
確かにスゴいな準備を全て終わらせてるなんて。
そこは普通にスゴいと思うよ?
「ふふふ、これで私も連れてってくれますか?」
「あぁ、うん。考えておくよ。とりあえず今日はもう、疲れた。寝かせて」
「はい、わかりました。また明日ここに伺いますね!お嬢様!」
できればもう、来ないでほしい。
そう切実に望む俺だった。
そして、翌朝
コンコン
この部屋の戸が鳴る。
誰だこんな朝早くに、俺を起こすのは?
「お嬢様~?入りますよ?お嬢様~」
あぁ、ラナか。
そして、容赦なく入っても良いなんていってないのに部屋に入って来るし。
こいつは本当にメイドなんだろうか?
「あわ!あわわわわわ!!」
どうしたんだろうか?ラナが俺の方を向いて何やら慌てている様子だ。
「どうしたんだ?」
あれ?俺ってこんなに声高かったけ?
髪の毛も何か伸びている気がするんだけど。
「お、お嬢様が!お嬢様が!本当のお嬢様になってしまいましたー!!」
「あぁ、もう、うるさいな!寝起きだぞ!」
何が本当のお嬢様になっただよ。
ん?本当のお嬢様になった?も、もしかして!?
「ら、ラナ?か、鏡をくれないか!?」
「こ、こちらにございます!ど、どうぞご確認ください!」
俺は鏡を覗き込んだ。そこには銀髪が綺麗な金眼の可愛らしい美少女が居た。
「な、なんだこれは」
おかしい!絶対にこれはおかしいぞ!?
イヤ、ここは異世界だ、ファンタジーだ、もしかしたらこれが普通にあり得るのか?
「これは、多分お嬢様の体がこっちの世界の物に適応しているのではないかと」
「え~と、つまり俺がこっちの世界へ帰ってきたから姿が戻ったっていうことで良いんだな?」
「あながち間違ってはないですね」
マジかぁー、イヤ、別に良いんだよ?だって記憶が失ってからまだ一日しかあの体使わなかったし。
したことなんて歩いて、ステータス計って歩いて、話して、寝ただけだからな。
うん、未練もなにも無いわ。
「はわ~!これでお嬢様のことをこれからお嬢様と言える大義名分が出来ました!!」
「お嬢様、お嬢様言うな!今はもう一人の方の女の子でゴマかせれてるけどもし見つかったら終わりなんだぞ!?もうこんな姿になったからにはもう即出発だ!!今日の夜、今晩にここを出る!」
「はい!わかりました!私はクソ王に言ってきますね!」
わお、俺以外には以外と毒舌だなぁ。
「一応言っておかないと逃亡されたと誤解されてしまうので。大丈夫です!私がちゃんと説得しておきますよ!」
えぇ、本当に大丈夫かなぁ?